やっと『ナッちゃん』第1巻・第4巻が昨日届きました。これで話の発端が分かり、嬉しかったですねぇ。この巻のハイライトは「エピソード4 大手に負けるな!」で、ゼネバストップとオルダム継手が読者の興味を誘ったのです。古典的な機構は近年の電気的な制御に勝る幾何学的な美しささえあるのです。幾何学的なセンスは若い技術者からどんどん失われていると危惧しています。
間欠運動を実現するゼネバストップの木製モデルは私のブログでも"現代からくりおもちゃ館「ぽるぺっぽ」"の中で紹介しました。手で回して遊ぶことが出来ますので是非体験して見て下さい。
マンガの中で軸がずれているのをどのように解決するか悩む場面、あれだなと思ってページをめくるとやはり出て来ましたオルダム継手、機構学の本には出てくるのですが、実際に動いているのを見たことがありませんでした。
ナッちゃんの読者の皆さんもGoogleを使って色々調査され、これらがブログにアップされていることは分かりました。しかしリンクが切れていたりしてなかなか正確な情報が見当たりません。作者のたなかじゅんさんのブログでもこの機構について書かれています。
様々な機構を動態で保存し、それを動画と共に公開しているのがコーネル大学工学部です。このサイトを知ったのは、昔「ルーローの三角形」を調べて、ここに気がついたのです。フランツ・ルーローはドイツの機械学者で、19世紀に「安かろう悪かろ」と言われたドイツの工業製品の品質を向上させ、機械運動学の基礎を築いた人です。彼は教育熱心で多くの模型も製作しました。この模型を収集・整理して公開しているのがコーネル大学工学部なのです。"Oldham"で検索すると彼の模型と共に略歴を見つけることが出来ました。怪しい意訳を示します。
ジョン・オルダム(John Oldham ,1779-1840)はアイルランドのダブリンに生まれ、正規の教育を受けたかは定かではありません。彼は最初、彫金の丁稚になり、次に細密画家に転身します。機械発明への情熱があり、やがてナンバーリングの機械を発明します。アイルランド銀行はこの機械を導入し、彼も主任技術者として雇用されます。この関係はずっと続き(一時イングランド銀行にも雇われた)、余暇に船舶の推進器とエンジンの開発に情熱を燃やします。
彼は一連の特許を取得していましたが、最初は外輪(paddle wheels)で、次の特許(1820)が有名な「オルダム継手」でした。蒸気機関とパドルホイールを連結する必要から考えられたものでしょう。彼のパドルホイールを改良したものが、最初の鉄板張の蒸気船Aaron Manbyに採用されました。
彼はビルの暖房等に関する記事を専門誌に投稿しています。彼の長男トーマスも印刷機の改良に寄与しています。
昔の大学には腕の良い職人さんがいて実験器具を教授の求めに応じて作っていたものです。工芸的にも美しい作品が多いのです。コーネル大学に保存されているルーローコレクションも見ているだけで嬉しくなるのです。
まずオルダム継手(Model: Z05 Oldham’s Coupling)です。説明は英語ですが、動画を大きくして見ることも出来ます。
この継手は実はダブルスライダークランク機構を反転したもの(Model: D09 Double Slider-Crank Mechanism-Inversion)であることも教えて貰いました。動画を見ると納得できます。
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(08/07/13追記)先日の記事ではコーネル大学工学部のルーローコレクションの動画でオルダム継手を紹介しました。大阪経済大学の西山豊さんが書いた記事がキャッシュの残っていて、京都大学総合博物館の常設展示にこの機構があることが分かりました。ドイツ機械メカニズム金属製模型の(13)です。レプリカによる体験コーナーで実際に手で回してみることが出来るそうです。私も京都に出張する機会があったら立ち寄りたいですね。
(08/07/20訂正)Inversionの訳を「変形したもの」から「反転したもの」に訂正します。
間欠運動を実現するゼネバストップの木製モデルは私のブログでも"現代からくりおもちゃ館「ぽるぺっぽ」"の中で紹介しました。手で回して遊ぶことが出来ますので是非体験して見て下さい。
マンガの中で軸がずれているのをどのように解決するか悩む場面、あれだなと思ってページをめくるとやはり出て来ましたオルダム継手、機構学の本には出てくるのですが、実際に動いているのを見たことがありませんでした。
ナッちゃんの読者の皆さんもGoogleを使って色々調査され、これらがブログにアップされていることは分かりました。しかしリンクが切れていたりしてなかなか正確な情報が見当たりません。作者のたなかじゅんさんのブログでもこの機構について書かれています。
様々な機構を動態で保存し、それを動画と共に公開しているのがコーネル大学工学部です。このサイトを知ったのは、昔「ルーローの三角形」を調べて、ここに気がついたのです。フランツ・ルーローはドイツの機械学者で、19世紀に「安かろう悪かろ」と言われたドイツの工業製品の品質を向上させ、機械運動学の基礎を築いた人です。彼は教育熱心で多くの模型も製作しました。この模型を収集・整理して公開しているのがコーネル大学工学部なのです。"Oldham"で検索すると彼の模型と共に略歴を見つけることが出来ました。怪しい意訳を示します。
