ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

料理にワインを
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 樋口誠

「代表的な・・・」とか「典型的な・・・」ワイン

2017年09月02日 02時58分14秒 | ワインの事
ワインに限らず「代表的」とか「典型的」という言葉で表されるものがあります。

「チリではカルムネール種が他の産地にはない典型的な」

「ドイツを代表する甘口ワイン」

「オーストラリアと言えばシラーズが代表的だ」

などなど・・・・


しかし、実際のところは世代によって「代表的な」ものや「典型的な」ものは違っていたりします。

だって唄や家電、ファッションもそうですものねえ・・・

仮に「伝統的な製法」と言っても実に様々で一様ではありませんし、だいたい親の世代に反発する息子がワイナリーを引き継げば「あんな時代遅れの親のやり方は自分の代には変えるんだ」と意気込むものですし、例えば温暖化などの自然条件や道具の進化が「マイナーチェンジ」を促します。

或いはDNA鑑定によって「実はその品種はアレと違った」となって、それを聞くだけで味わいは違って感じるものです。

チリのカルムネールも1986年ヴィンテージまではメルロと思われていたわけで「カルムネール表記」のワインは無かったですし、南アフリカのピノタージュもその名が示すように以前は「ピノノワール」と「エルミタージュ」=シラーの交配と思われていたところ、実はシラーでなくサンソーが片親と知れるとイメージまで替わっている、と私などは感じています。

またバローロなども「バローロボーイズ」と言われた世代が小樽の新樽で熟成したワインを世に出し、大きな評価を得ましたが、彼らが「ボーイズ」で無くなってくると同時に回帰の道をたどったり

「ニューワールドは重く強い」と言われて久しいのですが、今ではボルドーの近々のワインの方がアルコールが高いことが多かったり・・・


ですから「典型的」とか「代表的」という言葉は「その時代の」とか「その世代の」という形容詞が付かなければ説明がつかなかったりするのです。

ソムリエ歴30年余り、飲食業でワインを触り始めて40年弱。

それ等は若い世代から見ると「長いですね」と言われますが、実は長い歴史の中では一瞬のことですし、そんな一瞬の中でも既にあちらこちらで進化や回帰、枝分かれ、などを繰り返しています。

今月のそむりえ亭のグラスワインにも、その辺りは垣間見ることができます。


どうぞ、「生き物のような」ワインの世界を楽しんでください。

面白いですよ‼‼


           樋口誠