【青の祓魔師】『ジャンプスクエア』編集者が証言!大ヒット漫画の舞台裏

2015-10-13 13:26:01 | 日記


(ウレぴあ総研)


 


いま最もブレイクしているマンガの現場では何が起きているんだろう?


連載開始からわずか3年で初版部数が約7倍に跳ね上がり、単行本のシリーズ累計部数1000万部(1巻~10巻)を達成。アニメ化、小説化、ゲーム化、舞台化、劇場版アニメ化と多彩に展開し、いま最も躍進しているマンガ 『青の祓魔師(エクソシスト)』。この作品を担当している、『ジャンプSQ.(ジャンプスクエア)』編集者の林士平さんに、その急激なヒットの経緯と変化を伺った。


林士平(りん?しへい)さんは集英社入社7年目の中堅社員。彼が、のちに『青の祓魔師』を描く漫画家?加藤和恵さんと出会ったのは、入社して2年目のこと。月刊誌『ジャンプSQ.』(-07年創刊)の立ち上げのころだった。
「入社して1年で、月刊『ジャンプSQ.』立ち上げメンバーの一員になったんです。立ち上げメンバーは6人。僕は一番の下っ端の編集者でした。その創刊間際のころに加藤和恵先生とお会いしました」


漫画家が編集者と出会うきっかけは百人百通りだ。編集者側から人気漫画家へ電話やメールで連絡をすることもあれば、漫画家が集う飲み会で知り合うことも。加藤和恵先生と林さんの出会いは、漫画家が編集部にアプローチする「持ち込み」だった。


「『ジャンプSQ.』の副編集長(当時)の嶋(智之)が、加藤先生からの持ち込み依頼の電話を取りまして。「『原作』の持ち込みっていっているけれど……」と微妙な顔をしていたのをよく覚えています。まっさらな新人は完成原稿をたいてい持ち込むものなんですよ。「原作」というのは、まだ作品を書き上げていない方なので、どんな実力かすぐにわからない。でも調べてみたら、加藤先生はすでにほかの出版社からデビューされていたんですね。新人編集者の僕にとって、連載作品を描ける力を持った作家と知り合えるのはうれしいことなので、すぐにお会いしました。実際にお会いしたら、やたら絵の上手い作家だなあと思ったことをよく覚えています」


そのとき加藤先生が『ジャンプSQ.』に持ち込んだ原作が、いまの『青の祓魔師』の原型。林さんと加藤先生はその作品を一年がかりで練り上げ、まずは読み切り作品として仕上げることになった。


「半年以上の打ち合わせを重ねました。読み切り作品の掲載時期がタイトなスケジュールだったので、とても時間に追われていた記憶があります。締め切りが迫ってくると、加藤さんは編集部に泊まり込んでいましたね。うちの編集部では作家が泊まり込みで作業をすることを禁止しているので、総務の人にずいぶん怒られました。新人の漫画家の加藤先生が編集部でひたすら必死になって作業をしていたので、副編集長も妙に優しくて、出前でウナギをとっていっしょに夕飯を食べたりして(笑)。」


出来上がった読み切り作品は「深山鶯邸事件」として2008年8月発売『ジャンプSQ..』9月号に掲載された。当時の『ジャンプSQ.』の編集部はどんな様子だったのだろうか?


「新しい作品をどんどん始めていかないと雑誌は衰えていく。そういう思想が『ジャンプSQ.』に最初からスニーカー 通販って。いまだにその考え方は変わっていません。すぐ隣の『週刊少年ジャンプ』は20人以上とすごく大きい編集部なのですが、『ジャンプSQ.』は8人(2012年現在)と規模が小さい編集部なんです。新人作家さんに限らず、幅広い作家さんをどんどん起用していく、フットワークの軽さがメリットだと思います」


読み切り作品「深山鶯邸事件」を経て、『青の祓魔師』は『ジャンプSQ.』’09年5月号から連載を開始した。『青の祓魔師』は魔神(サタン)の子でありながら、悪魔を祓う、祓魔師(エクソシスト)を目指す双子の物語。加藤先生の美しいビジュアルと、少年漫画的な熱いドラマが繰り広げられている。


