仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「消された覇王」  小椋一葉

2005-10-15 12:33:02 | 仙丈亭特選本(5つ星)
消された覇王

河出書房新社

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お薦め度:☆☆☆☆☆


私は、日本古代史の最大の謎、すなはちこの日本列島に「國」がいかにして成立したか、
を解明するには、スサノヲとニギハヤヒを解明することが必要だと思つてゐる。

本書は、日本各地の神社の祭神と傳承を徹底的に調べあげて、壯大な建國のドラマを再現してみせた。

古代の太陽神は天照大御神ではない。
天照大御神は本來、太陽神を祀る巫女だつた。
ではほんたうの太陽神は?
それは、三輪山の大神神社に祀られてゐる大物主神であり、
「天照國照彦天火明櫛玉饒速日尊」、すなはちニギハヤヒのことなのであつた。

古代史を解明するための材料は、史料と考古學の成果である。
しかしながら、史料は既に研究しつくされてゐるといつても過言ではない。
小椋一葉は神社を調べることで、從來の史料に記されてゐない材料を得た。
これは、鳥越憲三郎が「神々と天皇の間」(下記參考)で使用した手法に前例がある。
しかし、その材料を使つて、かくも壯大なドラマを構築し得たのは、ひとへに小椋一葉の熱意と創造性の賜物だらう。

あとがきに、梅原猛への謝辭がしるされてゐる。
この二人、出會ふべくして出會つた、まさに「一期一會」だつたのではないか。
そんなことを思はされた。

古代史を部分的にではなく、全體として把握したいといふ慾求をお持ちのかたに、
本書をぜひお薦めしたい。


2005年8月20日読了

<參考>

神々と天皇の間―大和朝廷成立の前夜

朝日新聞社

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消された大王 饒速日(ニギハヤヒ)―記紀の謎を暴く

学習研究社

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