佐藤さえ の 本棚

読んだ本の感想を書いています。

キノの旅XX the Beautiful World

2016-10-16 21:31:32 | 小説
キノの旅XX the Beautiful World
時雨沢 恵一 (著), 黒星 紅白 (イラスト)




 キノとしゃべる二輪車エルメスが旅をして色々な国を訪ねる物語の20冊目です。
 色々な文化程度の、それぞれの風習がある城壁に囲まれた国々が点在する世界。
 この巻は、
 キノがいきなりナンパされる「拘らない国」
 フォトに記念写真撮影を申し込んだ年の離れた夫婦の顛末を書いた「夫婦の話」
 羊の群れのいる草原を横切ろうとしてキノとエルメスが災難に会う「羊たちの草原」
などが、載っています。 
 なかでも、
 第四話、第五話の2編「宝探しの話」の四話で提示された研究者の美談から、五話で語られる真相のどんでん返しの驚きや、「ターニングポイント」の少年の激しい思い込みから、成功者の語る思い出に対するスタンスの大きな違いが「キノの旅」らしく本音と建て前の暴露の形になっていて面白かったです。 
 旅の寓話の短編集。
 どのお話も面白かったです。
   
キノの旅XX the Beautiful World
時雨沢 恵一 (著), 黒星 紅白 (イラスト)



 以下個人的な感想です。お話の重要な部分が分かる記述がありますので、未読の方はご注意ください。

 久しぶりに本の感想を書きます。
 なんと10か月ぶりです。
 仕事で異動があったりしたせいで、めっきりブログの書き込みと遠ざかってしまいました。
 でも「キノの旅」20巻、あいかわらず面白いので、アマゾンにすらすら感想が書けました。
 
 シズ様の刀の活躍はこの巻でもありませんでしたよ!残念!
 あと、「拘らない国」のイラスト、キノさんの「壁ドン」でキノさん美少年ぶりにびっくりでした。
 「旅の話a/b」のフルフェイスのヘルメットをかぶったキノの頭部のアップもすごくきれいです。
 たくさん書きたいことがあるので、
 これから数日かけて、一話ずつの感想をアップして行こうと思っています。



 口絵 旅の話・a/b Around the World
後半bを本の前に掲載し、前篇aを本の後ろに掲載する掌編
 夕日が沈む丘で、人々が「世界を何周したか」おしゃべりに花を咲かせ、フルフェイスのヘルメットをかぶったキノが聞いています。
 明日ここに来たら「世界を一周してきた」とみんなに話すよ、とエルメスと会話。
 外壁の脅威にさらさないために城壁の中だけが世界だと、教えられている人々の国でのできごとでした。

 夕日がきれいな丘で、ライダーたちが「ここがいちばんきれい」と会話しているのが楽しそうで明るい掌編。
 世界が外にもあるということを知った人々も、それを国民が知る必要はないと判断したうえで知らせないでいる、平和な国の話でした。ヘルメット姿もかっこいいもんだよという時雨沢先生の主張ももりこんであるのかな?夕日の反射と警護の人物がヘルメットに映っている凝ったイラストです。10月17日 追記


 口絵 海のない国 Can You Sea Me?
 海を知らない国の人々に、海について素敵な詩で説明するエルメスの短編。
 詩を公表するのが恥ずかしくて、お話をくっつけたのかもしれない感じました。
 にしてもエルメスの扱いが可愛そう。

 副題 海という単語 seaって動詞になるの?とちょっと驚いたので、どなたか知っていたら教えてください。
    see見る とsea海 をひっかけたのだと思うけど、どうなんだろう。え、三段活用があるんだ、知らなかった!形容詞: seaer(比較級) seaest(最上級) 10月22日 追記

1 人間の国 the Ark
 シズとティーと犬の陸が旅の話。

 経験した人は戻りたくて絶望するくらい、野生の生活は幸せ。
 賢者として生活することを選べますよ。という終わり。
 裸の集団がまたしても。しかも完全肌色でした。
 空間が狭いと、争いが起きると思うんだけど、みんな仲良しで平和だったという設定。
(バイオスフィア2の実験とか。どうしても争いが起きて実験が続けられなくなるみたい)

 賢者が説明することは理解できても、納得いかないですよね。
 しかも賢者としての生活は死ぬほど嫌なんだ、と見せつけて置いて、「賢者になりませんか」って言われても困るよなあ。
 支配される側が「幸せ」というのは平和でいいけど、支配する側がこんなに悲しいのが残念な国。

 シズ様、この国でもお話を聞くだけの傍観者でした。
 1年に一話なので大活躍はなかなかないんですね。残念です。
  

2 仲の悪い国 I Need You.
 三つそれぞれの国に交流があれば、足りないところを補完し合うことができるのに。
 と言うお話。
 副題が6巻の「長がいる国」と同じだから関係あるのかなと思ったのですが特になかったです。


3 拘らない国 Love Them All!
いきなりキノが男性位に言い寄られて、
「この国では複数の恋人を持つのが常識で一人だけ作るのは法律違反なんだよ」
と説明されるお話。
 ある意味確かに正しいなあと思居ながら読みました。
 私は一人で十分なので、現在の立場に不満はないのですが、世に聞く「痴情のもつれ」とか無くなるかも。

