スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

書簡七十六&終焉の同時性

2017-06-15 19:25:09 | 哲学
 アルベルトAlbert Burghからの書簡六十七が遺稿集Opera Posthumaに掲載されたのに,ステノNicola Stenoからの書簡六十七の二が掲載されなかったのは,スピノザがアルベルトには返事を出したけれどもステノには出さなかったからだと推測されます。内容だけでいえばステノからの書簡の方が掲載する価値が高かったと思えるので,僕はそう推測しています。そしてスピノザがアルベルトに送った返信が書簡七十六です。
                                     
 書簡六十七というのは論理的にスピノザを説得しようとするような内容をほとんど含んでなく,スピノザに対する罵詈雑言あるいは誹謗中傷といっていいようなものでした。書簡七十六の中に,そういう内容に相応しいような文言がないわけではありません。つまりスピノザがアルベルトに対して感情的に反論しているといえなくもない部分が皆無であるとはいえません。しかしそうした部分はごく一部に限られるのであって,基本的にはスピノザは理性的に対応しています。スピノザが盲目的に宗教religioを信じる人に対してどのように反論するのかということは,その哲学の中から明らかで,そうしたことはこの往復書簡とは無関係に僕も書いていますから,その内容についてはここでは深く言及しません。
 スピノザ自身はかつてステノともアルベルトとも親しい交際があったと考えられます。なのにステノには返事を出さず,アルベルトには出したのには,それとは別の理由があったからでしょう。たぶんその理由というのは,アルベルトの友人あるいは親族から,アルベルトを説得してほしい,具体的にいえばローマカトリックへの信仰fidesを捨てて,かつてのプロテスタントへの信仰に戻るように説得してほしいという依頼があったからです。
 スピノザはアウデルケルクAwerkerkに住んでいた頃,アルベルトの父であるコンラート・ブルフに世話になった可能性があります。おそらくそれは事実で,スピノザはかつての恩人であるコンラートからの依頼を無碍には断れなかったのでしょう。ただ,そのためにこの書簡が残り,スピノザの考え方が明瞭になっているともいえるわけで,歴史的にみればこれはこれで価値ある出来事であったという気がします。

 第二部定理八系が,Aの形相的有esse formaleとAの客観的有esse objectivumの持続duratioの開始の同時性を意味しなければならないこと,いい換えるなら,Aの形相的有がAの客観的有より先に持続を開始するということはないし,逆にAの客観的有がAの形相的有よりも先に持続を開始するということはないということを意味しなければならないということについては疑問の余地はありません。ただ,桂の記述を考慮の外に置くならば,このことは一般的にAの形相的有とAの客観的有の同時性を意味することはできません。なぜなら,持続が同時であるというためには,単にその開始が同時であるということをいうだけでは十分でなく,その持続の終焉も同時であるということをもいう必要があるからです。
 第二部定理八系は,持続の開始の同時性にしか言及はしていませんが,実際には終焉の同時性も意味しています。少なくともスピノザはそのように考えています。なぜなら,スピノザは第五部定理二一を論証するために第二部定理八系を援用しているのですが,そこから帰結する事柄として,精神mensは身体corpusが持続する間だけ身体の現実的存在を表現するexprimereことと,身体が持続する間だけ身体の変状corporis affectionesを現実的なものとして把握するということをあげているからです。これは逆にいえば,身体の持続の終焉とともに精神が身体の現実的存在を表現したり,身体の変状を現実的なものとして把握することも終焉するといっていることになります。したがって,人間Aの身体の持続の終焉と人間Aの精神の持続の終焉は同時でなければなりません。しかるに,人間Aの形相的有とはその人間Aの身体であり,人間Aの客観的有とはその人間Aの精神でなければならないのですから,これを一般的にいえば,Aの形相的有の持続の終焉とAの客観的有の持続の終焉が同時であるということになります。
 第二部定理八系が本来的にそのことを意味することができると僕は考えますが,もしかしたらそこには見解の相違があるかもしれません。ただ,第五部定理二一の証明の内容から,スピノザがAの形相的有の持続の終焉とAの客観的有の持続の終焉が同時であると考えていることは明らかで,それが明らかなら十分です。
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