第1回 自社の地震環境 ―東日本大震災の教訓を活かし、次につなげる地震対策

2017-06-16 07:46:50 | 日記





東日本大震災の教訓を活かし、次につなげる地震対策
第1回 自社の地震環境

小林俊介 こばやししゅんすけ
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社
ビジネスリスク事業部 事業継続グループ
主任研究員

昨年3月に発生した東日本大震災からはや11カ月が経過しました。死者?行方不明者は合計で2万人余りに上り、被災地の生活事情もまだ復旧にはほど遠く、地域と生活の再建支援や今後の防災対策の面でもなお課題は山積しています。そして、震災以降も規模の違いはあれど、全国で地震のニュースが相次ぎ、大都市を襲う大型地震のリスクもさらに高まっているように聞かれています。今後企業として、また企業で働くビジネスパーソンの備えとして、震災の教訓を今後の対策にどう生かしていくべきか。今回から4回にわたって解説していただきます(編集部)

2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)から、あとひと月で1年を迎える。事業停止等の影響を受けた企業では、この期間において、事業の代替や復旧への対応に当たられ、震災対応で得られた教訓を基に新たな災害対策に着手されているものと推察される。

本連載では、企業の事業継続(Business Continuity)の実効性を高めるため、地震対策について考察したい。具体的には、今後想定される大規模地震を対象として、自社が被る「被害想定」、そして地震対策のハード面とソフト面について解説する。

1 被害想定とは

被害想定とは、自社において事故や災害が発生した場合に、事業に対する影響や、自社の事業を構成する経営リソース(人員、設備、什器、情報システム等)がどの程度毀損するか、どの程度業務に影響を与えるかを分析することである。企業として想定すべき災害には、自社における火災?爆発、自然災害(風水災、地震)などが挙げられる。

その中でも地震災害は、自社の資産である建物や設備などハードウェアの地震動による物理的な損傷、それらに付随する火災の発生、社外ではライフラインの停止などを引き起こす可能性がある。今後地震対策を検討するに当たり、災害による被害の内容すべて予知することは不可能であるが、一定の想定を検討しておくことが肝要である。特に、被害想定の留意点として、地震であれば震源、地震の規模、被災するエリア、設備が受ける被害などそれぞれの要素に不確定な部分があることを勘案して、最悪の場合も検討しておくことが重要である。

2 地震環境について

被害想定を実施するに当たり、まずは自社の立地に自然災害の危険度がどの程度あるかを把握する必要がある。自社における地震災害の環境を調べるに当たっては、政府の地震調査研究推進本部(以下、「推本」と略)が公表している各種のデータを活用することを推奨する。

推本は、1995年1月に発生した阪神?淡路大震災の被害により、地震に関する調査研究の成果が国民や防災を担当する機関に十分に伝達?活用される体制になっていなかったという課題意識の下に、行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし、これを政府として一元的に推進するため、同年7月、地震防災対策特別措置法に基づいて総理府に設置(現在は文部科学省に設置)された政府の特別の機関である。

[注]地震調査研究推進本部ホームページ:「設立の経緯」より一部抜粋 http://www.jishin.go.jp/main/p_shokai01.htm#1

推本では、地震発生の長期的な確率評価と強震動の評価を組み合わせた「確率論的地震動予測地図」と、特定の地震に対して、ある想定されたシナリオに対する強震動評価に基づく「震源断層を特定した地震動予測地図」の2種類の性質の異なる地図から構成される「全国地震予測図」を公表している。

[注]地震ハザードステーションホームページ:「全国地震動予測地図とは」より一部抜粋 http://www.j-shis.bosai.go.jp/shm

「確率論的地震動予測地図」には、さまざまな種類のものがあるが、代表的には、“今後30年以内に各地点が震度6弱以上の揺れに見舞われる確率”の分布を地図に表したものがある[図表1]。

