私が独身だった頃、住んでいた街の音楽ホールが、
新しいグランドピアノを購入しました。
新しいピアノは、スタインウェイ社のフルコンサートピアノで、
音楽好きの間では、結構話題になりました。
そんなある日、ホールの方から
「ららみさん、今度入ったピアノなんだけど、新しくて音の伸びが悪いんですよ。
良かったら、ピアノ庫に置いてあるピアノを、時間のある時に弾いてくれませんか。
新しいピアノは、誰かが弾いた方が、状態がよくなるので。」
と言って頂きました。
私は、嬉しくて、「ありがとうございます。嬉しいです」と
即座に引き受けました。
最初にピアノ庫に入った時は、改めてフルコンサートピアノの大きさに
威圧感を受けました。
そして、ホールの方に言われた通り、端から端までの音階練習を何度もしました。
その後に、ショパンのエチュードを2曲、弾いてみました。
その時に、「あれっ? 私って、こんなに下手だったっけ?」と思いました。
音色がスカスカで、しかも、音が堅いのです。
まったくの初心者みたいな音色しか出せないことに、私はショックを受けました
最初は、ピアノが新しいから、だから音が堅いのかな?と思いました。
でも、何度か通ううちに、私はあることに気がついたのです。