ポイント6:温室効果-エネルギー消費-熱汚染-成長の限界

2006年09月04日 | 持続可能な社会

 環境問題に詳しい理系の方はすでにご存知だとは思いますが、文系、あるいは一般市民の中には意外にはっきり認識しておられない方も少なくないと思うので、念のためにもう1つ、「成長の限界」についてはっきりした根拠だ、と私が思っているポイントをあげておきたいと思います(詳しくは、麻布学園の山賀進氏のWeb 資料がとても参考になります。)

 地球の温度は、大まかにいえば太陽から放射されるエネルギーと、地球から放散されるエネルギーのバランスが取れたところで決まります。

 ところが、太陽から来るエネルギーで単純計算すると、地球の温度はマイナス18℃になるはずなのに、実際の温度は約33℃も高い約15℃(平均)なのだそうです。

 なぜそういうことになるかというと、地球の大気には水蒸気や二酸化炭素などが含まれていて、それらの気体には「温室効果」があるからです。

 「温室効果」というのは、太陽からの放射エネルギー(主に可視光線)は通し、地球から地球外空間に出ていこうとする放射エネルギー(赤外線)を保存して、熱を保つということです。

 そのために、地表から大気圏にかけて熱が保存され、単純計算のマイナス18℃よりもはるかに温かい、たくさんの生命が生きることのできるような温度になっているわけです。

 そういう意味では、水蒸気や二酸化炭素の「温室効果」はとても有難いものだったのです。



温室効果の模式図:東京大学気候システムセンター(http://www.ccsr.u-tokyo.ac.jp/jondanka/jwarming1.shtml#part1)の記事より


 ところが、人間が経済活動や日常生活のためにエネルギーを消費すると、それは最終的には熱になって大気圏に排出されます。それを「廃熱」といいます。

 廃熱が環境に悪影響を及ぼすことを「熱汚染」と呼びます。

 そして、熱汚染が限度を越すと、太陽からの放射と地球からの放散のバランスが崩れ、地表の温度は「熱暴走」と呼ばれるような急上昇を始めます。

 そうなると、海水はぜんぶ蒸発してしまい、石灰岩もすべて分解されるという状態になってからやっと、もう一度バランスが取れるのだそうですが、その時には気圧が300~320気圧、温度も200℃という、生物が生きていくことのできない状態になっているだろうといわれます。

 人類が、たとえ核融合や水素エネルギーといった、その他の点では「クリーン」で無限に使える夢のエネルギーを開発したとしても、それらは使われた結果として必ず「廃熱」になり、環境を「熱汚染」していき、熱汚染があるレベルを超えてしまうと、地球は「熱暴走」の状態になり、生態系は全滅するということになるでしょう。

 シンプルに譬えると、温室の中で必要以上にいつまでも火を焚き続けると、中の空気が熱くなりすぎ、花や野菜が茹でられて萎れ、やがて枯れてしまうようなものです。

 だから、そういうはっきりとした根拠があって、エネルギーの消費を増大させ続けるような無限の成長は原理的に不可能だ、と私は考えているのです。


 そういう意味での「成長の限界」は、大自然の犯すことのできない、犯したものは必ず厳しく罰せられる掟なのだ、といってほぼまちがいないでしょう。

 (とはいっても、これはあくまでも「科学」的根拠であり、科学の語ることは常に反論しうる仮説ですから、反論はありうるでしょう。私は、反論を検討した結果、仮説がまちがっていると思ったら、いつでも訂正するつもりがあります。)

 そういうわけで、私は、個人的な敵意や憎しみはまったくないにもかかわらず――というより、だからこそ――あえて現在の日本の政治の路線を批判せざるをえないのです。1) 2)

 とはいえ――この後で、かなり長くお話しすることになりますが――コスモスは自己組織化・自己複雑化という意味では成長し続けるものですから、それに沿いながら人類の生活も成長するというタイプの「自然成長型文明」というのは構想しうる、と私は考えています。

 ぜひ、続けてお読みいただき、ご意見をいただけると幸いです。




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