ジョン・オルダム(John Oldham ,1779-1840)はアイルランドのダブリンに生まれ、正規の教育を受けたかは定かではありません。彼は最初、彫金の丁稚になり、次に細密画家に転身します。機械発明への情熱があり、やがてナンバーリングの機械を発明します。アイルランド銀行はこの機械を導入し、彼も主任技術者として雇用されます。この関係はずっと続き(一時イングランド銀行にも雇われた)、余暇に船舶の推進器とエンジンの開発に情熱を燃やします。
彼は一連の特許を取得していましたが、最初は外輪(paddle wheels)で、次の特許(1820)が有名な「オルダム継手」でした。蒸気機関とパドルホイールを連結する必要から考えられたものでしょう。彼のパドルホイールを改良したものが、最初の鉄板張の蒸気船Aaron Manbyに採用されました。
彼はビルの暖房等に関する記事を専門誌に投稿しています。彼の長男トーマスも印刷機の改良に寄与しています。
昔の大学には腕の良い職人さんがいて実験器具を教授の求めに応じて作っていたものです。工芸的にも美しい作品が多いのです。コーネル大学に保存されているルーローコレクションも見ているだけで嬉しくなるのです。
まずオルダム継手(Model: Z05 Oldham’s Coupling)です。説明は英語ですが、動画を大きくして見ることも出来ます。
この継手は実はダブルスライダークランク機構を反転したもの(Model: D09 Double Slider-Crank Mechanism-Inversion)であることも教えて貰いました。動画を見ると納得できます。
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(08/07/13追記)先日の記事ではコーネル大学工学部のルーローコレクションの動画でオルダム継手を紹介しました。大阪経済大学の西山豊さんが書いた記事がキャッシュの残っていて、京都大学総合博物館の常設展示にこの機構があることが分かりました。ドイツ機械メカニズム金属製模型の(13)です。レプリカによる体験コーナーで実際に手で回してみることが出来るそうです。私も京都に出張する機会があったら立ち寄りたいですね。
(08/07/20訂正)Inversionの訳を「変形したもの」から「反転したもの」に訂正します。
http://www1.hst.titech.ac.jp/~kadota/kikou/mechlego.html
コメントありがとうございます。ご紹介のページ拝見いたしました。昔の模型は本当に美しく出来ていて感心しきりです。
最後にあった「KAMEMATU SEISAKUJO 亀松製作所」の継手は"Double Slider Ellipsograph of Leonardo da Vinci "ではないでしょうか?
円盤に十字の溝が彫ってあるので楕円コンパスかなと思いました。動画は以下です。
http://kmoddl.library.cornell.edu/model.php?m=256&movie=show
レオナルド・ダ・ヴィンチの考案ですね。
クーラー等に用いる建物・鉄道車両用冷凍空調用の「スクロール形圧縮機」及び鉄道用のスクロール空気圧縮機(最近低騒音用として特急電車に良く使われる)には半ば必須状態でオルダムカップリング機構を使っております。
CF:http://panasonic.co.jp/mtj/v5206/pdf/p0602.pdf
アキュムレータレスのスクロール圧縮機の図面は横から見た絵しか無いので良く理解できません。それで以前教えて頂いたスクロール圧縮機の動画も見ました。
http://www.hitachi-ies.co.jp/products/cmp/scroll_oilfree/scrolls.htm
旋回スクロールの駆動に使われているのですね。
スクロール圧縮機は100年も前に特許が取られているのですが、実用化は日本が先駆け。インボリュート曲線の絶妙な応用ですね。
このコーネル大学のコレクションは素晴らしいですね。オルダムが人の名前だということも知りませんでした。
コメントありがとうございます。このDouble Slider Ellipsograph of Leonardo da Vinciがあの模型だったのですね。同じように動くなら素晴らしい。
オルダムを英語版Wikipediaで調べると大マンチェスター区の町の名前でした。やはりコーネル大学で調べてオルダムさんの略歴がわかりました。先ほどコーネル大学のページをブックマークしました。このような良質のサイトは露出させるべきですね。
今後ともよろしくです。
http://blog.zaq.ne.jp/igarage/article/2996/
お久しぶりです。
記事を拝見しましたが、出力軸をアクリルの箱の外まで伸ばしてくれると嬉しいですね。こちらにハンドルは不要ですが、トルクは体感したいです。
そうそう、Cinderellaで作った絵を動画で保存する方法が分かったのでオルダム継手の動画も作って見たいです。