HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

我が儘に応えるAI。

2017-02-22 07:28:10 | Weblog
 業界では2月を決算月にしている企業が多い。結果が下方修正なら場合によって赤字事業の撤退や切り離しなどが必要になる。その上で、リエンジニアリングというか、売上げ回復の道筋を立てていかなければならない。

 最近、業績不振の企業経営者がこぞって口にし、中期計画にまで盛り込むのが「EC戦略」だ。マーケティング調査でも、「ネットで買い物する」のみ増えていることから、よほど魅力的に映るのだろう。

 そんなことを考えていると、取引先の社長が言っていた話を思い出した。実店舗しかない時代のことだ。「一現のお客さんが店に入って来たけど、何も買わずに去っていった。キミたち(店舗スタッフ)は、それを簡単に見過ごしてはいないか。実はここに大事なヒントが隠れているんだ」と。

 「お探しのものはございましたか」「見つからなければ何なりと申し付けください」と、声かけするのは当然である。スタッフもそれはわかっている。さらに加えるなら、「それが嫌なお客さんもいるから、POPに書いて目立つところに貼っておく」。「来店アンケートハガキを持って帰ってもらい、記入して投函してもらう」。そこまでしないと、店側はお客さんの気持ちがわからないし、戦略構築のヒントもつかめないんだと、熱っぽく語っていた。

 確かに実店舗では商品が購入されない限り、お客がどんなニーズなのかはわからない。お客は移り気だし、我が儘だ。来店したが何も買わないで帰ったのなら、それは探している商品が見つからなかったのか。置いている商品が気に入らなかったのか。またまた他に理由があったのか。

 EC全盛の今、そうした顧客管理は容易になったが、それを実店舗にリンクさせようというところはまだまだ少数派だ。だからこそ、ECと実店舗を上手く連携させて、お客が何を求めているかのデータを一元管理することが重要になるのである。

 例えば、「Webサイトでは濃紺のパンツが売れた」というデータがあるとする。それは「本当は黒が欲しかったけど、なかったから濃紺が売れた」のか、「端から紺系が求められた」のか。その理由をECならレビューなどを通じて確認できないことはない。ただ、実店舗のお客についてもよりきめ細かく探ってECと一元管理できていれば、より中身の濃い情報として蓄積できるはずだ。

 それらをビッグデータ化しておけば、お客の買い物動向や客層別で何を求めているかが探れることになる。商品づくりやフォロー、品揃えにも反映できるわけだ。もはや「無難だから、紺を揃えよう」という程度のバイイングでは通用しない時代である。さらにPOS頼みの手法からも脱却しなければならないのである。

 他にもICタグを用いれば、在庫の動き、購買行動の情報管理は有利になる。さらに映像を使うと、お客が買い物かごに入れた中身までチェックでき、AI(人工知能)で購買行動まで分析できる。手持ちアイテムからおすすめサイズで仮装試着が可能など、ECによる接客&販売手法は日進月歩である。EC戦略への注力は当然、莫大な投資が必要だし、それでどこまで糸へん、アパレル側が潤うのかと、逆に不安になってくる。

 お客の側から言わせてもらうと、筆者ですら実店舗よりECで衣料品を購入するケースが確実に増えている。理由は実店舗ではブランドやテナントの顔ぶれが決まっており、自分がイメージするような商品に出会えなくなっているからだ。また、そうした商品をどこが扱っているのかわからないし、探すには相当の時間と労力がかかってしまう。その点、ECはデザイン、素材、感度という服を購入する条件では海外のサイトまで選択肢が広がり、見つかる可能性が格段に高くなる。

 実際に買う買わないは別にしても、Webサイトへのエントリー=「入店」という行動は確実にあり、お目当てのテイスト、デザイン、色についてチェックしている足跡は、もの凄くあるはずと思う。そうしたデータに基づいでアドサーバーから、筆者が好みそうな商品のバナー広告が送られて来る。実際、サイトでの商品の購入履歴やクリックしてスペックなどを確認したエントリーデータも、確実に残っていると思われる。

 最近、そうしたデータを収集して解析し、客層別での品揃えに生かし、実店舗にしていくといった業態開発ができるのではないかと思うようになった。一言で言えば、究極マーケットインであり、お客が求めている、探している商品を実店舗で、実際に目で見て触れて着心地を確かめてから購入できる、EC+実店舗の進化型ともいうべきか。

 ブランドならネット購入でもいい。アバターによる試着体験ができれば買う人はいる。バーチャル試着ができればサイズ確認ができるので好都合だ。ECではいろんな購買動機が作り出されている。しかし、それは「欲しいものが揃っている」というものではない。まだまだすでにある在庫、売上げが鈍い商品、利益を取りたいアイテムを「いかに伝えるか」「いかに買う気にさせるか」の次元だろう。

 成熟した客層になると、探している欲しい商品が手に入るなら、現物確認までタイムラグはあっても構わない。実際に確かめて買いたいという意識=我が儘なお客もいるのはずだ。それに対応することも、ECビジネスの新たな形ではないだろうか。

 今は2月に麻のシャツを着て、9月にウールのジャケットを着るような時代ではない。より季節に即した実需が起こるため、小売りではそれに対応した商品投入が求められている。何かあれば買うということは決してないし、必要でないものは売れない。だから、お客にとっては欲しくて買いたい商品が手に入るまで1週間から10日程度のタイムラグがあっても、十分に許容範囲と言えるのではないか。

 つまり、実需前にお客が求めるイメージの商品を手配できるような業態が作れないのか。ゼロからの商品作りは不可能だろうが、アパレル在庫〜ピックアップ〜物流〜品揃え(編集)の連携がスムーズにいけば、店作りは可能になると思う。もっと長いスパンで考えると、アパレル、もの作りにも生かせるだろう。ECによるビッグデータを活用して、その辺のマーケット攻略をビジネス化する手もありそうだ。

 ECはお目当てのブランドを検索し、購入するには便利だ。しかし、あまりに情報が多すぎるため、イメージキーワードを入力しただけでは、お目当ての商品に辿り着くのは難しくなっている。

 例えば、現状の通販サイトでは「ジャケット」「ウール」「ネイビー」「きちんと」というキーワードを入力した時、トップには「紺ブレ」が続いて出て来る。そこからお目当ての商品を探すのはひと苦労だ。だから、AIの力を生かして、購入履歴や検索データからお客の嗜好を割り出し、ネイビーのウールジャケットでもピンポイントで探している人に向けた商品を揃える仕組みだ。

 米国の場合は、それをパーソナルスタイリストという「人間」が行っているのだが、「パーソナル」という意味合いは、「お客のファッション感性と同じ思考ができるか」「感覚や意識が共有化されているか」ということでもあり、PCやモバイルによるハード次元でもできなくはない。おそらくAIはそこまでの機能を持ち始めていると思うので、ビッグデータの解析〜MD構築〜販売といった仕組みを整備し、業態を開発することは不可能ではないと思われる。

 ECは実店舗を必要としない分、販売経費は大幅に圧縮でき、利益率を上げることができる。経営者の大半はここに目を付けていると思うが、価格が実店舗と同じならばコスト削減の分だけ商品の原価率を上げても良いのではとの理屈になる。そうはなっていないところにECの課題が見え隠れする。

 それならいっそうのこと、ECの次なるステップにパーソナルの意味を絡めながら、ビッグデータを活用したリアルタイムの市場開発&攻略というビジネスもあり得る。そうした部分にもっと踏み込んでも良いのではないかと思う。


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