つれづれおもふ

思えば遠くに来たもんだ~ぼつぼつ語る日々の出来事

ある日、娘と。

2011年02月08日 | 文章


意を決して娘の部屋に向かうと、私は一気にまくし立てました。

「母はね、いろいろ我慢していたの。眉毛を細くしたり、スカートの丈を短くして、襟元や袖口のボタンをはずしてだらしなく制服を着ているのも、まず今時の女子高生がやっていることをやってみたいんだろうし、入ったばかりの学校で緊張することも多いだろうから、あれもこれもって文句言うのいけないだろうと思っていたけれど、歩きながらもの食べて、まして制服で、くちゃくちゃやっているのだけは絶対に許せない!やめなさい!」
午後から雨が降り出して、自転車通学している娘は髪からしずくが垂れるほどに濡れ、濡れた制服を半分脱ぎながら困ったような顔をして、私のほうをみていました。少し前に玄関をはいってきたとき、生意気な表情でガムを噛んでいたのです。

恥ずかしいことですが、私にはしゃれっ気というものがありません。人間は内面を磨かず、外側だけ飾っても仕方がないなどとつっぱっているうちに内も外も飾りようがない年齢になってしまったのです。でも、この頃はまず外側を磨くことも大切だと感じるようになってきて、身の回りに気を使う娘に、こういう母親の娘にしては上出来だと感心しています。ですが、制服となるとそのさじ加減がわかりません。私の持っている感性では、娘の制服の着方はイエローカードですが、周りのお子さんと見比べて、これぐらいはいいのかもしれないと考えてもいます。老いては子に従えといいます。細かいことなど言わず、若い感性に任せることも必要なのかもしれません。

などと考えあぐねたその次の日、末っ子の通う小学校に花ボランティアとして出かけました。小さなつぼみをつけた花の苗を花壇に植えこみながら、隣で作業をする年配の女の先生に昨日の一部始終を話しました。

「私たちの育った時代はそうだったわね。制服をだらしなく着るのは不良だったし、歩きながら食べていいのはお祭りの時だけ。今は…。みいんな、普通のことよ。ふふ、そんなこと言っていたら天然記念物って呼ばれちゃうわ。お前の親は明治の生まれかってね。」

先生はそこで思いっきり雑草を抜きとり、笑いながら私のほうを見て、

「でもね、なんて呼ばれようと、お行儀が悪いことだから言い続けてほしいな。」

千の味方を得たように感じました。

相変わらず娘は眉毛を細くしています。スカート丈も私にはどうもよくわかりません。外ではどんなことになっているのか…。ですが少なくとも家の出入りの時には、襟元と袖口のボタンを留め、口にものを入れて帰ってくることはなくなりました。彼女なりに、天然記念物の母親との妥協点を探してくれているようです。                    (2009年6月)


                          

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