古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

マネー・ボール

2017-10-07 | 読書

「マネー・ボール」という本を市立図書館で検索したら、熱田図書館にあった。早速取り寄せてもらいました。20年ほど前に出て評判になった本ですが、その折機を逸して読めなかったことを思いだし読んでみようと思ったのです。

 どんな内容か、丸谷才一さんの後書きから。引用します。

 

 1980年春、カリフォルニア州サンヂエゴ。メジャーリーグの数球団が合同入団テストをしていた。よりすぐりの少年のうち断然光るのがビリー・ビーン。攻走守にすぐれていて勉強もできる。メッツのスカウトが特上レベルとして評価し、獲得した。

 しかし、ビリーは野球選手としては失敗した。精神面で図太くなく、うち損ねると感情をむき出しにして暴れた。3Aとメジャーを行ったり来たりしてし、球団を渡り歩き、最後はアスレチックス。90年春、彼はもう見込みがないと自分で判断し、アドバンス・スカウト(次に対戦する相手の戦力を探る事務職員)を希望し球団に受け入れられた。

 93年アルダーソンというGMに認められフロント入りした。アンダーソンは名門大学卒の教養のある弁護士で、球界の常識と対立する野球理論でアスレチックスを運営しようとしていた。彼の理論はビリーにとって衝撃的だった。97年、ビリーはアスレチックスのGMに就任した。この本は、2002年のアスレチックスを扱う。

 この年、アスレチックスの選手平均年棒は146万ドル(30球団中21位)で、ヤンキースの約3分の1、そして成績は103勝59敗でプレーオフ進出。ヤンキースとほぼ同等だった。最小の出費による最高の成果で、このことは2000年からの4年間について等しく言える。ひとえにビリーの革命的思考があってのことだ。メジャーリーガーとしての失敗者は、球団経営者として輝かしい成功を収めた。「マネー・ボール」は新しいアメリカ野球のサクセス・ストーリーである。

 前景として迫るのは、ビリーの強烈な個性。彼はほかのGMとは比較にならないほどロッカールームをうろつく。試合が行われている最中、何キロかジョギンフをし、ウェイト・トレーニングをこなす。試合を生で見ることはない。興奮して野球科学をを忘れるから。ポケットの小型機器で試合経過を知る。彼は見どころののある選手を安く買って上手に使い、高く売る。したたかな商才の持ち主だ。

中景にあたるのはFA制度による選手の年棒の高騰、インターネットの時代における球界事情で、著者はそれを肖像画像として描く。たとえば捕手のハッテバーウは、出塁率が高く、打席にいる時間が長くて相手投手を疲れさせるという長所でアスレチックスに入団。ただし守備位置は一塁。彼は近所のテニスコートで、妻にゴロを打たせて、一塁守備を練習する、内野守備コーチのワッシュはこのかがとをべったり地面につけて立つ男を誉めに褒めたあげく、真夏頃には水準以上の一塁手に変えた。

しかし、最も魅力的なのは、アンサーソンの師匠筋の当るビル・ジェームスという文筆業者だ。食品工場の夜間警備員として働きながら『野球抄』という冊子を自費出版し続ける。打率と盗塁数は対して重要でないとか、犠打は無駄死にすぎないとか論じて徐々に読者を増やす、しかし球団からは無視されていたが、彼の探求はビリーという形で実を結んだ。即ちこの本が遠景として描くのは、こういう奇人を生み出すような野球を生み出すアメリカ社会の知的な側面である。

 著者のマイケル・ルイスの書いたものは頭の使い方・ものの考え方の本だった。