穴村久の書評ブログ

小説と哲学書の書評ならびに試小説「反復と忘却」(仮題、連載中)

幼女の鑑、「骨董屋」のネル

2016-10-13 08:16:49 | ディケンズ

ネル、ネルリ、コゼットと名前をあげると読者は何を連想するだろうか。寡読な私の印象に強く残っている主役級の幼女である。博覧強記の読者諸君はもっと例を挙げられるであろう。 

ネルはディケンズの「骨董屋」の主役級共演者である。ばくちに失敗したショックで痴呆状態になった祖父をつれて、債鬼を逃れるために夜逃げをして祖父を介助しながら田舎を放浪する少女である。

これの本家取りをしようとしたのがドストエフスキーの「虐げられた人たち」である。ドストはほぼ同時代人であるが、一回りほどディケンズより若い。ドストの作品では祖父はイギリスから帰化し破産した実業家スミス氏である。ネルリはその孫娘である。命名からも分かる通りドストは明白に本家取りを揚言している。しかし、出来上がった作品では二筋の流れの一方に現れ、ドストの例にもれずやたらと登場人物が出てくるので主役級とまではいかない。

読者によって印象は違うだろうが、「虐げられた人たち」でもっとも印象に残るのはこの祖父と孫娘である。もっともドスト節が冴えている(人によって感じ方は違うだろうが)。

コゼットは言わずと知れたユゴーの「レミゼラブル」の登場人物である。この場合脱獄囚として追われるジャンバルジャンが家主に虐待されていたコゼットを助け出して一緒に逃避行をする。つまり『骨董屋』とは逆にコゼットは非保護者である。「骨董屋」の場合は幼女が祖父の保護者になる。

この難しい役回り(おそらく他の作品には例がないだろう)を主役級として最後まで描いたディケンズのほうに軍配はあがるであろう。よって幼女描写に関しては三作の順位はこうなる。

一位 骨董屋

僅差の二位 レミゼラブル

三位 虐げられた人たち

 

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