タイムラプスいろいろ

モーション・タイムラプス映像への飽くなき追求


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デジタル処理によるモーションは邪道か?

2016年06月28日 | 日記

タイムラプスの認知度が上がって来ると同時に、三脚に固定して撮影した映像は退屈だ!と言う事に気がついて、ローテーターやタイムラプス・ドーリーにカメラを載せて映像に動きを付けたモーション・タイムラプスの撮影に関心を持たれる方が増えて来ました。 プロの映像制作の現場でも、ついこの間まではこちらから提案しないとタイムラプスは三脚に固定して撮影する固定撮影が行われる事が多かったのですが、最近は制作会社側から「タイムラプスにモーションを加えたいのでドーリーを使って欲しい」と言う声が必ず聞かれるようになって来ました。

実は映像を横にスライドさせたり、ズームを使ったりする事は、ソフト処理上で行うことができます。 AdobeのAfterEffectsなどを使ってデジタル画像処理を行えば自由自在に画面にモーションを与えることができます。 事実、特に海外のタイムラプス作品の中には、このデジタル・エフェクトを使った物が沢山見られます。 モーション装置の為の投資もいらないし撮影時の手間もかからずに簡単に効果が得られるとあっては当然のことかもしれません。

ではローテーターやタイムラプス・ドーリーは不要なのでしょうか? モーションはデジタル処理で十分なんでしょうか?

 

まずこの映像をご覧ください。 作品集で公開しているEast東北海岸線の絶景(ダイナミック・ダイジェスト版)の中のワン・シーンです。

この映像は、水平に設置したドーリーの上に設置したカメラを水平にスライドさせながら撮影したものです。 その映像に画像処理の段階でチルト(上向き回転)の動きをデジタル処理で加えています。 この映像で着目して頂きたいのは、手前にある地面に転がった枯れ枝とその背景です。 ドーリー上のカメラのスライドに伴い背景との間に視差が生じるので、動きに差が生じます。 それがこの絵を立体的に見せてくれるわけです。 もしここで、ドーリーを使わずに三脚に固定して撮影し、画像処理の過程で絵をスライドさせたらどうなったでしょうか? 視差が生じないので全く不自然な動きとなり、誰がみても壁に張った写真の前でカメラをスライドさせたように感じることでしょう。 これが実際のモーションとデジタル・モーション処理との決定的な差です。


モーションとしてはドーリーを使ったスライド・モーション以外に
・パン(カメラを左右に回転)
・チルト(カメラを上下に回転)
・ズーム
などがあります。


パンやチルトはどうでしょうか? これはデジタル処理では不可能です。 例えば右にパンをするとして、デジタル処理でいくら画面を右に移動して行ったところで、右方向には永遠に正対出来ない事から簡単に想像がつくと思います。 しかしズームについてはかなりの部分をデジタル処理で実現する事ができます。

 

この作品をご覧ください。 作品集で公開している東京スカイツリーの作品です。


この映像はすべて三脚に固定して撮影したもので、ローテーターやタイムラプス・ドーリーなどのモーション装置は一切使用していません。 映像の中のスライドやズームは、すべてデジタル・モーション処理によって画像処理の過程で加えられたものです。 これらのモーションが有ると無しでは映像を観る立場からすると大変大きな差があるのは想像に難くないと思います。

この映像の中で着目して頂きたいシーンがあります。 それは2番目のシーン(スカイツリーの下のアサヒビールのビルを見下ろした絵)です。あたかも空中に数百メートルの長さのレールを張ってカメラを高速でスライドさせながら撮影したように見えると思います。 この映像に不自然さはありません。 それは遠方の距離にある映像で他に近い距離に何も写っていないからです。 つまり視差を生じるものがないので不自然さがないのです。

もともと遠方の景色はドーリーでスライドしても動きません。(パンやチルトで首を振らない限り、平行移動では動きません) それは景色で見えている所までの距離に対し、カメラが移動できるレールの長さが余りに短い為です。 ところが、デジタル処理では簡単に遠方の背景をスライドさせる事ができます。 逆に言うとあたかも数百メートルの仮想レールの上でカメラをスライドさせてくれるのです。 ですから視差を生じるものさえ視野に含まれていなければ、不自然さのない大胆なモーションを実現することが可能です。 デジタルならでは実現できた大胆なモーションと言えます。 

そもそも、このような遠景のみを軽い望遠を使って撮影する場合、手前に何らかの対象物は入れられない事が多く、ドーリーなどを使ってモーション感を出すことは不可能です。 ローテーターを使ったパンやチルトのモーションも、そもそも望遠で写したいエリアが決まっている場合、安易に首を振ってはそもそもの目的からはずれてしまいかねません。  そこでズームや仮想スライドなどのデジタル・モーション効果の出番となる訳です。 こうやって見るとデジタル・モーション処理を単純に「邪道」と切り捨ててはいけない事がわかります。

ただしデジタル処理でスライド・モーションを得る場合、当然のことですが画像の視野が狭くなります。 CCD全体に写った視野の一部を切り出して2Kとか4Kの希望とする出力サイズで取り出すからこそCCD画像の中を自由に動き回ってモーションを作りだす事ができるわけです。 ですからモーションを大きくしようとすればするほどせっかく広角で撮った画像はどんどん狭くなって行ってしまいます。 これも実際にローテーターやタイムラプス・ドーリーを使って撮影した場合とデジタル処理でモーションを作り出した場合の決定的な差と言えます。


デジタル・モーション処理を行うにあたって、常に頭の中に入れておかなければならない事があります。 それは撮影に使用しているカメラのCCDの画素数と、切りだす最終的な画像のサイズの関係です。

 

一般的に使用されているFHD(1920ピクセル x 1080ピクセル)が最終切り出し画像サイズであれば、一般的な一眼レフではかなりの範囲で自由に動き回れることが確認できます。 しかし4K映像やそれ以上のサイズを目的とすると、そもそもモーションを付けら得る余裕は大変限られる、もしくは不可能になる事がわかります。

また、ズームをデジタル処理で得た場合、最終画像の1ピクセルをカメラのCCDの1ピクセルで描写させた場合(最大にズームさせた状態)と、カメラのCCD上の数ピクセルをバインドして 最終画像の1ピクセルに描写した場合との画質の差についても考える必要があるのではないかと思います。(詳細は実験していないのでわかりませんが)

 

これらのことを総括すると、およそ次のようにまとめることができます。

1.デジタル・モーション処理ではパンやチルトのモーションは実現できない。
2.デジタル・モーション処理でのスライド効果も極めて限定的で、普通の撮影環境では視差が生じない為に奥行感や立体感が得られない平面的な映像になってしまう。
3.デジタル・モーション処理でスライド効果を得ようとすると、せっかく広角で撮影した視野は狭くなり、モーションを大きくすればするほどその度合いは大きくなる。
4.デジタル・モーション処理の効果の多くは現実には存在しない仮想現実の動きを示す。
5.但し、その特性を逆手に取ると、デジタル処理でなければ得られないモーションを実現する事が可能。
6.デジタル・モーション処理によるスライドは切り出す最終的な画像のサイズによって、動かせる範囲が制約される。
7.デジタル・モーション処理によるズームは画質の変化を見ながら一定範囲内に収めなければならない。
8.あくまでも基本は実際にローテーターやタイムラプス・ドーリーでモーションを与えながら撮影する事。
9.デジタル・モーション処理はその上で味付けとして必要に応じて使用、もしくは実現不可能な仮想現実的な動きを演出したい場合に使用するのが有効。

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