スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

サンケイスポーツ盃船橋記念&不安の有用性

2018-01-17 19:13:53 | 地方競馬
 第62回船橋記念。森泰斗騎手が頸椎捻挫の疑いのため,サトノタイガーは中野省吾騎手に変更。
 ロイヤルトリニティはほかの馬と加速力に違いがあって離されました。まずシークロムが先頭に立ちましたが,内からフラットライナーズが押して追い抜き,フラットライナーズが単独での逃げに。2番手はシークロム,サマーダイアリー,ラスパジャサーダス,スアデラの4頭が雁行。2馬身ほど開いてアピアとモダンウーマン。また2馬身ほどでジョーオリオン,さらに2馬身ほどでサトノタイガーと続き,ロイヤルトリニティが大きく離される隊列。最初の400mは22秒7の超ハイペース。
 直線に入るところでもフラットライナーズが単独で先頭。離されずについてきたシークロムとスアデラは突き放しました。しかしずっと内目を回ってフラットライナーズとシークロムの間に進路を取ったアピアの手応えが楽。悠々とフラットライナーズに並び掛けるとそこから引き離して完勝。後方から捲り加減に大外を追いこんだサトノタイガーが1馬身半差で2着。スアデラとサトノタイガーの間を伸びたモダンウーマンが1馬身差の3着に届き,逃げたフラットライナーズは4分の3馬身差で4着。
 優勝したアピアは2014年の優駿スプリント以来の南関東重賞2勝目。その後,10月に古馬混合の上級条件戦を勝ってJRAに移籍。JRAでは入着もできずに昨年から大井に戻りました。再転入の初戦こそ5着でしたがその後は5戦して4勝3着1回。オープンで連勝中でしたのでここは優勝候補の筆頭。スプリント能力の違いをみせての強い勝ち方であったと思います。1400mくらいまでは対応できるかと思いますが,ベストはこの1000mかもしれません。母の父がアグネスタキオンビューチフルドリーマーオーマツカゼの分枝。母のはとこに2011年に目黒記念と函館記念を勝ったキングトップガン。馬名の英語表記はAppear。
 騎乗した大井の御神本訓史騎手は,一時的に騎手免許を失効していたこともあり,2015年の金盃以来となる南関東重賞制覇で南関東重賞は26勝目。船橋記念は初勝利。再転入後に管理している大井の藤田輝信調教師は南関東重賞7勝目。船橋記念は初勝利。

 僕の考えでは,不安metusすなわち恐怖という感情affectusはそれ自体で排他的思想の根源となりやすい悲しみtristitiaのひとつです。そしてこの感情は,それを抱く人間のうちで相反する感情によって抑制されるようになったときに,さらに排他的思想を強化する場合があります。しかしこれについての私見を述べる前に,不安という感情それ自体について,スピノザとともに考える場合に,注意しておきたい点があります。
 スピノザは多くの感情を多角的に分析します。このとき不安という感情は悲しみの一種ではあるのですが,全面的には否定されません。むしろ憐憫commiseratioがそうであったように,悲しみであるけれど有用な感情であるといっているのです。これは第四部定理五四備考から明らかだといわなければならないでしょう。そこでは不安は害悪より利益を齎すとまでいわれているからです。
 なぜスピノザがこのようにいうのかを,分かりやすい具体的な例で示してみましょう。たとえば放埓な生活を送っている人間がいたとします。その人間が何らかの宗教的な教えによって,そのような生活を送っていると天罰を与えられるといわれたとしましょう。このときにこの人間が将来の天罰に対して不安すなわち恐怖を感じることによって放埓な生活に終止符を打ち,端正な生活を送るようになったとします。あるいは敬虔pietasになったといってもいいです。この場合,確かにこの人間にとって天罰に対する恐怖というのは害悪より利益を齎しているといえます。同時にそれは,単にこの人間にとってというより,この人間の近くで生活を送っている人びと,もっと大袈裟にいうなら人類にとって害悪より利益を齎しているといえるでしょう。
                                
 スピノザが『神学・政治論Tractatus Theologico-Politicus』で聖書を肯定する理由の具体例にもこのようなことが含まれているといえるかもしれません。すなわち聖書を読むことによってたとえば神Deusや地獄に対する不安すなわち恐怖を感ずることによって,それまでは敬虔でなかった人間が,敬虔なpius暮らしを送るようになるということはあり得ないことではありません。そしてスピノザは聖書は真理veritasを教えないけれども,人間を敬虔にするという理由によってそれを評価しているのです。
コメント
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