sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:エゴン・シーレ 死と乙女

2017-02-06 | 映画


これはエゴン・シーレの人物や人生を掘り下げる感じではなく
女性たちとの関わりを中心に話が進むタイプの映画ですね。
エゴン・シーレは1890生まれ、わずか28歳で早逝したウィーンあたりの画家。
「エロス」と「死(タナトス)」の画家と言われています。
クリムトと同じ頃に生き、クリムトには世話になったようで、
この時代の流行りっぽくクリムトの絵に似た感じの作品もありますが
エゴン・シーレの絵はどこか、センスのいい悪ガキが、
自分の上手さと才能を、どうだ、と言っているようなところがあるように思う。
女好きだったように言われるけど、自分が一番好きだったんじゃないかなぁ。

映画の中に出てくるエゴン・シーレをめぐる女性は、まず彼の妹。
なんだか幼い顔立ちで(16歳からの数年の役なので当然か)垢抜けないけど、
特別なつながりがあって愛し合っていたのでしょう。
それから酒場で出会った、褐色の肌を保つエキゾチックなヌードモデル、モア。
奔放で誇り高くかわいい子です。
それからクリムトのモデルだった赤毛のヴァリ。個性的な顔立ちですね。
最後に、アトリエの向かいに住む姉妹が出てきますが、
この姉妹は全く魅力のないつまらない女たち。
この魅力のなさが、すごくうまく演じられています。
女性たちはそれぞれうまく描き分けられててわかりやすい。

クリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」という大作の飾られた
ウィーン分離派展(セセッション展)のシーンを見ると、
この時代のアートシーンの感じがよくわかります。
「ベートーヴェン・フリーズ」は、確か2003年に兵庫県立美術館の
クリムト展で素晴らしい複製が展示されていたのを見て、
当時クリムトはそんなに興味がなかったのに、すごく印象深かった作品です。
ベートーヴェンの第九交響曲を大きな壁の三面全長35mに描いた大作で、
実物大の精密な複製で、本物と変わらないレベルに再現されていました。
今はクリムトはかなり好きになりましたが、シーレは特にファンではないです、
暗く重いタナトス、みたいなのがあまり自分の好みじゃないからかなと思う。
でも、いろんな作品が映画の中で見られるのはいいですね、
うまいなぁ、もっと見たいなぁと思う。

彼は破滅型の天才という感じではなく、ただひたすら優しい甘ちゃんで勝手な男。
才能がなくてこういう人ってよくいるけど才能があったから名前が残ったし
映画にもなったわけですが、実物もこんなに男前だったのかな?
主役はしゅっとした、したたるような美青年で、大変わたし好みでした。
「モンパルナスの灯」の甘いマスクの美男俳優ジェラール・フィリップに
ちょっと似てるけどそれほどは甘くなく、少しスッキリさせた美青年が演じてるので
目に心地よい映画だった。
でも彼をめぐる女性たちは、不思議な魅力はあるけど、特にきれいな人がおらず、
エゴン・シーレ役の子の美しさが際立っていたなぁ。
女性の中で一番重要なのは、彼と理解しあって深く繋がってたヴァリで、
変わった顔だなぁと思ってたのに、だんだんいい女に見えてくる。
目元が、なんかディカプリオに似てるのよ。でも目の色がとてもきれいな濃い青。
「モンパルナスの灯」の、モディリアニの妻ジャンヌのように
画家に尽くすミューズ的な存在だけど、ジャンヌより強くて自由な女性です。
無理した強がりもあっただろうけど、それを貫く自立心を持っています。いい女。
そうして、ヴァリは報われなかったけど、エゴン・シーレとは深く愛し合ってて
お互いに理解し合う仲間であり兄妹であり親友でありという存在だったので、
女性として報われなくても、あれでよかったのかもなぁ。
むしろ最後に出てきた姉妹の方がかわいそうかも。
見下され利用され理解も求められなかったのは惨めでしょう。

あとこの時代の建物の雰囲気いいですね。
エゴンシーレのアトリエの窓の形!すっごく素敵ー!こんな窓ほしいいいー!

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