刑期を終えた男が妻のもとへと向かう高倉健主演のロードムービー。
失恋のショックで仕事を辞め北海道へドライブの旅に出た欣也は、
同じ失恋で傷ついた朱美と炭鉱夫を名乗る勇作と知り合い、
3人で旅をする。だが、勇作にはある秘密があった。
もてない青年・欽也(武田鉄矢)は中古車を買って北海道旅行へ赴き、
一人旅の朱美(桃井かおり)を車に乗せる。
やがてふたりは謎の中年男・島雄作(高倉健)と知り合い、結局3人は旅を共にすることになる。
雄作は網走の刑務所を出所したばかりで、妻の光枝(倍賞千恵子)の住む夕張へ帰ろうとしていたが…。
名匠・山田洋次監督が手がけた日本映画史上に残る名作中の名作。軽薄だが根は純な若者たちと不器用な中年男の交流は、いつしか心の旅へと転じていき、
その終着地でもある夕張を彼らがめざすクライマックスは、
黄色を意識させるアイテムの点在や、佐藤勝の音楽の妙もあってスリリングに盛り上がり、
その後すがすがしい感動のラストが観る者の心を潤してくれている。
ミスター日本映画こと高倉健のイメージは、本作で見事に決定づけられた。
キネマ旬報ベストテン第1位など、その年の映画賞は文字通り本作が総なめ。
余談だが、北海道を旅行しているときに、ふと食堂に入って「カツ丼とラーメン、その前にビール」と注文する者は、
絶対にこの映画を観ている。間違いない。 。(的田也寸志)