なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

拘留中の受診

2016年03月25日 | Weblog

 警察署から連絡が来て、拘留中の60歳代半ばの男性を受診させたいという。外来で診ている循環器科医は外来日で忙しいので、他の先生にという。内科の責任者なので、こちらに回ってきた。

 外来の通路に臨時のパーティションが置かれ、時間外受付から警察官3名に付き添われての受診だった。手錠がかけてあり、長いヒモ(中にワイヤーが入っているそうだ)付きだった。何をしたのかと訊くと、酒に酔って奥さんの顔を殴ったという。お岩さんのような顔になっていること、これまでも家庭内暴力はあったが、今回はひどいので拘留されたと説明された。

 この方はふだん高血圧症・糖尿病・脂質異常症で通院していて、2か月前に脳梗塞(視床)になった既往がある。何で行っていたかわからないがN県の有名な脳疾患センターで診てもらったそうだ。で、今日の症状はと訊くと、拘留された昨夜からめまい(浮遊感)と動悸がするのだという。歩行は普通にできた。診察上は、今も動悸がするというが、不整脈もなく頻脈もなく正常な心拍だった。

 既往が既往なのと、MRIが昼前で空いていたこともあり、頭部MRI検査を行った。特に新規の病変はなく、異常なしだった。警察官も、そうでしょうという。今時は症状を訴えられれば、受診させる義務があるのだろう。

 拘留中は普段の処方薬を自宅から持って来れないそうだ(外からの持ち込みという扱いになるから)。改めて普段の処方を出してくださいといわれたので、循環器科処方を言われただけの日数(予想される今後の手続きが終わるまで)処方した。めまい・動悸を訴えた時に頓用で使用できるように安定薬(リーゼ)も少し追加しておいた。初めて捕まれば、ドキドキもするだろう。

 受診にかかった病院の費用は警察の持ち出しになるそうだ。保険が使えないので、けっこうな金額になる。MRIはやり過ぎだったかもしれないが、こちらも責任があるから検査せざるを得ない。貴重な体験ではあった。外来の看護師さんの話では、外来受診時にちょっとでも気に入らないと大声を上げるので有名な方だそうだ。

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