without a trace

ヤマザキ、フリーターを撃て!

ドッグヴィル

2006-01-09 04:26:07 | 映画
 映画「ドッグヴィル」

 監督:ラース・フォン・トリアー。ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー
 
 ニコール・キッドマンて映画選び上手いと思う。いじめられ顔だからこんなのばっかりなんだよね。ギャング親分がジェームズ・カーン(ゴッドファーザーのバカ長男役)、「プライベート・ライアン」のアパム弾持ってこーいで有名なアパム役のジェレイミー・デイヴィス。見るしかないだろっていう豪華キャスト。

 ギャングに追われて逃げてきた美しい女。人口が10数人しかいないドッグヴィルで匿ってもらう。匿ってもらう条件として村人全員から好かれるという契約を結んでいくという話。なんと村の外観が存在してない。白線で家や道路の名前が書いてあるだけ。だから家の中のシーンでも外で村人が何をしているかがわかってしまう。何でもお見通しの神の視点かなと思ったんだけど、どうやら違う。3時間もあって長丁場だけど飽きなかった。

 白人、女、美しい、若いという状況だからこそ町で受け入れてもらえる要素がある。町には牧師もいない。この設定だけでどうせ皆に玩具にされて、風紀を乱したとかなんとかで殺されて、最後にはお祈りしながら「我らを守ってください」みたいになるんだろなんて思った。しかしそうはならない。

 楢山節考かなんかで男の家を毎夜一軒ずつ回っていく女性がいた。彼女がなぜそういう役割を村で負わされてるのかはわからない。夫をなくしたからなのか、そういう役割を持った一家なのかとか。それは残酷な光景なんだけど村の掟としては上手くいってるんだ。それで頭の弱い男が何でおらの家には来ないだ?なんて言ってる。この映画はそういう光景を思い出させる。

 田舎だろうが都会だろうが、現代だろうが昔だろうが人間が変わるわけない。そこには多面性を持った人間が暮らしてる。欲望を縛ってるのが共同体の法律や倫理としての宗教という規範であって、それが壊れることがある。それを守ろうというかおれ様が法律だの西部劇とはちょっと違う。ヒーローも悪役もいなくて誰もが持つ弱さからか自滅していく人々。誰もがおれ様が法律だとの強さは持ってない。だから村人は銃も持ち出さない。銃(=男根)を彼女に撃ち続けた代償は誰が払う?彼女は代償を払ったのだ。そしてファザコン社会アメリカでの父親という絶対的権力者の不在だ。

 10才くらいのバカチンガキに勉強を教えてると自分のケツを叩いてくれという。殴らないと母ちゃんに叩かれたと言いつけるぞと脅してくる。そして叩かれて満足するという変態ガキだ。彼はこの映画に出てくる男たちの男になる前の段階であって、自分自身の違った顔を知りつつあるんだ。彼は規範が欲しいんだ。と同時にこの光景はSM。何かを得るには何かを与えるという人間同士の行為の象徴。この子がどうなるかってのがまた面白い。アメリカ三部作の一作目らしいんでこれからが楽しみ。
 トリアー鑑賞6本目。★★★


コメントを投稿