市街・野 それぞれ草

 802編よりタイトルを「収蔵庫編」から「それぞれ草」に変更。この社会とぼくという仮想の人物の料理した朝食です。

安倍戦後70周年談話と、みんなの広場投書(毎日新聞投書欄)

2015-08-26 | 政治
お盆休みの二日目2015年8月14日、安倍談話を聞いた。うん、なるほど、いいじゃないかと、戦後70年の談話としてわが国の侵略戦争のまちがい、その謝罪、そして反省と、戦争放棄の戦後70年の平和主義
を誓うという、いつもと違って聞きほれていた。ところが、これで終わるかとおもったところ、まだまだつづきだした。おわるどころか、ここからが本番とばかり、わが国がなにをアジアで貢献したか、これからどうするかとことばがながれていく。そのうえで、国民の立場大きく前面に出てくる。それを聞くうちに、だんだん社長が、えんえんと社員に訓話を垂れるのに似ているとかんじだした。わが会社つまり「わが社」を発展させること、わが社の社員としての誇りと使命とかが、いかに世界に貢献できることであるとか、聞いていて気分はだんだんしらけてくるのだ。第一、「会社」とははあんたのものじゃないだろうという気分、なにがなんでも会社に尽力をささげる使命などと、やってられうかという気分に似てきたのだ。

 こいつはぼくの安倍嫌いの偏見がなせる業かと、やっとおわった安倍首相談話がテレビから消え他跡で思ったのであった。翌日、毎日新聞に談話全文章というのが掲載された。文章なら、感情的にならず、判断できるはずとさっそく、読み出した。すぐに形容詞や修飾が、数多くあるのに気づいた。挙げると「二十世紀という時代を、私たちは心静かに振り返り」とか、「広大な植民地」「悲惨な戦争」「壮絶な犠牲の上」などなどがつづく。心静かにとか悲惨とか壮絶という形容は、戦争や犠牲、そして反省を、おおげさな修飾によって、かえって本当の現実を黄な粉まぶすような甘いものにしてしまっているのだ。
 
 もう一点は、美辞麗句が、あちこちに散在している安倍主観的表現である。「祖国の行く末を案じ
家族の幸せを願いながら、先人に散った方々。」映画のシーンじゃあるまいし、甘すぎル形容ではないか。「灼熱の、遠い異郷の地にあって、飢えや病に苦しみ、なくなられた方々。」こんな流行歌の言葉で戦争で犠牲になった兵士や市民の死が総括できるものではないのだ。そして、どこまでもこの種の文章がえんえんと流れ出していく。「一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。」いまさら、こういうことを言うよりも、もっと切実な平和への実現への具体的な意思、つまり謝罪と反省と不戦を、よけいなことばをつらねるより、ばしっと一言と極めればいいのだ。だが、それをしないで、かくもつづくのはと、かんがえてみると、謝罪と反省が、美辞麗句でなされるということ自体が可笑しいのだ。この部分は、ほかの主題と関係しているのではないかと思えることだ。

 そうかんがえたとき、わかってきたのは、安倍首相の胸中にあるものだ。それはお詫びと反省ではなくて、それよりも日本国への偏愛である。あやまります、土下座もします、それでもわが国は偉大なのですという感情である。ぼくが、テレビ談話を視聴しながら、だんだん社長訓示におもえだしたことは
この社長の高揚感であった。そして想った。戦争はだれが起こしたのかということだ。一般大衆、徴兵されて何百万人と戦死した人々は、国家権力の起こした戦争の犠牲者にすぎなかったのだ。「今なお、言葉を失い、ただ断腸の念を禁じ得ません」といわれているが、いったい、さしあたりそうしているのはどこのだれなにか、じつにあいまいである。日本人みんなのようでもあり、だれひとりそうでもないようでもある責任不在のあいまいさが漂う。まるで、自分自身がしているような高揚感の独りよがりが忌々しいではないか。

 文章が長すぎる、本質がぼやけている。このとき、ふと脳裏にうかんできたのは、ときどき毎日新聞の投書欄「みんなの広場」の文章である。ここには、戦争について、平和について、日本と世界について、明晰で主題の透徹した説得ある文章にたびたび出会える。長さは400字内外である。しかし、なんという無駄のない、わかりやすい、そして真実である文だろうか、それでいて、かれらのほとんどは文筆にたずさわる人ではないようだ。世界に向かって発信する文章なら、有識者などにたよらず、一般大衆に1000字限定で公募したほうが、おそらく比較にならぬくらいの優れた談話を見出しうるだろうと想う。二言目には有識者のご意見とか、ご検討をいただいた結果とか、錦の御旗のような権威付けも、それほど意味があるわけではないのを、現実に知らされた思いのする戦後70周年談話であった。世界のみなさん、どうか、新聞投書欄の読者の文章もぜひよんでいただきたいと念願してます。

 

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