HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

30%OFFがお客を惹き付ける理由。

2014-07-23 13:19:13 | Weblog
 7月の始めに駅ビルやショッピングセンターが一斉に夏のバーゲンに突入した。セール後ろ倒しの百貨店も、半ばからクリアランスをスタートさせている。

 ただ、各店のバーゲンが賑わっていたのは、開始日から3日間程度。若者人気の一部のブランドは、開店前から行列ができるが、多くは1週間、10日と過ぎるに従って、お客の入りは完全に鈍っていく。

 そして、20日を過ぎたが、セールPOPが飾られても、閑古鳥が鳴く店は少なくない。それでなくても、衣料品はデフレの影響で、価格が下がっている。これをさらに値下げしたからといって、お客にはそれほど魅力的には映らないだろう。

 低価格といってもメーカーや卸、小売りは利益をとらなければならないので、しわ寄せは原価率にいく。自社開発はもとより、間に商社やODM、OEMの業者が咬むと、原価率は25%程度。カジュアルチェーンになると、20%まで下げられるところもあるようだ。

 プロパーが1,980円のシャツなら、原価率20%では400円以下。そこに生地、副資材、縫製工賃が含まれるわけだから、いったいどんなレベルの商品なのか。その辺もバーゲン以前に洋服の人気を下げている理由かもしれない。

 ネットでは、度々ファストファッションによる過酷な製造現場の取り上げられている。しかし、日本でも多店舗化した業態の店頭価格を見る限り、多かれ少なかれ似たような状況で、低価格商品が生み出されているのは、間違いないだろう。

 そんなことを考えながら、 先週末19日、天神地下街を歩いていると、女性客でごった返すブランドショップが目についた。ファーストリテイリンググループのリンクセオリージャパンが展開する「セオリー」だ。

 土曜日の正午過ぎというのに、隣の「イアパピヨネ」、前の「ナチュラルビューティベーシック」、通路を挟んだ北側の「ストロベリーフィールズ」がほとんどお客を集めきれいないのとは、対照的だ。

 20坪強ほどの店舗は、北半分がカジュアル、南半分がオフィシャルのコーナーに分けられ、ジャケットと組み合わせができるオフィシャルアイテムがキャリア女性の間で大盛況だった。壁面に貼られているセールPOPには「30%OFF」の表示。値引率からすればそれほどでもないのだから、何らかの理由があるはずである。


 天神地下街自体は16日から「ファイナルセール」と銘打ち、50%〜70%OFFを謳っているショップも少なくない。こうした店舗からすれば、全く羨ましい限りだと思う。



 セオリーは1997年にNYで誕生したブランドで、モダンでコンテンポラリーなテイストがキャリア女性を捉えていた。日本ではリンクインターナショナルがライセンス販売したが、あまりに虚飾を排したデザインが日本のキャリア層には受け入れられず、一時は苦戦を免れなかった。

 ところが、2003年にリンクインターナショナルとファーストリテイリングが資本提携し、セオリー本社を買収したことで、日本のキャリアマーケット向けの企画に踏み込み、多少のコンサバ色を加えことで、人気に火がついたようである。

 もっとも、キャリア女性はスタイリングを気にしながらも、フィット感や着心地を重視する。しかも、オフィシャルウエアであることから、質感は譲れない。上質な素材と確かな縫製をそのまま維持した点が、受け入れた理由だろう。

 ただ、価格帯はプレステージとまではいかないが、ベターからブリッジのゾーン。ジャケットは4万円代、ボトムは2万円代、ドレスが2万円〜7万円代と、現在のプライス感覚からずれば、決して安くはない。

 また、今のキャリア女性は、自己啓発からレジャー、グルメ、旅行まで、稼いだ収入を多面的に使う。DCブランド時代のように服だけに投資することはない。それだけ、合理的にライフスタイルを謳歌しているという特長をもつ。

 当然、仕事に不可欠なオフィシャルウエアでも、デザインやテイスト、質感を見抜く目を持ち、一方で価格に対するシビアさも失わない。彼女たちにとって42,000円のジャケット、21,000円のスカートは、やすやすと手を出すプライスラインではないのだ。

 ところが、バーゲンに入り、「30%OFF」になった途端、買い物スイッチが「カチッ」と入る。42,000円のジャケットは29,400円、21,000円のスカートは14,700円。ブランドや商品の価値と価格のバランスからして、彼女たちには「値ごろ感」と受け入れられるのだ。それがセオリーがお客を惹き付けるもう一つ理由だと思う。

 お客さんはちゃんとわかっているのだ。とすれば、30代後半から40代前半の洋服好きの大人には、チャンスがあるのかもしれない。ヤングのようにトレンドを追いかけることなく、上質なものを数年かけて着こなす合理性を持つ層である。

 つまり、今後、大人向けのファッションのキーワードは、 虚飾を排したミニマルさやカッティング、 フィット感や着心地、上質な素材と確かな縫製を、彼女たちにとっての値ごろ感でどれだけ提供できるかだろう。

 低価格ばかりがもてはやされた挙げ句、いつの間にか原価や調達コストが圧縮されて、いろんな意味で本当に「良い服」が市場では見られなくなってしまった。その反動がそろそろキャリア女性から起き始めているようである。

 ただ、「原価率を上げて、価格はブリッジラインを保つ」。そんな難しい課題を克服できるか。そのためにはもう一つのキーワード。「コストダウン」がカギになる。売価を押し上げている様々な中間コストにメスを入れなければならないということだ。

 トレードオフに徹した開発体制やODM、OEM丸投げから、自社企画、デザイン、生産管理のもとで工場への直発注。もちろん、上質な生地を提供してもらうテキスタイルコンバーターの協力も欠かせない。

 これらは泥臭い、古典的な手法かもしれない。でも、やってみないと、低価格一辺倒で圧縮したファッション市場が活性化するとは思えないのである。

 
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