マーサの昔話

デジカメでの景色や花、動物などの写真
海外体験談、今日の一品、糖分控えめ?なおやつ等‥‥‥

女友達との再会 SR2

2009年03月03日 | Scottish Romance
 仕方なく部屋へ戻り、スーツケースから財布を取り出し、部屋を後にしました。
 何も言わないで立ち去るなんて、随分せっかちな男性だわなんて、独り言を言って
おります。 でも、よくよく考えてみますと、当然のことなのかもしれません。

 私は一対、何を期待し、何を考えているのかしらと薄笑いさえ浮かべておりました。
 女性一人の部屋に男性を入れること自体、不謹慎そのもの。 勿論、相手がどこの
誰だかということも分からないのに、用事が済めば、いなくなるのは当然と言えば
当然なのです。 しかし、私の心の中では、そんな小さな出逢いでも、何かのつながりを
持とうとして、或いは 「 今から、お茶でもご一緒しませんか? 」 という様な言葉を
期待していたのかもしれません。 軽率だとか、そんな深い意味ではなくて、地元の人達
又は、私と同じ様な旅行者、他国の人達と友人関係になる為には、あらゆる場面で
自分という存在を解ってもらわなければならないのです。

 ただ観光気分で名所地を見て、ウットリしお土産を買い、予約されたレストランで
皆と食事をして、帰って行かれる旅行者も沢山いらっしゃいますが、私は、そのような
中身の無い安っぽい旅行にはしたくないと、前々から考えておりました。
 勿論、安っぽいというのは、その旅行に対する価値観の問題であって、人によっては
それがベストだと思われる人々もいらっしゃる訳でして、ただ、私くし個人の
意見として、添乗員任せのパック旅行程、つまらない年寄りツアーだと思って
います。 それでも、おばあさんになったら、お世話になるかも知れませんが。

 若いうちは、一人及び二、三人と、常に少人数で行動し、できれば知名度の低い
地方を選んで、旅する事に重点を置くと、意義深い旅行として、終わることもあります。
 地元の人達しか入らないパブで、お酒を飲んだり、名も知らない通りを歩いて
地図案内にも載っていなかった小さな博物館を発見したり、又その場所で始まる
様々な出逢いを大切にしたいと、意を新たにしました。

 それから、私はホテルを出て、プリンセスストリートに向っていました。
 花時計のある通りの前を横断し< ロイヤル・スコッツマン >に入りました。
 ヨークシャープディングセットなるものを注文し、しばらくして、ウェイトレスが
“ Tea with milk  ” を持って来てくれた時、ケンブリッジで知り合った日本人の
女友達が、偶然、店に入ってきたのです。 お互い目が合うなり、驚嘆の声を発しました。
 何故ならばケンブリッジで別れた日、彼女は 「 明日、ドーバーを渡ってフランスへ
行く。 」 と言っていたのです。

 でも私が、ケンブリッジ在学中、放課後のパブで、彼女としばし語り合った時に
スコットランドへは、ぜひ行くべきであると話していた事が、頭から、離れなかったそうで
急遽、1週間の予定を組んで、訪れてみる事にしたそうなのです。
 そして、経過した一週間の様子を話し出したのです。

 彼女は、スコットランド地方へ入るやいなや、風邪をひいてしまい、39度近い
熱を出したまま、B&B ( Bed and Breakfast=一泊朝食付きの民宿 ) へ転がり込む
ように宿泊させてもらった時、そこのランド・レディが、心根の優しい女性だった
そうで、身内の如く、看病してくれたという事でした。

 旅での病は、とても辛いものです。 一人で絶えなければなりませんし、親切に
してもらう事が一番の薬なのです。 ホームメイドのマフィン、絞りたてのミルク
心のこもった料理、メルヘンティックなカーテンに、ふかふかのカーペット
スプリングの効いたセミダブルベッド、牧歌的な風景がそのまま絵の様に映って
いる大きな窓、そんな部屋に泊めてもらうだけでも幸せなのに、ここまで、面倒を
見て下さったなんて、感激の一言だそうだ。 それで彼女は、一度にスコットランド人の
気質が好きになり、自然も同様に彼女にとっては、忘れがたい思い出となったのです。

 スコットランドに来なかったら、きっと味わえなかったかもしれないと迄
彼女は言っていた。 素晴らしい体験ができ、満足している様でした。
 一時間程話した後、いよいよ彼女が汽車に乗る時刻がせまってきて、店を出る
ことになり、谷底にあるウエィバリー駅に向かい、そして、彼女との日本での再会を
約束して別れる。

 彼女を見送った後、私は改札口を出て、再びプリンセス・ストリートに戻り
公園へと歩いて行った。 その公園は、エディンバラ城が岩山の上にそびえ立ち
その下はなだらかな岩肌の斜面があり、谷底に当たる所が、芝生で埋った広い公園
なのである。 大勢の人達が、そこで日光浴をしながら、アイスクリームを食べたり
本や新聞を読んだり、恋人達が愛を語り合ったり、それぞれの夏の日を送っている。


最新の画像もっと見る