sigh of relief

くたくたな1日の終わりに、
熱いコーヒーと、
甘いドーナツと、
友達からの手紙にほっとする、感じ。

映画:ムーンライト

2017-04-23 | 映画


少年時代、学生時代、そして大人と3つの時代が描かれる主人公、シャロンの
成長を描いた映画、みたいなコピーがあったけど、
シャロンは特に成長はしてない気がする(笑)。
孤独ないじめられっ子の子ども時代、高校生時代を経て、その後
おそらく努力して、マッチョで(見るからに)強い大人になったけど、
それは成長というのとはちょっと別のもののような・・・。
このシャロンは主人公として特にキャラが立っているわけではないし
隠れた魅力があるわけでもないし、地味で、さして面白みのない人なので、
この映画は、彼の成長を見るものじゃないように思うんだけどな。
淡々とシャロンの生きてきた人生の情景を見るような映画と思う。

父はおらず、母はドラッグ依存症のシャロンは、学校でもいじめられっ子。
いつもうつむいていて、ほとんど口をきかない。
そんな時知り合ったフアンという男とその明るく優しい恋人が
シャロンにひとときの安らぎをくれる。
でもこのフアンはドラッグの売人で、シャロンをかわいがりながらも、
シャロンの母親にドラッグを売っているという皮肉な巡り合わせで、
そういう自分自身に対して重くつらい気持ちになるフアン。

このフアンがとてもいいです。冒頭で出てきた時は強面で、ああ、
これはガラの悪そうな、どうしようもない馬鹿なチンピラ売人ねーと思ったのに
その後何かでにっこり笑うと、まさに破顔一笑。
なんとも愛嬌のあるやさしい顔になる。ちょっと魅了された。
でも、わりとあっさりといなくなって、とても残念でした、
もう少し彼を見ていたかった。

高校生時代も相変わらずのシャロンで、母親はますますひどくなり
シャロンからドラッグを買うためのお金を巻き上げながらも、自分勝手な態度で
悪態をついたり、愛してると言ったりしてシャロンを支配しようとする。
この母親のくだりは見ていて本当につらいし嫌な気分になります。
親が子供をダメにする。子供の人生をめちゃくちゃにするのって、見ててつらい。
そんな中でもやっと親友と呼べる相手ができ、
ひととき気持ちの通った楽しい時をすごすのですが
とある出来事で、裏切られることに。

その10年以上あと、30代になったシャロンは別人のように大きく強くなり
ドラッグの売人をしている。
結局フアンと同じことをするようになってしまったのです。
フアンはシャロンにとって大事な人だっただろうけど、
そのフアンの苦しみを自分もまた同じように味わうことになる運命の皮肉。
でもシャロンは弱かった自分には戻りたくなかったんだろうな。
そんなあるとき、高校時代に自分を裏切った親友から電話が来て
会いに行くことになり・・・。

最初の方のシーンの手持ちカメラで360度ぐる〜っと撮ったり
微妙な揺れ方をする撮り方には、ちょっと酔いそうになりましたが、
ウォン・カーウァイ映画との共通点やオマージュ的なところを言われるし
監督自身、そのように公言していて、いやはや本当にそうだった。
特に後半の夜のシーンは本当にそれ。
ねっとりと絡みあう色、光と影、カメラのたゆたう動き。音楽。
街も店も人も、
わたしの記憶の中のウォン・カーウァイのいくつかの映画の切なさが
見ている画面に重なって、何重にも切ないシーンになっていく。
後半のこのあたりはもう、どきどきしてはらはらして緊張して期待して、
不安もあって、と主人公と同じ気持ちを切なく切なく味わいました。

とはいえ、ウォン・カーウァイの「ブエノスアイレス」ほど
恋愛という人間関係をガッツリ描いたものでもない感じかなと思う。
恋愛とも言えるとは思うけど、優しい気持ちと切ない気持ち、求める気持ちや憧れも
恋愛のほんの少し手前で、もっとあわあわと、ただ、たゆたっている感じ。
最後のシーンのシャロンのセリフ以外は、
誰かの感情が吐露されることも、ほとんどありません。
でも、情景をたんたんとつなぐことで、十分にそれを感じさせるのは
いい映画なのではないかと思います。

この映画と比べると、「ラ・ラ・ランド」は楽しい映画だけど、
どこまでもなんか人形の作り物だったなぁと思います。人の感情までも。
でもこっちには生身の人の温度と湿度があるんですよねぇ。
特に湿度が。

これがウォン・カーウァイの映画との類似点の動画です。
こじつけっぽいところもあれば、そっくりすぎるところもあるかな。


映画のラストも、ハッピーエンドと言っていいのかどうかわかりません。
望む形で受け入れられたのか、そうではないけど思いやりの形なのか、
その辺もはっきり描かれていませんが、それでいいと思います。
どっちにしても、やさしく美しいラストシーンでした。
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