sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

狂言師の稲垣足穂

2016-12-03 | 芸術、とか
たくさんあるチラシの中で目を引いた1枚。
公民館とか、そういう地味な?ところにも、
この頃はちょっといい感じのフライヤーを見かけることが増えてきました。
これはどこで見たのだったか、曇った夕暮れの?町の景色に惹かれて
なんとなく持って帰ってきた。

お食事+リーディング公演「今宵、おいしいドラマを灘で」と書かれてたので
朗読会みたいな感じかな?
本のイベントはいろいろ行きたいと思ってるけど、
朗読会は作家によるものが多くて、
作家の自作朗読って味はあるけど、舞台って感じではないんだよねぇ。
味があっても、ちょっと退屈することもある。
でも、なんだかよくわからないけど狂言師が読むなら、
普通の朗読会と違って退屈はしないかな、どんな感じかな?と
前日になってやっと予約の電話をかけてみた。
・・・満席。あら残念。ま、仕方ないか。
でもすぐあとに折り返し電話が来て、ひとつ空きました用意できますと。
ラッキー。

慣れない駅から迷いながら少し歩いてレストランへ。
広すぎず狭すぎずの、カジュアルなビストロっぽい居心地いい雰囲気。
まずワンプレートに盛られた野菜たっぷりの食事が出てくる。

なんども頼むのが申し訳ないので、赤と白のワインを一度に頼みました。笑

一通り食事が終わった後で、狂言師が入ってきて、舞台に作ってあった
2畳ほどの広さ、20センチほどの高さの台に上がり、
おもむろにタブレットを持ち上げ、読み始めたのでした。
目の前3メートルのところから、どしんと腹に響く狂言師の声が、
チョコレットとか箒星とかのファンタジーな話を読むという、
なんとも素敵すぎる時間だった。
狂言師の動きは独特で力があり、もう全然朗読のレベルじゃなかった。
演劇を見ているくらい、集中して見入り、聴き入りました。
狂言師の手の大きさがタブレットを片手に持つのにちょうどいい感じで、
しかも紙の本と違って、読書っぽさが全くないのが思いの外よかった。
着物を着た狂言師がタブレット端末を手の延長のように持ち
それを見ながら読み、舞う。
何か新しいものを見ているような感じがしました。
最近の読書会は、タブレットが多いようですけど
狂言師との組み合わせの妙に、心から唸りましたよ。

伝統芸能の人が、一般向け?に何かやるときって、なんか本当に素人向けというか
入門的なものが多くて、わたしは素人のくせにうんざりするんだけど、
そういとこが全然ない舞台だった。
こういう風に、異質なものの組み合わせが上手くいった時の楽しさったらない。
あと、あの、バックの音楽や効果音は誰が演出したんだろう。
全く邪魔にならずに、とてもいい効果だった。
同じ演出家のやってるものなら、もっと見たくなりました。

食事は、ご飯も美味しかったし隣に座ってた女子とも話が弾みました。
隣の席の知らない女子には、本のイベント→朗読会というもの→
ネットのトルストイマラソン朗読会→ロシア人の友だち→ポストクロッシングについて
といろんな話をしたけど、その彼女は演劇をやっている人で、
この朗読のシリーズが、今度中島らもの作品でもあるんだけど、
中島らもが好きすぎて他の人の読む彼の作品は見たくないという話を聞いた。
普段わたしは知らない人と話をするのがわりと億劫な方なんだけど、
美味しいご飯食べながらワイン飲みながら舞台の期待でワクワクしながら、
本に関わるいろんな話がいっぱいできてうれしかったです。

実はこの企画は、実はお友達の勤め先(神戸近郊の町の区民ホール)の主催で、
その彼女にも3年ぶりに会えたし、彼女の3歳の子供にも初めて会えたし、
何から何まで、いい金曜日の夜だった。
あー、こういうこじんまりとした質のいいものだけで、人生を埋め尽くしたいぞ!
こういうのは、都会やその近郊ならではなのかもねぇ。都会近くに住んでてよかった。

「チョコレット」
原作:稲垣足穂
台本・演出:岩崎正裕
上演:善竹忠亮
音響:Alain Nouveau

最新の画像もっと見る

コメントを投稿