Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

国立大劇場『第八回 伝統歌舞伎保存会研修発表会』 自由席(特別席花道ブロック中央列)

2012年01月21日 | 歌舞伎
国立大劇場『第八回 伝統歌舞伎保存会研修発表会』 自由席(特別席花道ブロック中央列)

『ごあいさつ』
幸四郎さんのご挨拶から始まります。本花道より紋付袴姿の幸四郎さんが雪下駄を履いて傘を差し雪道を踏みしめるように登場。さすが洒落た演出です。天候の悪い中をいらしていただきありがとうございますとのご挨拶、そして幕外の舞台を歩きながら『三人吉三』の初演時の配役や背景、ちょっとしたあらすじなどを解説。また今回、勉強会ではよく掛ける『大川端の場』ではなくなぜ『本郷火の見櫓の場』を取り上げたのかという説明も。歌舞伎の様々な要素、七五調の台詞あり、所作事あり、立ち廻りあり、音楽も竹本あり清元ありの場ですし、また慣れてない場で勉強するのも緊張感があっていいでしょうしとのことでした。ちょっとしたユーモアを交えながらのご挨拶とても素敵でした。そして仮花道をまた傘を差して去っていく幸四郎さんでした。いちいち絵になる幸四郎さん。

『三人吉三巴白浪「本郷火の見櫓の場」』
町人三人が友右衛門さん、福助さん、染五郎さん、門番が錦吾さんという配役。いつも舞台中央で脇や裏方に支えてもらっている側が今回支える側に回り花を添える、その気持ちが良いですよね。サービス精神旺盛な福助さんと染五郎さんが観客を擽り、錦吾さんと友右衛門さんはお人柄同様に真面目に。

さて、そしていよいよいつもは脇で活躍する若手役者さんたちの登場です。こういう勉強会は本公演にないがむしゃらな必死さの熱があって本公演で観るのとは別な面白さを感じることが多いですが今回も緊張感と必死さとそしてやり遂げようという前向きさと、そして脇でしっかり勉強してきた成果と、そんなものが真っ直ぐに伝わってきた舞台でした。同時に「芝居」を見せる難しさをも感じさせました。舞台の難しさを十分に経験してきた役者さんだからこそ、ただの「熱」だけではないものを見せてこれたのかもとも思いました。

お嬢吉三@芝のぶさんがダントツに良かったです。凛とした美しいお嬢でした。「女」でいることに違和感を自分で感じていない、そこに色気がある真女形のお嬢です。そしてそのなかに芯の強さを感じさせとても良いお嬢吉三でした。台詞も所作も堂に入ってしっかりとした芝居。やはり大きな役を一番経験していることも大きいのでしょう。センターに立つことがどういうことかわかっての芝居でした。お嬢吉三という役に負けていませんでした。

和尚吉三@錦弥さん、かなり体が細い方ですので和尚はどうかな?と思っておりましたが声を太めにとり兄貴分の貫禄を出しておりました。押し出しはさすがにまだ無いですが極まった部分の体の線が綺麗です。

お坊吉三@錦一さん、色んな部分で拙いところが多かったかなと思いますが丁寧にしっかりと演じようとしていたのが良かったです。あの場のお坊は意外と色々とやることが多いので大変だったと思います。お嬢とのバランスとしてはよく木戸門でのやりとりに実感がありました。

九兵衛@紀世助さん、丁寧にしっかりと演じていらっしゃいました。こういうお役をきちんと演じていくことはとても大事なんですよね。

個人的には和尚とお坊の配役を逆にしたほうがよかったかなと思います。錦弥さんは二枚目ができますから。錦一さんは少し不器用ですけどわりと骨太な役のほうが似合うと思うんですよね。


『解説』
どなたが解説されるんだろうと思ってましたらすっぽんから幸四郎さんが。「また出てまいりました」と笑わせつつ『素襖落』の解説を成り立ちからさらりと。幸四郎さんはこういうのが本当に上手ですねえ(感心)。すっぽんからまた去っていくときの扇を広げ形を作って決めた姿がさりげないけどなんとも形がいい。ちょっと唸ってしまいました。なんだか格が違うって感じですね。

『素襖落』
こちらはいわゆる御曹司たちの勉強のための演目。とはいえ、主役の太郎冠者の染五郎さんが本興行で普通に上演してもいいのでは?という出来栄えで、かつ大名が友右衛門さんに姫御寮が高麗蔵さんというこういう役には鉄板なお二人が配役されているので研修会とは思えない舞台でした。本当にこれから勉強という配役は10代の役者、廣太郎くんと廣松くんの兄弟と児太郎くん。

太郎冠者@染五郎さん、本興行で上演したことなかったんでしたっけ?と思いましたら20代の時のご自身の勉強会での上演以来とのこと。花形役者のなかでは舞踊上手な一人ですしこの演目は縁のある演目ですから染五郎さんとしては本興行に繋げたいとの目標での今回の上演となったようです。とても気合の入った力強いキレのある踊りでした。キュートな雰囲気があるので太郎冠者のお茶目な様子も楽しくみせていきます。染五郎さんは情景描写の上手い踊り手ですがやはり那須与一の戦語りの部分がとても良かったです。反面、酔いの部分でのふんわり加減が少々足りない感じ。ちょっと肩に力が入りすぎているかなという感じです。ここの部分は回数を重ねて踊りに余裕が出ないとなかなか難しいでしょう。この太郎冠者はとても染五郎さんに合う演目だと思いますのでぜひ次回は本興行で拝見したいです。

三郎吾@廣松くん、小さい頃から芝居っ気がある役者さんです。今回もうまく役にハマっていました。こういう滑稽さのなかに品が必要なお役が得意だと思います。台詞、動きともにかなり良かったです。きちんと精進しているなと思いました。

鈍太郎@廣太郎くん、品よく丁寧に演じていたと思います。弟くんに比べると少し不器用かなと思う廣太郎くんですがこのお役は相当頑張ってきたなと思いました。このところ舞台に立つことも多くなり役者として自覚ができてきたかなと。お父様の大名@友右衛門さんと一緒に太郎冠者をからかう場面はさすが親子、息がピッタリで楽しい場面にしていました。

次郎冠者@児太郎くん、一生懸命にきちんと演じていました。体をしっかり使おうという意識がみえたのが良かったです。まだ声が安定していませんが以前に比べたらだいぶ進歩。少しづつ前に進んでいけばいいと思います。頑張ってほしいですね。

大名@友右衛門さん、姫御寮@高麗蔵さんは所作事の上手なお二人ですし安定感がありますし余裕があります。若手をしっかり受けて引き上げていました。
ジャンル:
芸能
キーワード
伝統歌舞伎保存会 サービス精神 三人吉三巴白浪
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