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曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

右綴じと左綴じ

2008-12-26 19:03:43 | アーツマネジメント
ふたつ前の記事の続き。

なぜマンガの右綴じと左綴じの違いについて興味を持ったかということを少し補足しておく。

欧米の書籍が横書きで文章が左から右に流れるのに対して、日本の(というより中国朝鮮も含めて漢字文化圏の)場合は、縦書きで上から下へ読み、行が右から左へと流れていく。したがって縦書きの場合、本は右綴じになる。

ここまではよい。特段気になることがあるわけではない。

だが、マンガの場合、ここから先が興味深い。

グーテンベルク以来、本と言えば左綴じが当たり前であって、右綴じの習慣がない欧米では、日本の右綴じの雑誌や書籍を左綴じに直して発行していたわけだが、その際、手間や経費を省く意味で、マンガのページ(ということは原画そのもの)を左右反転させて無理やり左綴じにし、そこにフランス語ならフランス語の台詞を入れて印刷製本してきたのだという。

このことを、私は、中村伊知哉、小野打 恵著「日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像」(日本経済新聞社)によって知った。

日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像
中村 伊知哉,小野打 恵
日本経済新聞社

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同書には、高橋留美子の「犬夜叉」の図版が例として紹介されているが、よく見ると様子がおかしいことに気づく。何故かというと、画中の人物の左右が逆になっているからである。これだと剣の持ち方が左右逆になるし、何よりも、着物の着方が常に「左前」になってしまう。

これでよしとされてしまうのでは日本人としてはたまったものではないが、そこはそれ、本というものを右から左に読むという発想自体がヨーロッパ人にはまったくなかったのだから、出版関係者はそれに気づいていても、読者の常識を無理やり変えさせるわけにはいかず、おいそれと右綴じにはできなかった、という事情があるようなのである。

そのような状況が、マンガ及び日本文化への理解が進んだことによって、今ではフランスのマンガ本の3分の2が右綴じで出版されるようになった、というのが右綴じ本出現の文化史的な意味であった、というわけなのである。

ジャンル:
文化
キーワード
ヨーロッパ人 高橋留美子 中村 伊知哉 中村伊知哉 漢字文化圏
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