資料出所:地震調査研究推進本部ホームページ:地震動予測図
http://www.jishin.go.jp/main/p_hyoka04.htm

[図表1]が示すように、日本海溝や相模トラフ、駿河トラフおよび南海トラフなど、海溝型地震の発生が想定される太平洋側において発生確率が高い分布となっている。また、糸魚川―静岡構造線による直下型地震が想定される長野県周辺、上町断層による直下型地震が想定される大阪府周辺においても発生確率が高いことにも注意が必要である。このように、自社の立地がどの程度の地震発生確率の環境下にあるかを把握することが肝要である。

3 地震と他の災害の発生確率に関する比較

一方で、[図表1]の確率分布図を俯瞰すると、今後30年以内に震度6強の地震動に見舞われる確率が、6%未満あるいは3%未満のエリアでは、地震への危険性が低いようにも見られる。ここで、今後30年以内に何%という値が、1年間に発生する確率で見たときに災害や事故?犯罪にあう確率と比較して、どの程度に位置するかを比較する[図表2]。

資料出所:「地震調査研究推進本部政策委員会成果を社会に活かす部会報告」(平成17年3月)より抜粋

[図表2]から、交通事故で死亡する30 年確率は約0.2%、火事で罹災する30年確率は約2%、火事で死傷する確率は約0.2%であることが分かる。地震という自然事象の発生確率そのものと、事象発生による結果として死傷する確率は直接的に比較できないが、今後30 年以内に震度6弱以上の地震動に見舞われる確率が3%という数値は、他の事故や災害等発生確率と相対的に比較しても低いとは言えないと考えられる。また、地震はその発生確率が低くとも、ひとたび発生すれば、人的?物的被害が甚大なものとなる可能性がある。従って、地震の発生確率だけではなく、地震が発生した場合の被害の大きさを合わせて検討しておくことが肝要である。

4 その他の自然災害の環境について

企業の防災対策として、地震以外の災害では、水害などへの警戒が必要であると言える。

国土交通省では、全国の自治体が公表している自然災害のハザードマップが閲覧できる“ハザードマップポータルサイト”(http://disapotal.gsi.go.jp)を開設している。このポータルサイトでは、全国の自治体のうち、インターネット上で、洪水、内水、高潮、津波、土砂災害、火山のハザードマップを公表している市町村を確認することができる。

このうち、津波ハザードマップについては、東日本大震災での被害状況を鑑みて、想定の見直しに着手している自治体が多い。企業としては、まず、現在のハザードマップの内容を確認し、津波へのリスク環境を把握しておくと共に、ハザードマップが改訂された際の情報を収集する体制が必要と言える。津波ハザードマップが最新の情報に更新されるまでは、どのエリアまで浸水するかを想定することは困難であるため、まずは、自社の標高値を把握し、浸水の危険性がどの程度あるかを把握することが必要である。

[図表3]は、国土交通省ハザードマップポータルサイトでの「精密基盤標高地図」による、東京湾周辺の標高地を表している。青色が濃いほど標高値は低くなるが、青色の地域がすべて浸水することを表しているものではなく、どのエリアにおいて危険度が高いかの目安としていただきたい。標高値の低いエリアでは、比較的に標高値の高いエリアへの避難、あるは避難場所として安全な建物(10m以上)の選定が必要であろう。

[注]国土交通省ハザードマップポータルサイト:精密基盤標高地図 http://disapotal.gsi.go.jp/seimitu/index.html

小林俊介 (こばやししゅんすけ) Profile
東京海上日動リスクコンサルティング(株)
ビジネスリスク事業部 事業継続グループ
主任研究員
1976年生まれ。1998年自動車部品メーカーに入社。生産技術部門において生産設備企画?工程設計業務に従事。2006年東京海上日動リスクコンサルティング(株)入社、現職。自動車、自動車部品、電機、機械、製薬、食品、印刷業、小売業などにおいて自然災害および新型インフルエンザを対象とした事業継続マネジメント(BCM)構築コンサルティングを担当。2008年東京農工大学大学院技術経営研究科修了、技術経営修士(専門職)。





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