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第四次産業革命  ダボス会議が予測する未来

2016年11月12日 | 経済
第四次産業革命  ダボス会議が予測する未来
 
著:クラウス・シュワブ 訳:世界経済フォーラム
日本経済新聞社

 「<インターネット>の次に来るもの」と同内容で、現在社会において進行しつつあるIT技術やゲノム解析技術のその先に、第4次産業革命を予見している。
 
 第4次産業革命とは、様々な科学技術の発展による、我々の社会への過去の歴史にみない恩恵と、それと同時にもたらされるこれまでの秩序の破壊である。
 すなわち、さいきんよく言われるように、AIの飛躍的進歩で人々の雇用が失われるとか、所有経済からシェアリング経済に移行するとか、ブロックチェーンが中央集権制を解体するとか、IoTがパーソナルカスタマイズを極北まで進めるとか、遺伝子操作によるデザインベイビーの可能性とかを、このダボス会議でも予見している。
 
 「ダボス会議」は、もともとは、世界経済の今後を模索する会議体で、世界各国の政治家や経営者が集うイベントであり、グローバルビジネスのネットワーク構築の場であった。しかし、いまやIPCCや世界銀行とならぶ、国際社会の未来への予見と警鐘をメッセージ発信する一大ブランドになっている。しばしば、これからの未来に国際社会の一員として我々は何をしなければならないか、あるいは何をやめなければならないかを示唆してくる。

 したがって本書も、破壊的イノベーションを起こすこれからの未来社会において、ヒトとして生き残るために必要な資質や素質のヒントをあげている。
 
 
 まず、モノやサービスを甘受する消費者としての利便性は飛躍的に向上する。端的に言えば、コストが下がり、しかもモノやサービスの透明性が確保され、無駄な手続きはなくなり、ヘンなものはつかまされにくくなる。エネルギー効率もよくなって地球環境のためにもよい。
 
 しかし、「失業リスク」は極めて高くなる。これはもうどうしようもない。とくにマニュアル型の定型業務の雇用は激減するとされ、ホワイトカラー職でも、ある種のルーチン型のものは存在意義を失う。また、これはジェンダーギャップの拡大なども引き起こすとされる(電話オペレーターなど、筋力が期待できない女子の単純労働の領域がAIによって駆逐される)。
 究極に言えば、「労働」の金銭的価値は下落し、それよりは「資本」のほうが利益をかせぐ。ピケティの言う通りのことが加速されるわけである。経済的格差は拡大する。
 
 そして、ふだんの生活における「プライバシー」はかなりあきらめなければならなくなる。消費行動、生活行動はほぼどこかに記録され、蓄積される。
 プライバシーという概念は、近代社会、もっというと20世紀以降に台頭した概念であり、日本においては戦後の核家族化や団地造成とともに高まったと言われる概念で、つまり長い人類社会史においてはひとときの「流行り」でしかなく、今後ふたたびプライバシーの重視性は低下していく。プライバシーを守ろうとすればするほど、時代そのものの大きな潮流からは取り残される。
 
 
 すなわち第四次産業革命は、「消費者」としては恩恵をこうむり、「労働者」としては大打撃を受け、「生活者」としては一長一短、といったところだ。
 
 
 そんな近未来では、「小さなスキル」をたくさん持っている人が生き残りやすいと本書は指摘する。
 ひとつの企業に長期的な安定のもとで雇用されるのではなく、フリーの身として、「オンデマンド経済」を味方ににして、つまりアルバイトの掛け持ちをやりながら稼ぐように、次々と起こる小さな様々な需要を相手に賃金を稼ぐ。空き部屋を民泊に出し、自家用車をタクシーとして登録しておき、ベビーシッターや家庭教師をやりながら、株の売買などで「資本」をつくりこんでいくというような、言わば「器用貧乏」な人がサバイブできるということになる。
 
 不透明な状況では多様性を確保しておくというのはサバイバルの定石であるが、ということは、うちの小学生の娘なんかも、中学受験のための国語算数理科社会の塾通いなんかよりも、料理とか工芸とか農業とか異文化コミュニケーションとか半田ごてとか鍼灸とかそういったもののスキルを蓄積させるようにしたほうがいいのかしらなどと、いろいろ考えてしまう。
 
 
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