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曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

制作企画料が補助金の対象経費に

2006-09-17 06:26:19 | アーツマネジメント
平成19年度の文化庁の舞台芸術振興事業芸術文化振興基金の助成対象活動についての説明会がまもなく開催される。

先日送られてきた芸団協(日本芸能実演家団体協議会)のメールニュース[2006.9.15]によると、これらの事業に関して、平成19年度から新たに「制作企画料」という人件費が対象費目になるなど、種々の点で改定が加えられているという。

その他の改定がどういう内容かまだわからないが、制作企画料だけとっても、上記の支援プログラムに応募している(あるいは、これから応募する)芸術団体の制作者にとっては大変意味のあることである。

いままでは、演じる人(俳優や音楽家、指揮者や演出家を含む)、裏方(大道具小道具、照明、音響、衣装、など)の人件費は対象になっていたが、いわゆる制作者と呼ばれる立場の人たちだけではなく、チケットの販売管理や受付案内業務などの表方業務は(それらはすべて制作業務とみなされるので)補助金や助成金の使途として認められていなかった。

つまり、これらの仕事は、これまで専門の(あるいは有給の)業務として認められておらず、対価ナシ労働が慣行とされていたのである。
きわめて小規模な公演等の場合ならともかく、このやり方では、かなり実態にそぐわない点があり、実際の現場では無理が生じていたと思われる。

芸術文化振興基金による助成とそれと併行するかたちでスタートした文化庁の舞台芸術振興事業への補助金の支出は、平成4(1992)年度分の活動から始まっているはずだ。当初から、制作者の行う業務に対する支出が対象から除外されていることに対しては現場から制度変更の必要性がずっと訴えられていたのだが、15年目にしてようやくそれが実現の運びになったということだ。

これは、制度はいつかは変わるものだ、ということでもあるが、逆に言えば、慣行というものがきわめてゆっくりとしか変わらないものだ、ということを示すものでもあるのかも知れない。

多くの人が現に不具合を感じていて、それを変更するのが望ましいことが当事者にとっては当たり前のように思われるのに、なぜか、実現されないままになっていることも、粘り強く必要性を訴えていけば、社会一般の常識がゆっくりと変わっていって少しずつ時代を動かしていく可能性がある。なぜ、そうでなければならないのか、ということを政策に反映させていくためのアドヴォカシー(政策提言)の重要性がもっと広く認識されるべきだろう。

補助金や助成金の使いにくさの原因は、補助金(助成金)の対象経費が限定(指定)されていること以外にもあって、主なものとして、対象事業の収支の赤字額が上限とされていること(いわゆる赤字補填)、支払いが赤字金額の確定後の一括払いであること(事後払い)の2点があげられる。

これも将来変わる見込みがあると期待しておきたい。

また、今回の改定が、このことにとどまらず、直接の事業経費への限定的助成(事業助成)にとどまらず、すべての経費支出を補助金助成金の対象とする柔軟な方式(運営助成を含む)に道を開くものであることが期待される。(ただし、そのかたちで支援を受けた団体は、お金の使途について完全な情報公開を行うことが前提となる。)

→ (参考) 助成を受けたプロジェクトが黒字になってもいい理由 (2004/12/15)


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