猫が所長の総合事務所 メール相談記

行政書士もすなる日記と言ふものを猫もしてみむとてするなり(るー貫之 :法律日記)
ってパクリか?

生前贈与と持ち戻しの免除(民法903条)

2008-09-22 18:01:58 | 相続事例研究:業務日誌
被相続人から推定相続人に対して行われた生前贈与。
然る後に相続が発生しますと、他の相続人との間での
遺産分割時に特別受益の持ち戻しの問題が発生しかねません。
つまり生前贈与した分も含め相続発生時の残余財産と併せて
遺産分割の対象となるからです。

例えば兄弟二人のうち一人は親元を離れて東京の私立大学を卒業、
もう一人は地元の高校を卒業して就職、などというケース、
その学費・生活費の差額分まで生前贈与(特別受益)と看做されて、
将来の遺産相続時に持ち戻し計算の対象とされてしまうこともあるのです。

勿論他の相続人が被相続人の意思を、あるいは受贈者の状況を
好意で酌んでくれて持ち戻しを争わない場合は、それも任意ですので
メデタシメデタシです。


事業承継プランを策定する場合、この問題が大きく障害となる
ケースがあります。現社長が自身の何人かの子の内、一人を後継者と
定めて生前から権限を委譲すると共に会社株式の贈与などを行ったが、
いざ当の先代社長に相続が発生した際には、他の財産との評価額との
兼ね合いで、生前贈与した株式までが持ち戻し、再度遺産分割の
対象となって分散してしまうならば、後継社長は安定経営が出来ません。


そこで「持ち戻し免除の意思表示」があればこうした事態を免れます。
先代が遺言書により「会社の株については持ち戻しを免除する」
という一言を加えて意思表示するのです。
遺留分を超えない範囲までに効果は限定されますが 民法903条3項)


さて実はこの持ち戻し免除の意思表示を明確に行われなかった場合が
問題となるわけですが、被相続人が「黙示の持ち戻し免除の意思」
を示していたかどうかが争われる場合があります。
そこでは贈与の対象や価額、贈与に至る具体的理由、被相続人と贈与を受ける
相続人との間の具体的生活実態や社会的地位、収入、資産の具体的内容等から、
持戻しを免除して受贈者たる相続人にそれだけの利益を確保するだけの
合理的理由があるか否かを他の共同相続人との実質的衡平の観点から慎重に判断
するという事になりますが、判例上も認められたケースが複数あります。

このような問題が現実に起こってしまわれたケースでは、こうした検討も
価値があることです。


(最近のメール相談への回答から)



遺産分割・遺言など相続手続き全般は相続法務センター










山形県の不動産は川村エステート
法人設立・各種営業許可・助成金・会計・物件調査など起業を総合的に支援する起業法務センター
医療介護コンサルティングの有限会社エステート
悪徳商法の解約相談はクーリングオフセンター

最新の画像もっと見る