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ロウソクの科学

2017-09-16 | ブログ

 20世紀の科学の発展はすさまじく、21世紀の今日、科学技術の粋は行き着くところまで行った感がする。人類は宇宙に住むこともできるし、日本にいて世界中の情報をインターネットでもって瞬時に得ることができる。私たちが一世紀も前の人類には考えも及ばない文明の恩恵を蒙ることができるのが科学のおかげであるということを否定する人はいないであろう。 


 科学とは自然を解明し、自然の法則そして自然の摂理を理解することである。だが、一体私たちはどれだけ科学について知っているのであろうか。 

 ここに、今ではもう日常的に使われることのないロウソクがある。このロウソクは戦前まで立派な照明材として使われていた。非常にシンプルな照明材であるが、私たちははたしてこのロウソクについてどのくらい知っているのであろうか。ロウソクは何でできているのか、ロウソクは何で燃えるのか、ロウソクが燃えるのには何が必要なのか、ロウソクが燃えると何が残るのかなどの疑問に対してどれだけの人が答えられるのであろうか。 


 科学は自然を徹底的に分析することによって進歩してきたと同時に進歩するに及んで人類は自然の神秘さに畏敬の念をもった。人類は科学が進歩しても自然の法則を司る自然の摂理すなわち神の摂理を否定することはなかったのである。いやそれ以上に自然を慈しむようになったはずだ。 


 ところが、科学技術がこれだけ発展してきた現在、<自然破壊>なることが叫ばれている。よく考えてみるに、<自然破壊>が起こったのは科学技術が進歩したからではなく、私たちがいつしか<科学する心>を失ってしまったからではないか。<科学する心>とは自然の神秘に触れることであり、自然を慈しみそして愛(め)でることであろうと私は思っている。 
  
 ファラデーの「ロウソクの科学」(角川文庫、三石巌訳)は<科学する心>について書かれた感動的な本である。ファラデーは古今東西の科学者の中で5本の指にはいるぐらいの偉大な科学者である。日本の高等学校の物理の教科書ではファラデーの電磁誘導の法則、化学の教科書ではファラデーの水の電気分解として登場する。現代の科学技術の土台は電気と磁気である。ファラデーはそれらの基礎になる理論を発見した人である。私たちはファラデーの遺産によって文明を享受しているといっても過言ではない。それぐらいファラデーは偉大な人なのである。 


 ファラデーは1791年生まれのイギリス人である。貧しい鍛冶屋の子で、幼い頃から製本屋に丁稚として働きにでた。むろん学校へは行っていない。ファラデーは独学で科学を極め、歴史にその名を残すのだ。明治の大ベストセラー「西国立志編」でももちろんファラデーは大きく取り上げられている。 


 「ロウソクの科学」は1861年のクリスマス休みに、ロンドンの王立研究所で行われたファラデーの6回の講演を本にしたものである。内容は6回分に分かれているが、すべてロウソクにまつわることが述べられている。日本のロウソクが登場するのは大変興味深い。6回の内容は次の通りである。 

 第一講  一本のロウソク──その炎・原料・構造・運動・明るさ 
 第ニ講  一本のロウソク──その炎の明るさ・燃焼に必要な空気・水の生成 
 第三講  生成物──燃焼からの水・水の性質・化合物・水素 
 第四講  ロウソクのなかの水素──燃えて水になる・水のもう一つの成分・酸素 
 第五講  空気中に存在する酸素・大気の性質・その特性 
 第六講  炭素すなわち木炭・石炭ガス・呼吸および呼吸とロウソクの燃焼との類似 

 燃焼とは物質が酸素と結合して、熱や光を出す現象であると化学の教科書には書かれている。あまりにも当然のように書かれているので、読んだものはそんなものかと感激もしないでただ覚えてしまうだけだ。だが、燃焼が酸素と結合することだと理解するのにファラデーを含めた科学者たちがどれほどの実験をし努力したのか。ロウソク1本の中に自然の神秘・自然の驚異・自然の無限性などが一杯詰まっている。「ロウソクの科学」は1本のロウソクでもって自然の神秘を1つ1つ人類の言葉に翻訳していくのである。高等学校の化学の知識のある人にとってはやさしい内容であるが、この本は私たちに<科学する心>を与えてくれるのである。 

 高校生のときの化学の実験で、透明な液体に透明な液体であるフェノールフタレイン溶液を入れると、ビーカーの中の液体が一瞬にして鮮やかな赤色になった。それを見たときの感動を私は今でも覚えている。物理で、すでに半導体に取って代わられた真空管の原理を理解したときの感動とうれしさは天にも昇る気持ちがしたものだ。 


 自然を愛するということはとりもなおさず科学を愛することだと「ロウソクの科学」は教えてくれる。私は文科系ですからと言って、科学に目もくれない人たちにはぜひとも読んでほしい名著である。 


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