仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「凍」  沢木耕太郎

2006-02-05 20:30:38 | 仙丈亭特選本(5つ星)
「凍」  沢木耕太郎
お薦め度:☆☆☆☆☆


この本は凄い。
帶にはかう記されてゐる。
「もはや、フィクション、ノンフィクションの區別に意味はない。
ここに壓倒的物語が存在する。それがすべてだ。」
この言葉に僞はりはない。
まさに「壓倒的な物語」である。
それも事實に基いた・・・。

山野井泰史と山野井妙子の夫婦がヒマラヤのギャチュンカン(7952m)に挑んだ。
この山は8000mにわづかに足りないために知名度は低いが、標高差2000mにも及ぶ北壁は登攀困難で、クライマーを寄せ附けない。
その北壁をこの夫婦はアルパイン・スタイルで登らうとしたのだ。

登攀は困難を極めた。
7000mを越える高度でのビヴァーク、それも2晩。
それだけでも奇跡のやうな話である。
この夫婦は7000m以上のところで、酸素もなしに6日間も生死を賭けた死鬪を繰り廣げたのである。
ヒマラヤといふ大自然を相手に・・・

雪崩に直撃され、宙吊りになつた状況からの生還は、まさに奇跡のドラマとしか言ひやうがない。
人間はここまで強くなれるのか!
そして、お互ひを信頼しきれる夫婦の素晴らしさ!
讀み了へて、この感動を言葉にするのが難しい。

山の知識があつたはうがイメージしやすいとは思ふが、なくても充分にその凄さは想像できると思ふ。
登山に興味のある人はもちろん、さうでない人にも是非讀んで頂きたい一册である。


2006年2月5日讀了

<追記>
ちなみに、山野井泰史さんは、NHK土曜ドラマ「氷壁」で登攀シーンを監修されてゐる。
あの登攀シーンに不自然なところが少ない理由がよくわかつた。
(もちろん全くないわけではないが、それは俳優さんでは出來ないからだらう)




新潮社

このアイテムの詳細を見る


ジャンル:
キーワード
沢木耕太郎 山野井泰史 土曜ドラマ ギャチュンカン アルパイン
コメント (16) |  トラックバック (6) |  この記事についてブログを書く
Messenger この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック シェア
« 「遠き雪嶺」 (上... | トップ | 寒い・・・ »

16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
凄いですね (domani11)
2006-02-06 00:23:22
domani11です。

トラックバック有り難うございました。

「凍」が凄いということでは一致しましたね。私は登山が趣味ではありませんが、無我夢中で読み終えました。沢木耕太郎の事実経過を淡々と記述しながらここまでの迫力を感じさせる力に圧倒されました。モデルの凄い体験と作者の凄い力が相乗効果を出したように思います。

ついでに、カテゴリーの「クラシック」を覗かせていただきました。私はバッハの鍵盤音楽では「フランス組曲」が一番好きですが、その次は「平均律」です。私が持っているCDも仙丈亭さんと同じリヒテル盤です。
凄い本です (仙丈)
2006-02-06 00:59:57
domani11さん

コメントありがたうございます。
この本は母が讀み終つたのを貸してくれたのですが、
讀み了へてから心の底から母に感謝しました。
かういふ本に出會へたことに感謝です。

平均率はリヒテルが好きです。
グールドはどうも即物的過ぎて・・・
むしろグルダのはうがグールドよりは好きです。
フランス組曲も拔萃版になりますが、リヒテル版を聽いてゐます。

はじめまして (la-terre-bleue)
2006-02-06 11:37:33
トラックバック、ありがとうございました!
本当、山野井夫婦の”信頼”という絆の深さを感じた本でした。お互いの力を知り尽くし、お互いに素晴らしい実力を持ち合わせているからこそ、この壮絶な登攀成し遂げることができたのだと思います。
 すごい、の一言に尽きてしまいます。
トラバック (こころち〜)
2006-02-06 14:44:39
本好きなんですね。トラバックしていただきありがとうございました。また、良い本がありましたりしたときはお教え下さい。ブログにも遊びに来てくださいね。
信頼の絆 (仙丈)
2006-02-06 21:24:17
la-terre-bleue

コメントありがたうございます。
あのお二人は、強い信頼の絆で結ばれてゐますね!
奧樣の妙子さんには感心してしまひました。
あの、物事に動じない勁さ!
ああいふ二人だからこそ出來た偉業ですね。

本が好き (仙丈)
2006-02-06 21:26:50
こころち〜さん

コメントありがたうございます。
私は本が好きです。
特に、この本のやうな・・・
自分ではたうてい出來ないことなのですが、本を讀んでゐるとまるで自分がその場にゐて體驗してゐるやうな氣がします。
こころ豐かになれますね。

はじめまして (K)
2006-02-06 22:17:24
TBありがとうございました。こちらからも打たせて頂きました。すばらしいブログですね。『氷壁』のエントリもじっくり読ませていただきました。

『凍』のストーリーは山野井さんの自著も含めて何度も読んで知っているのに引き込まれて一気に読んでしまいました。沢木氏の筆力に脱帽です。


今後ともよろしくお願いします。
沢木耕太郎 (仙丈)
2006-02-06 22:29:37
Kさん

コメントありがたうございます。
それから、そちらの記事での<追記>も!

