ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

文化政策を市民から提案しよう

2005-12-23 13:47:48 | 横浜トリエンナーレ
去る18日(日)に、82日間にわたった「横浜トリエンナーレ2005」が閉幕した。
ヨコトリ05の最終的な入場者数は、189,568人だったという。集客面でも、予想を上回る成果を上げた、ということができよう(もっとも、予想がどのくらいだったか、というのは共通の認識があるわけではない)。少なくとも、トリエンナーレが始まる前に、「あまり市民に関心を持たれていないのではないか」という危惧があったことを考えれば、関係者の人たちはホッと安堵しているのではないだろうか。

だが、来場者数が多かったからといって、それだけでトリエンナーレが「成功だった」と言ってよいわけではない。
(私も特に意識をして観察していたわけではないのだが)、例えば愛知万博について、新聞などでは入場者数2000万人を突破したことを持って「成功だった」とされているような論調が目についたように思う。それは果たしてよいことなのか。

「横浜トリエンナーレとは、市民にとって何だったのか」「今後、市民とアートの関わりはどのように育っていくのか」を事実に即して、多面的に議論してみないと、ヨコトリ05の意義は見えてこないだろう。

・・・と、このような問題意識を持って、トリエンナーレの余韻が醒めやらぬ内に、それらを検証しようと、以下のシンポジウムが去る22日(木)に開催された。会場は、「もうひとつのトリエンナーレの拠点」だったZAIM(旧関東財務局)2階のトリエンナーレ・ステーション。

トリエンナーレ作戦会議V <市民シンポジウム>
どうする!?「シティアート」の今後
〜ヨコトリ05から08へ向けての展望を語る〜

→ 開催概要はこちら 12/22 トリエンナーレ作戦会議V <市民シンポジウム>開催!

→ 開催結果速報はこちら トリエンナーレ作戦会議V・市民シンポジウムが開催されました

このシンポジウムで、私は、主催団体のひとつである「はまことり」メンバーのひとりとして、パネル・ディスカッションの司会進行をつとめた。

当日は、ディスカッションのテーマとして、次の2つを掲げて議論を進めた。

・テーマA:横浜トリエンナーレ2005と「シティアート」の今後
〜ヨコトリ05は市民にとってどういう価値があったか?
・テーマB:「シティアート」実践のための企画書づくりに向けてみんなでアイデア出し

(注)「シティアート City Art」とは、「人材やアートイベント、景観、歴史的建物などの横浜のまちの資源の活用」、「市民が中心となって進める協働」、「世界の今とつながる新しい価値の創出」を特徴とした芸術文化活動という意味の造語である。この考えにのっとり、「はまことり」の発行するフリーペーパーは、「ヨコハマシティアートニュース」と命名されている。

(参考)→ はまことり、飛び立つ (2005/02/18)

テーマAについては、早々に川俣氏から、「次のトリエンナーレをどうするか、市民から提案を出したらいい。ディレクターについても誰がいいとか要望すればよい」という趣旨の発言があり、基本的にそれに沿っての議論となった。

そこでの議論の流れを聞いていて私が気がついたことは次のようなことである(そのように発言もした)。

「市民が主役」の文化政策というのは、必ずしも行政機関と対立することではない。
(「市民」とは誰のことか、という点も必ずしも明らかではないが)市民の側が期待することに対して、何かの事情で行政機関がそれに答えられないことは当然ありうる。そのようなとき、市民の側は、そこで短絡的に行政機関と対立しなければ、と思うのではなく、「何故、それができないのか」ということについて行政機関に情報開示を求めればよい。(これは、行政機関に対して遠慮してものを言え、ということではない。)
それも、これまでのように、行政機関とつながりのある一部の人たち(少数の街の有力者の人たち)しかそれを知らない(知らされない)のではなく、多くのひとたちが、さまざまなチャンネルでそれを知る機会があるということが重要である。
「何故、それが出来ないのか」がわかれば、そのことである程度納得できることもあるだろうし、それを前提として、市民が主体的に戦略を組み立てて活動していくこともできる。

例えば、第一回にしても第二回にしても、トリエンナーレのディレクターを誰にするかは組織委員会が決めることであって、市民は決定が天から振ってくるのを待っているだけだった。

そのように、市民が受け身で待っているのではなく、例えば行政機関に対しても、どんどん要望を出して行けばよい。実現するかどうかはまた別の問題だが、要望はいくらだって出していい。

市民と行政機関との関係は、行政機関の失敗の責任を追及するだけの対決型あるいはその裏返しとしての行政機関依存型(お金も場所も責任も行政によりかかる姿勢)ではなく、市民として自立した提案を出せるようになることが大事で、行政機関と協働できるところはすればよいし、それが出来ないならば出来ないなりに自分たちのやりたいことをやれる方法を探せばよい。

これは、提案型の合意形成のプロセスを市民の側からどうやって現実化していくかということでもある。

やや話は跳ぶが、ドイツの社会学者で市民社会論に大きな影響力を持つJ・ハーバーマスは、イギリスのコーヒーハウスが「公共圏」の確立に大きな役割を果たしたことを指摘している。
さまざまな情報や意見を持つ人が集まって、「公論」を交わす場があることが市民社会の公共性を育てることになる、というのがハーバーマスの説明である(このあたりについては、花田達朗「公共圏という名の社会空間」による)。

公共圏という名の社会空間―公共圏、メディア、市民社会
花田達朗著
木鐸社

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このことを考えれば、今回、「トリエンナーレのもうひとつの拠点」だったZAIMの機能をどう残し、発展させていくのか、人が集まりネットワークを拡げる重要な機会であったトリエンナーレ学校をどう続けていくのか、というあたりが、さしあたり解決を迫られているごく現実的な課題である。
川俣さんの要望は、「トリエンナーレ学校の次の校長を早く決めてください」ということ。まずはその辺からゆるゆると始めて、一歩ずつ次に向かっていけばよいのではないか。

結局この日は、時間が足りなくなったこともあって、(正式名称も開催の主体も細かくは未定だが)、とりあえず次の「作戦会議」を市民主体で開催しよう、というところだけを決めて終わりになった。

とにかく、「横浜トリエンナーレ2005」が終わったからと言って「横浜トリエンナーレ」が終わるわけでもないし、「シティアート」が終わるわけでもない。

実は、「はまことり」は、横浜トリエンナーレ2005のはまことり版記録集(報告書)を作成する準備を始めている(編集=YCAN推進委員会&はまことり。発行は横浜市芸術文化振興財団)。
今回のシンポジウム参加者には、「記録集」に掲載するための「百均絵画」ならぬ「100字コメント」を会場で書いて提出してもらった。
この「記録集」ができれば、「はまことり」の今後の活動に向けてのプレゼン資料にもなるし、それとともに「トリエンナーレ」組織委員会の公式の記録集の作成も並行しているから、両者で補い合って全体像がよりはっきりわかるものになるとよいと思う。

「記録集」の発行は、より多くの人が「シティアート」について考え、自ら関わってくれるようになるためのきっかけを提供する大事な作業である。3月発行に向けて、早めに編集作業を進めなければならない。「トリエンナーレ」や「シティアート」はまだまだ続く。

ジャンル:
文化
キーワード
横浜トリエンナーレ ハーバーマス コーヒーハウス フリーペーパー
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