min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ドン・ウィンズロウ著『ザ・カルテル 上・下』

2017-05-18 13:05:11 | 「タ行」の作家
ドン・ウィンズロウ著『ザ・カルテル 上・下』角川文庫 2016.4.25第1刷 

おススメ度 ★★★★☆+α

メキシコにおける1975年からの30年間にわたる「麻薬との戦争」を描いた「犬の力」の続編である。
シナロア・カルテルの巨頭のひとりアダン・バレーラの逮捕、収監によってメキシコ国内の麻薬戦争はいったん小康状態になったとみられたのだが、そのアダンが脱獄し、旧来の宿敵であるDEA(米国麻薬取締局の捜査官)アート・ケラーの首に莫大な賞金をかけたのであった。
そのころアートはDEAからも身を隠し、米南部の教会の養蜂家としてひっそりと暮らしていた。
が、ある日彼の前に現れたのはDEAの幹部ティム・テイラーであった。アートは半ば強制的にAFI(メキシコの連邦捜査局)へ派遣され、再びナルコ(麻薬カルテル)と対峙することとなった。
メキシコの「麻薬との戦争」はその勢力争いにおいて以前にも増して激烈化し暴力と贈賄の度合いは目を覆うばかりになっていた。
バレーラの捜索は遅々として進まない中、カルテルの中でもオチョアとZ-40が率いる「セータ隊」の勢力が急速に伸びて来た。
彼らは圧倒的な武力をもって他カルテルを潰し、警察や軍の一部をも支配下においた。今やメキシコの陰の政府とも呼ばれた。

彼らのやり口は「金を受け取るか死か」というもので、買収が聞かない相手に対してはその家族に手を伸ばして従わせるといったもので、殺戮の残酷さはヘタなプラッター映画の数倍も酷いものであった。チェーンソーで首を切り身体をバラバラに切断する、といったシーンの連続には辟易する。
メキシコ軍部の海兵隊はもはや通常のやりかたでは彼らに勝てないという結論に達し、ついには海兵隊内部に特殊部隊(暗殺部隊)を創設し、セータ隊隊員、特に首謀者の直接抹殺に乗り出す。
その考えはアメリカの「テロとの戦い」でアルカイーダの首領ビンラーデンを特殊部隊が屠ったようなものである。
ここに至って「麻薬との戦争」は「テロとの戦争」同様、呵責の無い全面戦争へと突き進む。著者は人間の惨さ残酷さをこれでもかこれでもかと執拗に描くのであるが、奥底にどうしようもないくらいの絶望感、虚無感が漂う。そしてこのような事態を止められない政府、組織そして人々に対し深い深い怒りを感ずる。前作「犬の力」ではまだ希望の光の一端をみられたような気がしたものの、本編においては「絶望」の二文字のみだ。






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