HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

破滅が忍び寄るのは誰。

2017-04-21 16:44:08 | Weblog
 昨年、11月から始まったZOZOTOWNの「ツケ払い」サービス。(http://zozo.jp/later-payment/)価格が「税込5万4000円」までの商品では、注文日から最大2カ月先まで支払いを「猶予」する仕組みだ。これが若者の自制心を奪い、金銭感覚を麻痺させる可能性があると言われ始めている。最初に警鐘を鳴らしたのは、週刊新潮4月6日号の「ZOZOTOWN ツケ払い2カ月 CMが言わない破滅リスク」である。

 記事を引用すると、

ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ側は、こうした問題について

 「未成年者がご利用する場合は、保護者の同意が必要です。登録する前に利用規約を確認して頂いています」

と、一応は若者の購買欲求に歯止めをかけている。ただ、一方で同社の広報担当者が

 「クレジットカードを持たない若年層にすそ野を広げた」
 
「状況次第ですが、カード破産を経験された方でもご利用頂けます」


と、発表しているところを見ると、お客の問題より自社の売上げ追求を優先していると思えなくもない。しかも、ツケ払いは支払い方法の変更で選択するだけで、未成年の親が同意した根拠を示す箇所は見当たらない。カード破産者の与信(相手を信用して金銭を貸すこと)についても、決済代行会社の「GMOペイメントサービス」が行うとされているが、詳細な内容はわからない。



 かつてクレジット破産が社会問題化した時、国は法改正を行った。過剰な与信規制を行い、支払い能力による限度額を厳格にした。また消費者に過量(度を超えた数量)の商品を販売し、多重債務に追い込んだのであれば、商品を売った販売店、審査を行ったクレジット会社の共同責任とした。

 クレジット会社は、原則として顧客の総債務残高が年収の3分の1を超えるような過剰与信をした場合には、請求権の一部ないし全部が制限される。さらに年間支払い総額が年収を超えた場合は契約自体が無効となり、未払金の拒絶の他、既に支払ったお金の返還も認められる。クレジット会社に対して悪質な販売防止義務を負わせたのである。

 ところが、ZOZOTOWNのツケ払いは、法律の網の目をうまくすり抜けている。「割賦販売法」では「2ヵ月を超える場合」に利用者の与信審査が必要と規定されている。ツケ払いは2カ月以内なので、ZOZOTOWNはお客の信用=支払い能力に関係なく、商品を販売できるのである。

 ツケ払いと言っても、実際にはZOZOTOWNが個人に掛け売りをすることはあり得ない。間に決済代行会社のGMOペイメントサービスが入っているので、ZOZOTOWNから手数料をとり、お客が購入した商品代金を立て替えしているはずだ。GMOペイメントサービスは2ヵ月以内にお客から回収できるので、債権が焦げ付くリスクは低く、ZOZOTOWNとってもそれほどのフィー負担にはならない。まあ、理屈ではそうなるのだが。

 また購入できる限度額は「税込5万4000円」なので、未成年でもアルバイトをすれば払えなくはないだろう。仮にお客が支払いできなかったとしても、 GMOペイメントサービスが債権回収なども行ってくれるから、ZOZOTOWNにとっては痛くも痒くもないのである。実にうまく考えられた仕組みと言える。

 ただ、親に内緒でも商品を購入できることや成年でも支払いが滞るリスクはある。なぜなら、実店舗は販売スタッフがいるから、お客は「売りつけられる」という畏れや抵抗感を感じる。それが逆に購入への躊躇い、販売の難しさを生んでいるのだ。言い換えれば、そうした障壁を取り払ったのがネット通販で、新たに「消費者に過量の商品を販売する」危惧が生じるのも、また事実なのである。

 スタートトゥデイは1998年の創業から右肩上がりで成長し、2007年には東証マザーズに上場。12年には東証一部に変更した。ファッション通販の新興ベンチャーとして、IT業界はもとより、海外の通販企業、投資家などからも注目を一心に集めている。

 今回のツケ払いもそうだが、人気ブランドやアイテムの着こなしが探せるアプリ「WEAR」など、次々と新しい施策を打ち出している。売上げ伸長と株価維持のためなら、四の五の言ってられない企業事情なのだろう。そんなことを考えていると、ツケ払いにも通じる生々しい話を思い出した。