 ただ、一夫多婦性の国でもだんだん一夫一婦制に変更されていっていることを考えると維持するのは難しいシステムなのかな。
 そういえば、男性も女性も複数の恋人というと平安時代以前ですよね。
 つまり日本は経験してるんですよね、「拘らない国」時代。
 和泉式部とか、紫式部とかの「恋人がやってこないやきもきいらいら」とか「デートの約束をブッキングしたので大慌て」の文章読むと、恋人が複数はそれはそれで実際難しいのかも。
 とかいろいろ考えました。

 キノのエルメス一途なのがわかりました。(バイク・ラブなんですね)
 見開きのイラストがすごく素敵で、キノの少年らしい凛々しさでいったいどんなお話だろうとドキドキしました。(実はお話とあんまり関係ない)

4 宝探しの話 Generic

 久しぶりに少女のキノと師匠の会話。
 みんなに喜ばれたノートをもらったときのお話をしてあげるね、と約束する次のお話の前振り。

 副題を検索してみたけど「薬」にかかる部分は「((主に米))〈薬などが〉(商標登録による保護を受けず)一般名称で販売される.」と載っていて、ジェネリック薬品とはそういう意味だったのかと思いました。
 ホチキスに対するステープラーみたいなことですよね。 権利者が権利を放棄しているからこのタイトルなのかな。


5 宝探しの話 Genocide

 いきなり副題が大虐殺!
 閉所もので推理仕立ての怖い宝探しです。
 師匠の優しい顔が見ることができるラストが面白いです。
 
6 夫婦の話 Taken
 フォトとソウのお話
 といっても主役はお客さん夫婦。
 夫婦で、お互いを偽った他国のスパイだったというどんでん返しが2回入ったひねりの利いたお話。
 でも、フォトが主体のお話のせいか最後は「夫人が夫を好きだった」ことが分かったり、「お茶元気かな?」というフォトの可愛いセリフがあって、ほのぼのした味わいになっています。 


7 ターニングポイント Turning Point

 思い込みの激しい思春期の少年が、殺人を企て3回失敗。
 3回標的を変えて、3回目はキノが標的。
 あっという間に熨されて、道路に放置されます。
 少年は、熨されて遠のく意識の中で、旅人の生態を研究して「次は葬ってやる」と心に強く誓います。
 後年その少年が作家として大成功してジャーナリストに転機はいつでしたか?と聞かれて「転機はなかった」「連鎖だと思う」と答えているところで終わり。

 少年が「旅人の話を研究して作品を作って」作家として大成功して、いつしか殺人から心が離れて行ったそのきっかけは、「3つの殺人計画が破たんしたことによる」と思うと
一連のお話の出来事が転機なんだろうけど、「インタビューで答えたらダメな話」ですよね。
 ある意味「連鎖」も正しいと思うけど、これは転機を話すに忍びないのでごまかしたと思うとちょっと楽しい。
 大統領が長期政権をしいている安定した国で、国民的美少女をお嫁さんにして、みんなに慕われている大作家っていいですよね。

 18巻の「私の戦争」の主人公を彷彿とさせる少年なので、ひねりが効いたハッピーエンドがうれしくて、この20巻の中で私が一番お気に入りの短編です。 
 

8 羊たちの草原 Stray Army

 キノがエルメスに乗って草原にやってきたところ、向こうにいた羊の群れがキノ達を襲ってきます。
 エルメスの勧めに従って、単身で草原の裂け目に逃げたキノは数か月前の羊の犠牲者の乗った車を発見して。
 という脱出情景が描かれ、目指す国に方法の体で入国したキノ達に管理官から「羊たちがなぜ草原にいて旅人を襲ったかの理由」が語られます。

 羊がおとなしいというイメージが実はあまりない私。
 本当は臆病で、怖がりでおとなしい動物なのに。
 思い出しました。学生時代、学校の草地で実験動物のヤギが学校の農場で草を食べているのが可愛くて、なでようと手をだして、頭でつっこまれて転ばされたからだった。
(そのヤギ以外はだまってなでさせてくれたものなのです)
 羊とヤギは気性が違うのに、そのせいで「気を付けて接しないといけないぞ」と刷り込まれているようです。
 あと、昔近所が国営の牧場で普通に草原の羊の群れを見ていて「家畜だからペットとちがって可愛がるものとは違う」と思っていたせいもあるかな。

 このお話を読んでいる最中は、怖い羊がリアルで「キノがんばって逃げろ!」と手に汗を握り、炎を超えてやってくる羊には「ジンギスカンだ」とちょっと食欲がわいたりして楽しませてもらいました。
ここまで10月22日 追記

 Stray sheep という言葉があるので、それをひねったのが副題かな?
 ストレイシープって夏目漱石の「三四郎」でヒロインが思わせぶりに言う言葉なんですが、そこあんまり関係ないよね。

おまけ キノの旅宇宙編
 あとがきみたいに掲載されている掌編
 キノが宇宙飛行しながら、宇宙船のエルメスといつものような会話をするお話。
 流離いの遺跡ハンター“シン” はヴァイスヴァーサのシンのことかな?
 宇宙服着たキノのイラストが手塚治虫のマンガみたいで可愛らしいです。

 
 今年も楽しませてもらいました。

 
ここまで10月23日 追記 


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