ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・病気・芸能・スポーツ・政治・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年、「僕とパニック障害の20年戦争」出版。

大人になるにつれ、かなしく(7)

2016-12-12 21:58:31 | Weblog
2学期も終業式を迎えた。街はクリスマスムード一色だ。藤沢と有紗と僕は、駅前の樹々という名の、いつもの喫茶店で軽めの昼食を済ませ、それぞれの方面へ向かう。僕は自転車で、藤沢は上り電車で、有紗は下り電車で。

「誠、しっかり勉強しろよな。まあ、俺もだけど」

「ああ」

「わたしには激励してくれないの?」

「矢野は言わなくてもやると思うけど、誠はサボりそうだから」

僕は軽く、藤沢を睨んでやった。

「そんなことないよね、坂木君」

「うん、ベストは尽くすよ」

「やけに格好いいじゃないか。でも最近の誠を見ていると、あながち否定は出来ないけどな」

藤沢は少し真面目な顔をした後、笑顔になり、「じゃあな誠」と声を張った。

僕も「ああ、じゃあな、孝志。しっかり勉強するんだぞ」と言ってやった。

有紗は笑顔で「あんまり無理しないようにね」と言う。

「矢野も頑張って」

僕は精一杯の言葉を返した。

僕は二人のうしろ姿を見ていた。彼らの背中が小さくなるにつれ、胸騒ぎがした。僕は自転車を喫茶店に置いたまま、駅に向かって歩き出した。気づかれないように、改札を通過する二人の後を追う。二人一緒に上りのホームへ向かった。やっぱりかと思いながら、僕も少し送れて上りのホームへ降りていった。
ジャンル:
小説
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