私のタイムトラベル

ある家の物語・白鷺家の人々
― 道理を破る法あれど法を破る道理なし ―

深夜の会話

2017年05月10日 | 2. 闘争編

11月になり、T県に建設中の家が完成した梅子叔母が、祖母・松子さんの誕生祝いかたがたやって来た。

父は「よくがんばったな」と新築祝いを渡し、叔母はそれを「サンキュー」と言って受け取った。

「来て早々にややこしい話もなんだから、明日また話に来る」と言って、父は翌日、夕食後を見計らって

9時ごろに再び母屋に行った。行くと、松子さんは寝ているという。

 

「疲れて寝たはんね。 起こそか?」 と梅子叔母が言った。

「いや、寝てるのやったらええ」 と松子さんを除く、3人での話し合いとなった。

この時父が「おれの手紙に何の反応もないってどういうこと?」と言うと

梅子叔母は「分筆のはなし? そら無理や。 それやったら ここでは話せへん。 四郎ちゃんやら全部が集まった時で

ないとあかんわ」と答えた。

松子さんを中心に、とにかく我が家の問題を話し合うはずだった父は、この言葉を聞いて

「そうか、それやったら話はない」と席を立とうとした。

 

帰ろうとする父の背後から、梅子叔母は「これで話すことないのやね、もう最後やね!最後やね!!」と繰り返した。

父は「今まで自分が長男と思ってやってきたけど、この家の長男は姉貴やったんかもしれん。長男の役目は、姉貴に

任せたほうがええのかもしれん」と呟いた。 

それを聞いて、梅子叔母「そうしよし、それがええ

 

母屋から早々に引き揚げてきた父は、お酒を飲んでだらしなく寝てしまい、そのあと母と私は居間で話をしていた。

母屋からあがってくる声がかなりけたたましい。

やがて、私は「もう寝るわ」と、自分の部屋に入った。すると、下の母屋からもろに3人の話声が聞こえてくる。

「おかあさん、ちょっときて!」 私は母を呼んだ。

疲れて寝ていたはずの松子さんが起きだしてきて、3人でこちらに対する悪口雑言でおおいに盛り上がっている。

はしたない話だが、耳を床に近づけるとはっきり聞き取れる。

 

松子さん:「あれ(手紙)が2、3枚くらいやったらなあ・・・・(笑)」

梅子叔母:「ながい、ながい!」

竹子伯母:「こっちを困らせて騒いではる、ムチャクチャなことを言う」

松子さん:「私はおとうちゃんの借金返して、おとうちゃんの仕事の面倒見て、この家もこうて(買って)

      がんばったんやけどな、・・・このごろのひとはなあ・・・」

梅子叔母:「ああ、そらぁ無理。おかあちゃんがやってきたことは わたしでもでけへんわ。あの手紙、論理が

      全然結びついてない、話してもケンカになるだけや。“梅子、おまえの立場やったらどうする”言われても

      なあ、わたしは私やし」

 

こうして、昨今の親子関係、世相をおおまじめで嘆きつつ、3人の話はおおいに盛り上がり、なんとそれはきっちり

午前3時まで続いた。 玄関の戸の開く音がして、竹子伯母が帰り、しばらくして電話のベルが鳴り(多分家についた

との電話だろう)そのあと静寂が戻った。

私と母は、その後一睡もできず、翌朝、わたしは仕事を休んだ。

母と早朝ゴミ捨てに行ったとき、偶然、梅子叔母と出会った。叔母はまるで昨夜の出来事など何もなかったかのように

おはようございまーす」と、驚くほどにこやかに笑ってあいさつした。

 

このことは結局、一日おいて父に話すことにした。

「お袋、疲れて寝てるといったけど、起きてたんやな・・。姉貴のあの大きな声が聞こえんわけないもんな」

と父は言った。

 

クラス会出席のあとお酒を飲み、一眠りしてから家の大事な話に臨むなんて大馬鹿だと思うが、父の行動はこれでも

本当は正解なのだと私は思う。 家族なんだから。 本当ならそう思う。

 

家族って一体なに??


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