喫茶店「樹々」のカウンター。
「そうか。藤沢君、施設に移されるのか」
白川さんの顔はいつになく神妙だった。
「病院としては良くなる見込みの薄く、かといって直ちに命に別条のない患者は、退院させたいんですよね」
僕は窓際の席に、向かい合って座っている高校生のカップルに目を向けた。かつて僕が通っていた頃の制服と変わっていない。
「なかなか美男美女の組み合わせじゃないですか」
僕は声を絞って言った。
「ああ、あの子達。そうだね。あの二人、見てるとねえ、藤沢君と有紗ちゃんを思い出すよ。君がいない時は、彼らもあの席に座っていた」
「それにしても、少し幼くありません?孝志と矢野と比べると」
「いやあ、そうでもないよ。確かにあの二人は大人びてはいたけど、それでも、あどけなかったよ。誠君はさらに幼かった」
白川さんは遠くを見つめるような目をしていた。僕は少し恥ずかしかった。
「でも、あのカップル、見込みありますよ。今の時代、チェーン店に入らず、この店を選ぶなんて、センスがあるな」
「このあたりもだいぶ、チェーン店が増えたからね。なかなか難しい時代になったよ」
白川さんが苦く笑う。
「そういえば、亜衣がこの店を手伝いたいらしいですよ」
「ああ、そう」
「お義父さんも、ランチの時間とか、一人じゃ大変でしょ」
「ううん、昔はお客さんは多かったけど、今の方がきついな。やっぱり年かね」
「だから父娘でやればいいじゃないですか。亜衣はこの店への思い入れが強いみたいです。俺だってこの店に残っていて欲しいですよ」
僕は冷めたコーヒーを飲み干した
「そろそろ、いかなきゃ」
「どこに?」
「学校へ行ってみようかと。この前、喫茶店の写真を孝志に見せたら、凄く嬉しそうで。だから、今度は母校でも撮ってこようかなって」
「そうか、孝志君、喜んでたか」
白川さんは静かな笑みを浮かべた。僕は店を出て母校へと向かった。
「そうか。藤沢君、施設に移されるのか」
白川さんの顔はいつになく神妙だった。
「病院としては良くなる見込みの薄く、かといって直ちに命に別条のない患者は、退院させたいんですよね」
僕は窓際の席に、向かい合って座っている高校生のカップルに目を向けた。かつて僕が通っていた頃の制服と変わっていない。
「なかなか美男美女の組み合わせじゃないですか」
僕は声を絞って言った。
「ああ、あの子達。そうだね。あの二人、見てるとねえ、藤沢君と有紗ちゃんを思い出すよ。君がいない時は、彼らもあの席に座っていた」
「それにしても、少し幼くありません?孝志と矢野と比べると」
「いやあ、そうでもないよ。確かにあの二人は大人びてはいたけど、それでも、あどけなかったよ。誠君はさらに幼かった」
白川さんは遠くを見つめるような目をしていた。僕は少し恥ずかしかった。
「でも、あのカップル、見込みありますよ。今の時代、チェーン店に入らず、この店を選ぶなんて、センスがあるな」
「このあたりもだいぶ、チェーン店が増えたからね。なかなか難しい時代になったよ」
白川さんが苦く笑う。
「そういえば、亜衣がこの店を手伝いたいらしいですよ」
「ああ、そう」
「お義父さんも、ランチの時間とか、一人じゃ大変でしょ」
「ううん、昔はお客さんは多かったけど、今の方がきついな。やっぱり年かね」
「だから父娘でやればいいじゃないですか。亜衣はこの店への思い入れが強いみたいです。俺だってこの店に残っていて欲しいですよ」
僕は冷めたコーヒーを飲み干した
「そろそろ、いかなきゃ」
「どこに?」
「学校へ行ってみようかと。この前、喫茶店の写真を孝志に見せたら、凄く嬉しそうで。だから、今度は母校でも撮ってこようかなって」
「そうか、孝志君、喜んでたか」
白川さんは静かな笑みを浮かべた。僕は店を出て母校へと向かった。