三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

憲法9条改憲発言 「安倍文学」を読みこなせ

2017-05-26 09:27:32 | 憲法
 安倍晋三首相(自民党総裁)は憲法記念日の5/3、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、2020年までに改憲を実現する意向を表明した。具体的には、9条改憲と高等教育(大学・短大・専門学校等)を含む教育無償化を挙げた(*曖昧な表現だが)。9条については、現在の1項・2項はそのままにし、新設の3項で自衛隊の存在を認める旨を明記する、とのことだ。

 このことに関する世論について、「朝日新聞」2017.5.16(朝刊)「改憲へ世論対策急ぐ 首相意欲「国民に判断して頂く」」は、各種世論調査の結果を比較・分析している。

●「朝日新聞」(2017.5.13-14調査)
「安倍首相は、憲法9条について、戦争を放棄することや戦力を持たないことを定めた項目はそのままにして、自衛隊の存在を明記する項目を追加することを提案しました。このような憲法9条の改正をする必要があると思いますか。その必要はないと思いますか」
→「必要がある」 41%
 「必要はない」 44%

●「読売新聞」(2017.5.12-14調査)
「安倍首相は、憲法第9条について、戦争の放棄や戦力を持たないことなどを定めた今の条文は変えずに、自衛隊の存在を明記する条文を追加したい考えです。この考えに、賛成ですか、反対ですか」
→「賛成」 53%
 「反対」 35%

*他に「産経新聞・FNN」と「NHK」の調査結果も掲載されているが、省略する。

 上記の「朝日」と「読売」の質問内容が微妙に違う。「朝日」は必要があるか否か、「読売」は賛成か否か、だ。「安倍首相の意向に肯定的に反応する人が結構多いな」というのが、私の率直な感想だ。しかし、だからと言って、この「憲法9条改正方針」の実態が正しく理解された上で国民の多くが判断したかと言えば、それは違うだろう。

 権力者とその取り巻きは、自分たちにとって都合のいいように「説明」したり、捏造したり、都合の悪いことを隠したりしがちだ。特に安倍政治は、これまで曲がりなりにも「犯してはならない」とされてきた立憲民主主義をいとも簡単に骨抜きにしてしまった。これまで「憲法9条の下では集団的自衛権の行使はできない」と50年以上にわたって維持し続けた政府解釈を屁理屈によって投げ捨て、一部「行使できる」と質的に正反対の閣議決定(2014.7.1)を強行してしまった。そしてこれに基づき、2015年に安全保障関連法(違憲戦争法)は強行制定された。

 私たちが決して忘れてならないのは、安倍政治は国の根本にあるべき立憲民主主義をねじ曲げ、「現在」はそのペテンによって確立されたものである、ということだ。

 確かに、上記の世論調査・質問文を読む限りでは、私たちは「今、憲法と自衛隊の存在に乖離かあるのだから、その矛盾を解消するめために改憲も必要かもね」と思いがちだ。しかし、それは何の事実も論理も媒介しない「子どもの直感」に過ぎない(*子どもはそれでよい面もあるし、大人顔負けの子もいる)。そういったナイーブな(*お人好しの)思考が、そしてそれに基づく言動が、私たちの政治をさらに危ういものにしていくのだ。

 憲法さえ骨抜きにしてしまった安倍首相らのこういった言動を、「字句どおり」に受け取ってはならない。そもそも、憲法9条の1項・2項をそのままにして、自衛隊の存在を認める旨の3項を付け足すことなど、法論理的に可能だろうか? そしてその変更によって、自衛隊にはめられた足枷が一挙に解き放たれるような新解釈へとつながらないだろうか? 立憲民主主義が骨抜きにされた現状に於いて、「法論理に沿って」解釈される保証がどこにあるのか?

 こういった安倍政治のペテン性への疑念を考慮に入れないまでも、この「憲法9条改正案」の危険性を分かりやすい形で指摘したのが、「東京新聞」2017.5.21(朝刊)「石川健治・東大法学部教授に聞く 自衛隊明記 最も危ない」(インタビュー記事、聞き手=桐山桂一)だ。

当ブログ「石川健治教授(憲法学)『週刊金曜日』インタビュー記事」(2015.7.8)も参照されたい。

 石川教授の「東京新聞」での発言を要約すると、以下のとおり(*文責は星徹)。

「統治機構の論点は常に、【第1層(表層)】法的な権限があるかどうか、【第2層(中層)】その権限を実際に行使する正当性(資格や理由)があるかどうか、【第3層(中核層)】権限を裏付ける財政面の統制があるかどうか、の3層構造をなしている。

 憲法9条をこういった権力統制の文脈で捉え直すと、どうなるか。「自衛力」という論理によって第1層は突破されたが、第2層と第3層はその後も有効に機能してきた。しかし、もし9条に3項を新設して自衛隊に(憲法上の)正当性を持たせてしまうと、まず第2層のコントロールが全く利かなくなってしまう。そしてそれを理由として、第3層もやすやすと突破されてしまうでしょう。こうして、軍事力のコントロールが憲法上は無くなってしまう。

 安倍首相は、「現状を追認するだけだから憲法9条を改正しても何も変わらない」旨を言うが、実はその逆で、最も危険な提案だ」
                
                 《石川教授のコメント要約終り》

 私たちは、決して「お人好し」になることなく、深読みをして、安倍政治と向き合っていく必要がある。

*第1段落を若干修正した(2017.5.27)。
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