死の怖れとコスモロジー教育

2017年10月28日 | コスモロジー

 数日前の毎日新聞の人生相談の欄に以下のような問いと答えがありました。

 近代人に特徴的な「死の怖れ」(仏教用語で言えば「死苦」)というテーマです。





 読みづらいので、以下、文字を起こしておきます。

 毎日新聞2017年10月24日「人生相談」欄(回答者渡辺えり、劇作家・女優)

 死ぬのが怖くて仕方ない

 「死ぬのが怖い」のはおかしいことでしょうか。小さい頃から「死」というものへの恐怖心が強く、今も毎日闘っています。怖いとわめいて母にあやしてもらった子どもの頃と違い、もういい年ですが、ふとした瞬間、恐怖と絶望、残り時間のはかなさを考えると全身から力が抜け、いてもたってもいられなくなります。人生に必ず付きまとう「死」というものとどのように闘っていけばよいのでしょうか。(23歳・女性)

 実は私も死ぬのが怖くて仕方がありませんでした。幼い頃から母を「どうせ死ぬのになぜ産んだのか?」と毎日問い詰めていました。死ぬことの苦しみを思うとそれなら生まれてこなかった方がよかったと思ったのです。
 宇宙の歴史を思えば氷の粒よりも小さな一瞬の命が生き物の生と言えるでしょう。しかし、怖い。自分がいなくなる。何も感じず、記憶も無くなり、無に帰ることが本当に怖くつらい。しかし、この苦しみはまさに死ぬまで続くのです。
 92歳になる父に「死ぬのがもう怖くないでしょう?」といちるの希望を持ちながら尋ねましたが「怖い。若い頃と少しも変わらずに怖い」と答えました。私は絶望しました。人間、年を取れば、「死」に近づけば「死」が怖くなくなるように脳が変化していくものだと思っていたからです。しかし、いくつになっても死が怖いことが父の話で分かってしまいました。
 集中して舞台に出演したり、歌ったり、絵を描いたり、撮影したりしている時だけ死を忘れています。すべての芸術は限りある命を永遠にとどめようとする人の心の具現化だと思います。死の恐怖を昇華したものが芸術やスポーツ、そして、あらゆる仕事なのかもしれません。死が怖いから人は目的を持って働けるのでしょう。そして、すべての者たちが天寿まで生きられるように戦争に反対し続けます。


 この問いと答えは、戦後教育を真に受けたら当然こうなるというものなので、回答者個人にクレームをつけるつもりはまったくありませんが、あまりにも典型的に近代的であり、現代科学をベースにしたコスモロジー教育=コスモロジー・セラピーの視点からは別の、もっと元気になれる答えがある、と筆者は考えていますので、「コメントをしておくといいな」と思いながら、他の用事に取り紛れて遅くなりました。

 近代の初期の哲学者パスカルはこう言っています。

 「気ばらし――人間は、死も惨めさも無知も癒すことができなかったので、幸福になるために、こういうことは考えずにいようと思いついたのだった。」(『パンセ』断章168)

 「……この弱く、死すべき人間の条件のことは、わたしたちが、そのことをつきつめて考えてみると、もう何ものによってもなぐさめられないほどに惨めであわれなものである。……だから、人間にとってただ一つの幸福は自分の条件を考えることから、気をそらすということにつきるのだ。何かに熱中してそんなことを考えずにすますか、目あたらしい・快い情念の中にいつもおぼれているか、賭けごとをしたり、猟をしたり、おもしろい芝居でもみたり、要するに、いわゆる「気ばらし」をして、気をまぎらすことにつきるのだ。」(断章139)

 よりくわしくは過去記事「近代人の典型的な悩み――パスカルのケース」をご覧ください。

 そこで筆者はこう書きました。

 「ニヒリズムとそれからの逃避としての快楽主義は、17世紀の哲学者パスカルから21世紀の若者に到るまで、一見、「それしかない」と思えるような、近代主義者が迷い込む迷路、しかもおそらく行き止まりの迷路であるようです。/  では、この迷路からは抜け出せないのか? 抜け出せる! というのが私の考えです。」

 「では、どう抜け出せるのか」という問いに対する答えは、きわめて長くなるので、関心をもっていただける方は過去記事「いのちの意味の授業1:コスモロジー」の全体をお読みいただけると幸いです。

 要点だけ言えば、近代科学のコスモロジー(宇宙観)の見方で自分ーいのちー人生を見ると、パスカルや相談者の女性のようなとてもつらい思いが湧いてくるが、現代科学のコスモロジーの見方で見ると、とても明るく元気な気持ちになれるということです。

 実際、かつて筆者が大学で教えた若者たちが書いてくれた感想が、そのことを実証していると思います。

 「いのちの意味の授業1:コスモロジー」の目次にたくさんの例をあげてありますが、例えば「宇宙カレンダーの授業の感想」「コスモロジー教育で心はすっきり晴れやかに」などを参照していただくとおわかりいただけると思います。

 もちろんどんなセラピー・教育も万能・絶対ではないので、「コスモロジーを伝えても元気にはならない?」というケースもありますが、全体のパーセンテージとしては高い効果を示してきたと認識しています。

 よろしければ過去記事全体をご覧ください。時間をかけて長々と読み通す価値はあると思います。

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