實は私は沢木耕太郎さんの本を讀んだのはこれが初めてでした。
よほど念入りに取材をしたのでせうね。
登攀シーンなどはまるで自分がその場にゐるやうな臨場感がありました。
素晴らしい筆力ですね。

かういふ本を讀むと、山の懷にもぐりこみたくなります。
もう自分では登れないでせうが・・・
本も山も良いですね (しょうぶん)
2006-02-06 22:29:44
TBありがとうございました!!
これを読んでからは山岳小説にハマってます。
だけど、ノンフィクションの本作に勝るものは
今のところ無いですね。

何かお薦めがありましたら、
是非教えて下さい。
ではでは。
新田次郎 (仙丈)
2006-02-06 22:46:06
しょうぶんさん

コメントありがたうございます。
山岳小説といふと、まづ頭に浮ぶのは新田次郎です。
彼の山岳小説はみな素晴らしいと思ひますが、私の一番好きなのは「孤高の人」です。
不世出の單獨行者と云はれた加藤文太郎を主人公にしてゐます。
もしまだ讀んでをられないやうであればお薦めします。
あと、冒險ものになりますが、 笹本稜平の『天空への囘廊』は面白かつたですよ〜

TB有難うございました。 ()
2006-02-07 13:59:34
初めまして。
TBを辿って参りました。
旧字体にこだわった渋いブログですね。

『凍』については私も記事にしておりますので、お時間が許せばご一読下さい。アドレスを貼り付けておきます。
http://tripleb.seesaa.net/article/8740402.html#more

では。
ブランコ (仙丈)
2006-02-07 23:14:35
轍さん

コメントありがたうございます。
「言葉は、ときに映像を凌駕する」とは、仰るとほりですね。
この作品を讀んでゐると、例へ暖かい部屋で讀んでゐたとしても、寒さを感じてしまひます。
ザイルで作つた、標高7000mのブランコ・・・
そんなところで眠れませんね、普通!(笑)

Unknown (しん)
2006-02-08 21:42:13
TBありがとうございました。
この本読んだあとで、山野井さん自身が書かれたのも読まないとぉー、と思い、すぐに『垂直の記憶』も買ってしまいました。
その前に『氷壁』が立ちふさがっていて、また読めてないんですけどね。
やつつけませう! (仙丈)
2006-02-08 22:09:03
しんさん

『垂直の記憶』、私も讀んでみたいです。
眼前に立ち塞がつてゐる『氷壁』、ぜひ、やつつけて下さいまし!(笑)

TBありがとうございました (変愚院)
2006-02-09 17:49:27
はじめまして…
「凍」は本当に凄い本ですね。
自分が山登りをしているもので(といっても歳をとってからは楽なところばかりですが…)
山野井夫妻の山との闘いの「凄さ」には本当に圧倒されました。
帰国後の闘病生活も淡々と描かれていますが、かえって凄さを感じます。
日乗さんが、いろいろなジャンルの本をお読みになっていることにも驚きました。
これからもよろしくお願いします。

他の山の本も紹介していますので、お暇な時また私のBLOGにもお越し下さい。
羨ましい (仙丈)
2006-02-09 22:55:52
変愚院さん

コメントありがたうございます。
さうですね、あの入院中の樣子も凄いですね。
ヤクザが妙子さんのところに挨拶に來たといふところでは笑つてしまひました(笑)

変愚院さんはご夫婦で山登りをされてゐるのですね〜
いやあ、羨ましい限りです。
私は一度、嫁はんと嫁はんのご兩親を西穗高獨標まで連れていつたことがあります。
でもその山行で嫁はんは足を挫いてしまひ、それ以來、山には行かないと宣言してゐます。
しかたないですね〜

コメントを投稿

 ※ 
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。
下記数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。この数字を読み取っていただくことで自動化されたプログラムによる投稿でないことを確認させていただいております。
数字4桁

6 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
凍/沢木耕太郎 (うつわの器)
出版社 / 著者からの内容紹介 世界最強のクライマー・山野井夫妻を襲った「一瞬の魔」。しばしの逡巡の後、宙吊りになった妻の頭上で迫られた究極の決断とは。『檀』以来十年ぶりとなる、待望久しい最新ノンフィクション長編。 内部心理が事細かに記された沢木耕太郎氏著の.
沢木耕太郎「凍」 (休日はソファの上でリラックス!)
 世界的なクライマーである山野井泰史・妙子夫婦が挑んだギャチュンカン(7952M)北壁の登攀の様子を沢木耕太郎が描いたノンフィクションです。  私も学生時代に夏山縦走中心ですが登山の経験があり、山岳関係の知識はある方なのですが、山野井さんの名前を聞くのは
『凍』 (ムルログ)
『凍』沢木耕太郎 世の中的には沢木耕太郎10年ぶりの長編ノンフィクション、ということなんでしょうが私的には\"あの\"沢木耕太郎が山野井夫妻を題材に採り上げたということのほうがインパクトのある出来事でした。 本書の主人公である山野井泰史、妙子夫妻はクライ
最近読んだ山の本 (ペンギン夫婦の山と旅)
その1. 沢木耕太郎「凍」 著者の後書きによると、題名を決めるのに考え抜いた末、「闘」 の意味も持たせて「とう」にしたという。 実在のクライマー山野井泰史、妙子夫妻のギャチュンカン北壁 における1週間を越える苦闘の物語である。 帯にあるようにノンフィクション
読書の日々 (共通テーマ)
今日読んだ本、今日思い出した本。今日の一冊について、書いてください。
「凍」沢木耕太郎 (りゅうちゃん別館)
久しぶりに読んだ、沢木耕太郎のノンフィクション。 それが「凍」。    【送料無料】凍価格:580円(税込、送料別) 山野井夫妻は、その道では知られたクライマー。 ギャチュンカンに二人で挑戦した夫婦は凍傷や雪崩というアクシデントに見舞われる。 7千メートルで...

あわせて読む