goo

春の掌

春は二日ぶんの疲労の後に
ひとつの光る視野になる
春は犬になり 春は猫になる
春は野鳥に 春は樹木に 春は交差点に
春は都会の掌にあらわれた
スマートフォンになる
視えないカオスの回路の中にしずみ
視えないカオスの空の中にしずむ
柔らかな存在としての春の掌は
しきりに答えになろうとして
この春をあきらめてしまう
 
非力な青空を見上げてから
自転車は光の道路の層を走り抜ける
都会の裏部屋の影の人に
さりげなく押された信号を待ち
生命の老人たちの顔
生命の子どもたちの顔
いま生きているということが
この春に静止しても
なにも変わらないまま
幸福と不幸の答えがない
 
あのひとのことを思う
きみのことを思う
回廊の椅子に座って
春の記憶と現在の層の中で
スマートフォンと手帖の中で
いつ終わってしまうかもしれないのに
視えるシーンばかりを並べたて
この春に視えたものと
視えないものの光景の中で
うつむいている
奇跡の星 奇跡の生命 奇跡の闇
奇跡の幸福 奇跡の悪人
照らされて きみは
深夜のキッチンで きみは
この春の掌を持っている
明滅する掌の答えを
じっと視ている
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« そして春は 時間の心 »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。