「いつもいつも寂しかったのよ、どうしてかしら?
あたしはいつも寂しかったの、幼いころからずっと……」
そう言って、そのひとは話すのをやめた。
自分のなかの声に耳をかたむけるように。
こころが何かに届いていないとき、それは寂しさになる。
こころが届いているとき、それは充実した孤独になる。
寂しさは、生をむしばむ。
しかし孤独は、生のよろこびの、すぐそばにある。
引き裂かれたこころは、いつも寂しい。
ほころびたこころは、いつも寂しい。
あいたいひとの笑顔と幸福がみえ始めると、寂しさは過ぎ去り、ただ孤独だけがある。
失ったひとの生の輝きがみえ始めると、やはり寂しさは孤独となり花ひらく。
寂しければ、みつめることだ。
それでもまだ寂しければ、まだまだみえていないということだ。
孤独の花の蜜は、そのひとを目覚めさせる。
そして誰かを、きっと祝福する。
冬の朝をつらぬきとおす、ひとすじの光のようであれ。
すみきった鏡のようであれ。