新連載【金子浩久のEクルマ、Aクルマ】BMW『i3』『i8』の発表会で記者からの質問が途切れなかった理由

2015-12-08 17:35:13 | 日記




(@DIME)



 こんな記者発表会とワークショップは初めてだった。エンジニアを取り囲んだ記者たちの質問が延々と続き、主催者が再三にわたって終了時刻の到来を告げていたほどだ。先日、六本木に新設されたEXシアターで行われたBMW『i3』&『i8』の発表会でのこと。『i3』は電気自動車、『i8』はプラグインハイブリッドカー。ともにBMWがこれから新しく展開していく“i”ブランドのクルマだ。『i3』の価格は499万円と546万円(レンジエクステンダー付き)。

 

 質問が続いたのは、『i3』や『i8』などのクルマそのものの新しさに加えて、その製造過程などにも革新的な取り組みがなされていて、記者たちの想像を大きく超えていたからだろう。すべてが新しい。2台には“新しさ”がたくさん詰まり過ぎている。

 僕は、どちらも9月のフランクフルトモーターショーで実物には触れていたけれども、特に『i3』にオプショナルで装着できる「レンジエクステンダー」がクルマのどの位置にどのように搭載されて、どう作動するのかを知りたかった。

 発表会は、ステージ上のアラン?ハリス社長の挨拶とマルティン?アールト事業部長による全体的な説明から始まった。その後、参加者は3つのグループに分けられ、部品やカットモデル、説明パネルなどが展示されているスペースに移動し、それらを手に取りながらエンジニアによるワークショップでより詳しい解説が行なわれた。

 ワークショップは「i8のエクステリアデザイン」「i3のライフモジュールとその製造工程」「i3のインテリアデザイン」の3つ。『i8』は、0~100km/h加速4.5秒、最高速度250km/hの高性能4人乗りスポーツカーで、価格は1917万円。BMWの「6」シリーズのようなロングノーズ?ショートデッキ型の流麗なk古典的フォルムを持っているが、空力を徹底追及したカタチだということがよくわかる。

 フロントバンパー左右には大胆な形状のエアインテイクが口を開け、後輪とそのフェンダー、Cピラーを結合している造形が過激で何にも似ていない。リアフェンダーがサイドパネルから分離されているように見えるが、その隙間に気流を流している。とレブロン13Beats イヤホン ソロ時に、テールゲイトの左右端も普通のクルマのようにリアフェンダーと面一では結合されておらず、複雑な形状のエアスポイラーとしてリアフェンダーとはホンの少しの間隔を保ったまま、テールライトの内側の端まで絞り込まれている。言葉で説明するよりも実車を見てもらえば一目瞭然なのだが、とにかく公道を走るクルマでこんな複雑な形状は今まで見たことがない。

■「i」ブランドの主要なテーマ“サステナビリティ”

 このような形状にいたった理由とカーボンファイバーやアルミニウム合金などを用いたボディ構造について、エンジニアが時間が限られているので早口で解説した。2つ目のワークショップは『i3』の軽量化について。『i3』は2つのモジュールからボディが構成されていて、ひとつはカーボンファイバー製でもうひとつはアルミニウム製。エンジニアは「他社の電気自動車よりも250kg軽い」と言及していたのは日産リーフのことだろう。ひと口にカーボンファイバーと言っても炭素繊維の織り方から成形の方法まで様々な違いがあって千差万別だ。『i3』のものも独特で、その違いを製造工場まで遡って説明していた。

 僕が知りたかったレンジエクステンダーについても説明があり、疑問は解消した。「レンジエクステンダー」とは650ccの2気筒エンジンのことで、発電専用に使われ航続距離を200kmから300kmまで伸ばすことができる。しかし、さらなる疑問も生じてきたが、質問が殺到していて時間切れだった。

 3番目は『i3』のインテリアについて。今年9月に行なわれたフランクフルトモーターショーで、場内のシャトルに提供されていた『i3』の後席に乗ったことがあるが、『i3』のインテリアは超モダンで魅力的だ。もともとBMW各車のインテリアデザインはモダンだったが、『i3』の新しさはその先を行っている。

 エンジンと違って、回転の瞬間から最大トルクが立ち上がるという電気モーターの特性を考えれば当然のように、『i3』のメーターパネルには円の中を針が同心円上を上下する“メーター”は存在しない。『iPad mini』ぐらいのモニターパネルがハンドルの向こう側に立っているだけだ。きっと膨大な量の情報を階層構造に整理してここに表示することができるのだろう。

 既存の電気自動車やプラグインハイブリッドなどはエンジン時代のデザインの発想を断ち切れずにメーターを捨てられないでいるから一気に古臭く見えてしまう。超モダンで近未来的だけれども、その一方で自然への回帰も指向している。ダッシュボードに使われているユーカリ材はオプショナル装備だが、天然のユーカリ材を薄く切って貼り付けられている。1台には3枚が使われ、必ず1本の木から取られているから木目がつながっている。そんな手の込んだことはベントレーでしかやっていない。おまけに、使用されるユーカリの木は1本切ったら1本植えられるというから、自然保護も十分に考慮されている。

 サステナビリティ(持続可能性)の追求も「i」ブランドでの主要なテーマとして据えられていて、38本のペットボトルがリサイクルされてシート表皮に用いられている。カタカナで“エコ”と書くと節約や倹約、あるいはミジめというイメージしか沸いてこないが、BMWが『i3』と『i8』で目指していることは正反対で、豊かで明るい理想主義的な未来を予感させられてしまう。使用済みのトラックの幌をリサイクルして作られるFREITAGのバッグの世界的ヒットと同じことだ。

 他にもたくさん、『i3』と『i8』には“新しさ”が溢れていた。電気自動車やプラグインハイブリッドカー自体はもはや特別に新しい存在ではない。電気自動車だから新しいのではなくて、商品として今までにない魅力に溢れているから新しいのだ。いまの日本車が及んでいないところだ。機械としては優秀だけれども、残念ながら商品としての魅力に乏しいクルマが少なくない。

 魅力とは、これを買ったら自分の暮らしやクルマの乗り方はどう変わるのだろうかと心にさざ波を起こしてくれる力のことだ。そう思わせるだけの力が『i3』と『i8』にはみなぎっている。それを感じたので、僕も記者たちからも質問が次から次へと繰り出されたのだろう。

 2014年クルマ界最大の目玉が『i3』と『i8』となることは間違いない。

文/金子浩久(かねこ?ひろひさ) 

モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。






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