ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・病気・芸能・スポーツ・政治・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年、「僕とパニック障害の20年戦争」出版。

駒花(12)

2017-05-16 21:23:44 | Weblog
自分に見えなかったものが、菜緒に見えていた事で、私は頭の中は一杯になっていた。
「菜緒ちゃん、おじさんと一局指すか?」
「はい、よろしくお願いします」
「角落ちでどうかな?いつも、その生意気なお姉さんとも角落ちで指してるんだよ」
「私にもぜひ、教えてください」
菜緒は満面の笑顔で答える。
「菜緒ちゃんは、可愛いなあ」
先生はチラッとこちらに目をやった。確かに、菜緒は可愛い。私はあんなにうまく笑顔が作れない。それにしても、生意気なお姉さんとは誰だろう。
「じゃあ、そっちは平田君と桜井さんで指しなさい。さおりは見てなさい。お前が上から見るんじゃなくて、その二人から学ぶんだ」

奥さんが紅茶とケーキを運んできた。
「あなた、さおりちゃんにそんなに厳しくしなくても」
「これくらいでさおりは落ち込むようなタマじゃないから。心配するな。それより、後輩の将棋を見て、学ぶ姿勢も大切なんだ。さおりにはそうしたところが欠けている」

先生は菜緒とさっさと指し始めていた。
「俺は、さおりの親御さんから送ってもらったお茶でいいよ」
先生は盤上に視線を落として、奥さんにリクエストした。私は先生の物言いが少し頭にきていたが、言われていることは大体、当たっていた。それよりなにより、菜緒に負けないで欲しい思いの方が遥かに強かった。








ジャンル:
小説
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