 筆者がアパレルにいた頃、高い販売力を誇るスタッフは「1億円プレーヤー」と呼ばれ、彼女たちは必ず何名かの上得意客を抱えていた。それはいいことだ。得意客が自分の収入の範囲内で商品を購入してくれる。それも全く問題ない。しかし、優秀な販売スタッフでも顧客と情が通じ合うと、必ずルール違反に発展するケースがある。当時聞いた話は販売スタッフと顧客が起こしたようで、おそらく実例が下敷きになっていたと思う。

 「ある店舗では、クレジットの控えの伝票を信販会社に渡すのを先送りしていた」

 これはどういうことか。顧客に商品を販売して渡したものの、クレジットの控え伝票を信販会社に渡すのを先に延ばしていたのである。こんなことができるのか。この話を聞いたときは、耳を疑った。さすがに今はカードが電子化されているので無理だが、インプリンターで紙の伝票に印字していた時代はできたのかもしれない。

 伝票を先送りした理由。考えられるのは2つ。

 「顧客の購入可能額が限度いっぱいで、決済が済まないと次の買い物ができない」

 「販売スタッフが上顧客への配慮=自分の売上げ維持のために行った」


どちらかである。

 店長がチェックしたり、本部が確認すればすぐにルール違反が発覚するはずだが、「優秀な販売員」ということで目をつぶらざるを得ない事情もあったのか。 他のスタッフにしても、「あのお客さんは資産家」「親からお小遣いをもらっている」から「大丈夫」とのイメージが摺り込まれていたのか。

 となると店舗、会社ぐるみで信義に反していたことになるわけだ。あくまで推測だが、売上げのためには組織的にルール違反をリークしにくい状況だったのだろう。しかし、姑息な手段で売上げを稼いだところで、それは優秀でも上得意でもないのである。

 翻って、ZOZOTOWNのツケ払いは法律には触れていないし、ルール違反でもない。ただ、決済を「先送り」している点では、このケースと酷似する。また未成年者の自制心を奪うことも危惧させる。膨大な数の若者が利用することを考えると、社会問題化する怖れがあり、企業としてのモラルが問われるのは言うまでもない。

 ネットショッピングでは、商品を購入するかしないかを判断するのは自分しかいない。しかも、実際に商品を見たり触ったり試着したりするわけではないので、判断能力を低下させることは十分にあり得る。それが未成年となればなおさらだろう。ZOZOTOWNに出店する1店舗での買い物なら数万円で済む。でも、未成年者に対し簡単に信用を与えるのは、金銭感覚を麻痺させる危険性があるのだ。

 ツケ払いは今払う金がないからそうするわけで、2ヵ月後に払えるという証明でも何でもない。法律的に保護される未成年はともかく、収入が少ない若者が支払えないケースも出てくるのではないか。借金は少額が積み重なっていつの間にか膨れ上がる。そうなると取り立てに追われたり、返済のために身を滅ぼしかねないとも限らない。

 売上げは購買と販売という関係で成り立つが、背景にお客の信用があってこそ、店舗にはキャッシュが入って来る。業界は商品が売れなくなったと憂う一方で、度を超えた買い物で多重債務を抱える人間を生み出していく。それは個人責任だからしかたないと片付けるのなら、企業がCSRを口にするのもおかしいことになる。

 DCブランド全盛期に販売スタッフが高額なローンを抱え、「夜霧のハウスマヌカン」と揶揄されたが、現実問題は決して笑い話で済まされないのだ。

 ZOZOTOWNに出店する店舗は1000近くに及び、ブランド数は3800を優に超えている。スタートトゥデイは若者を破産に追い込むリスクをどう考えているのだろうか。それとも上場企業だから、ステークホールダーの利益しか考えないのか。

 いくら次々に商品が発売されると言っても、個人的にはZOZOTOWNが扱うテイストは大手セレクトを中心に似通って来ていると思う。ならば、ブランドの専用サイトで十分だということにもなる。また差別化のために新サービスの導入を図れば、運営コストが上がるのは避けられない。amazonといった海外勢の攻勢もあり、販売手数料やポイント付与の競争に晒されると、一人勝ちは難しくなる。

 ネット通販もそろそろ壁にぶつかりつつあるのかもしれない。オムニチャンネルが浸透していけば、逆に自社で店舗を持たない弱点が出てくる。目先の売上げしか考えないのは、企業にも利用者のお客にも破滅が忍び寄る黄色信号かもしれない。

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