「加藤先生は非常に才能がある方で、キャラクター全員が加藤先生にしか描けないオリジナルなものなんです。主人公の奥村燐くんにも雪男くんにも、加藤さん自身のエッセンスが入っている。」


アニメ化の打診があったのはわずか連載を開始して1年後。単行本の第4巻発売直後のことだった。


「早すぎると思いましたね。アニメにしたら、すぐに原作のストックがなくなってしまうんじゃないか、と。でも、アニメのスタッフはすごくやる気でしたし、2010年12月に開催した「ジャンプフェスタ2011」でキャスト陣を発表したときに、会場のお客さんが縦に揺れてくれたんです。縦に揺れる程楽しみにしてくれるって嬉しいなーって。アニメをすると、こうやってファンに受け止めてもらえるんだと。そのときはじめて実感がわきましたね。初めて立ち上げからアニメに携わらせて頂いて、手探りながら、脚本会議に出席して、一生懸命意見をいっていました。原作を守る立場というよりも、とにかくアニメがおもしろくなれば、きっと原作の読者も増えてくれると思っていたんです。」


TVアニメは2011年4月17日から10月2日にかけて、全国ネットで日曜日の午後5時に放送(全25話)。その反響はとてつもなく大きかった。


「反響は想定以上でした。アニメがオンエアされて1ヵ月くらい経って、単行本が売り切れちゃったんですよ。手に入らない!って声が嬉しいやら、どんどん売りたい!って思いで、歯がゆいやら。アニメ化以後に出した新刊も初版は7倍以上も刷ることができました。とてもありがたい反響でした」


文字通りの大ブレイク。TVシリーズの最終回には劇場版アニメ化も発表され、『青の祓魔師』は押しも押されもせぬ人気作品となった。その結果は、作り手である加藤先生と林さんに大きな転機を与えることになる。


「既刊の単行本が100万部を達成したときに、加藤先生に言われてハッとした言葉があるんです。『この作品はまだ100万部売れる作品とは、私は思わない。アニメのおかげで売れているのであって、もっとおもしろくしないといけない』と加藤先生はおっしゃっていて。大成功していても、作品のことをしっかり冷静に考えていて、もっと面白く、もっと良い漫画にしようとしている姿勢を見て、カッコイイ、プロだ、と改めて思いました。」


 現在はマンガの制作体制も進化。定期的にストーリー会議を行い、作品全体のストーリーを深く練り込むことになった。


「もっともっとストーリーを練り込もうと。去年から、プロット合宿をやろうと。一泊で最初に熱海へいきましたね。いまでは3ヵ月に一度ぐらい会議室を借りて、朝から晩までみっちりとプロットの打ち合わせをしています」


いよいよ年末には劇場版アニメが公開される。TVシリーズのその後を描く、オリジナルストーリー。新キャラクターも登場し、『青の祓魔師』はより大きく広がっていくことになりそうだ。


「映像が段違いに美しくなっています。炎の表現に新しいアプローチがされていて、より加藤先生の絵に近づいているんじゃないかと。アニメはすごく長い時間をかけて準備をするので、美術設定や資料を丁寧に描いてくれて、たくさんつくり込んでくださる。そういう部分はマンガとは違うな、お金かかっているな、と思いますね。アニメの美術設定は、加藤先生が漫画を描くときに参考にされているようです」


アニメ化、劇場版アニメ化を経て、原作である漫画版も進化していく。漫画『青の祓魔師』もさらなる展開が待っていそうだ。ヒットしたことで、変わったことはあったのだろうか?


「打ち切り(雑誌側の都合による連載終了)が当面はなくなったので、中途半端に物語が終わることがなくなったことが、一番うれしいことです。
 漫画って長く続けば続けるほど読者が脱落していくものじゃないですか。でも『青の祓魔師』はこれからが面白いんですよ。ここで読まなくなったらもったいない。ぜひ、ぜひ今後を楽しんでほしいですね。あまり持ち上げすぎると、加藤先生に怒られそうですけど……」


物語の結末は少しずつ見えているという。だが、奥村燐、奥村雪男、杜山しえみ、神木出雲たちはまだまだ活躍しそう。このあとの展開がより楽しみな作品なのである。


『青の祓魔師』劇場版は2012年12月28日(金)より全国ロードショー
公式サイト : http://www.ao-ex.com/


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