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いろんな本の読書備忘録です。書評・感想文・分析・タイトルだけ借りたただのボヤキや思い出話など。たまに本じゃないのも。

君の名は。 Another Side:Earthbound

2016年10月15日 | 小説・文芸
君の名は。 Another Side:Earthbound
 
加納新太
角川書店
 
 話題が話題を呼ぶというか、とにかくなんだかすごいことになっている「君の名は。」であるが、こちらはアナザーストーリーと銘打った小説版。よくあるスピンオフ、サイドストーリー系かと思っていたのだが、既に読んだ人から「案外よくできていた」という感想をもらったのでkindleで落として読んでみた。
 なるほど。最終章に限ると、数多あるスピンオフ系と一線を画している。ほかの章はそれぞれのキャラのサイドストーリーの域を出ないように思う、いわばファンサービスてきなものだが、最終章だけは、本作に欠如していた情報をうまく補った感じだ。映画本編とこの最終章で、「君の名は。」はコンプリートしているといっても差し支えないように思う。
 その最終章というのは、映画のヒロインであるところの三葉の、その父親の話である。ここから先、映画を見た人でないと全くなんのこっちゃらわからない話をする。
 
 映画をみると、あの父親はなんであんな態度をとるのかと思う。映画のネタバレになるが、三葉の母親は亡くなっており、父親は家を出て町長をやっており、次の選挙にも出馬している。映画の中のセリフで彼は村の外からきた人間ということが示唆されているが、どちらかといえば憎まれ役の描写である。
 しかし、映画において彼に関する情報はほとんど示されていなかった。最後のほうのシーンで、なぜ祖母と妹の四葉が、父親と一緒にいたのかなど、一切の説明がなく、映画をみる限りでは、彼のことに関してはよくわからないのであった。しかも困ったことに、彼の決断は物語の進行上、けっこう大事なことだったりするのである。
 
 で、こちらの小説のほうでは、この父親になる男がそもそも何者で、なんの理由があってこの町にやってきて、この町に住むようになり、結婚し、その後に家を出て、一方で糸守の町長などやっているのか。ついでになぜテッシーの父親の土建会社とつるむのか。なぜあんな剣呑な態度をとるのか。お前は誰だ、というあのセリフは何なのか。彗星がふったあの日の彼はどういう行動をとったのか、が開示されており、なるほど映画でのあれはそういうことなのか、と納得がいく――とまあ、こんな仕掛けになっている。
 
 これ、新手のメディアミックスじゃね? と思ったわけである。
 わざと本編のほうの情報を欠落しておいて、別メディアで補完させる。
 通常のスピンオフは、本編だけで十分に完結させているものに、いわば追加トッピング、悪く言えば蛇足的に付け加えるものだけれど、この「君の名は。 Another Side:Earthbound」は本編映画のほうで一部情報を欠落させておくのである。この父親の章を読んで、パズルのピースがはまったようなカタルシスはけっこうクセになるものがある。
 この方法、他の映画などでも採用されるようになると厄介である。
 
 惜しむらくはこの父親の章だけでは1冊持たず、他のキャラ3人分の章を加えて1冊にした感があることだ。これらの賞も悪くはないが、こちらはまさしく追加トッピングといったところ。
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