仕方なく部屋へ戻り、スーツケースから財布を取り出し、部屋を後にしました。
何も言わないで立ち去るなんて、随分せっかちな男性だわなんて、独り言を言って
おります。 でも、よくよく考えてみますと、当然のことなのかもしれません。
私は一対、何を期待し、何を考えているのかしらと薄笑いさえ浮かべておりました。
女性一人の部屋に男性を入れること自体、不謹慎そのもの。 勿論、相手がどこの
誰だかということも分からないのに、用事が済めば、いなくなるのは当然と言えば
当然なのです。 しかし、私の心の中では、そんな小さな出逢いでも、何かのつながりを
持とうとして、或いは 「 今から、お茶でもご一緒しませんか? 」 という様な言葉を
期待していたのかもしれません。 軽率だとか、そんな深い意味ではなくて、地元の人達
又は、私と同じ様な旅行者、他国の人達と友人関係になる為には、あらゆる場面で
自分という存在を解ってもらわなければならないのです。
ただ観光気分で名所地を見て、ウットリしお土産を買い、予約されたレストランで
皆と食事をして、帰って行かれる旅行者も沢山いらっしゃいますが、私は、そのような
中身の無い安っぽい旅行にはしたくないと、前々から考えておりました。
勿論、安っぽいというのは、その旅行に対する価値観の問題であって、人によっては
それがベストだと思われる人々もいらっしゃる訳でして、ただ、私くし個人の
意見として、添乗員任せのパック旅行程、つまらない年寄りツアーだと思って
います。 それでも、おばあさんになったら、お世話になるかも知れませんが。
若いうちは、一人及び二、三人と、常に少人数で行動し、できれば知名度の低い
地方を選んで、旅する事に重点を置くと、意義深い旅行として、終わることもあります。
地元の人達しか入らないパブで、お酒を飲んだり、名も知らない通りを歩いて
地図案内にも載っていなかった小さな博物館を発見したり、又その場所で始まる
様々な出逢いを大切にしたいと、意を新たにしました。
それから、私はホテルを出て、プリンセスストリートに向っていました。
花時計のある通りの前を横断し< ロイヤル・スコッツマン >に入りました。
ヨークシャープディングセットなるものを注文し、しばらくして、ウェイトレスが
“ Tea with milk ” を持って来てくれた時、ケンブリッジで知り合った日本人の
女友達が、偶然、店に入ってきたのです。 お互い目が合うなり、驚嘆の声を発しました。
何故ならばケンブリッジで別れた日、彼女は 「 明日、ドーバーを渡ってフランスへ
行く。 」 と言っていたのです。
でも私が、ケンブリッジ在学中、放課後のパブで、彼女としばし語り合った時に
スコットランドへは、ぜひ行くべきであると話していた事が、頭から、離れなかったそうで
急遽、1週間の予定を組んで、訪れてみる事にしたそうなのです。
そして、経過した一週間の様子を話し出したのです。
彼女は、スコットランド地方へ入るやいなや、風邪をひいてしまい、39度近い
熱を出したまま、B&B ( Bed and Breakfast=一泊朝食付きの民宿 ) へ転がり込む
ように宿泊させてもらった時、そこのランド・レディが、心根の優しい女性だった
そうで、身内の如く、看病してくれたという事でした。
旅での病は、とても辛いものです。 一人で絶えなければなりませんし、親切に
してもらう事が一番の薬なのです。 ホームメイドのマフィン、絞りたてのミルク
心のこもった料理、メルヘンティックなカーテンに、ふかふかのカーペット
スプリングの効いたセミダブルベッド、牧歌的な風景がそのまま絵の様に映って
いる大きな窓、そんな部屋に泊めてもらうだけでも幸せなのに、ここまで、面倒を
見て下さったなんて、感激の一言だそうだ。 それで彼女は、一度にスコットランド人の
気質が好きになり、自然も同様に彼女にとっては、忘れがたい思い出となったのです。
スコットランドに来なかったら、きっと味わえなかったかもしれないと迄
彼女は言っていた。 素晴らしい体験ができ、満足している様でした。
一時間程話した後、いよいよ彼女が汽車に乗る時刻がせまってきて、店を出る
ことになり、谷底にあるウエィバリー駅に向かい、そして、彼女との日本での再会を
約束して別れる。
彼女を見送った後、私は改札口を出て、再びプリンセス・ストリートに戻り
公園へと歩いて行った。 その公園は、エディンバラ城が岩山の上にそびえ立ち
その下はなだらかな岩肌の斜面があり、谷底に当たる所が、芝生で埋った広い公園
なのである。 大勢の人達が、そこで日光浴をしながら、アイスクリームを食べたり
本や新聞を読んだり、恋人達が愛を語り合ったり、それぞれの夏の日を送っている。
何も言わないで立ち去るなんて、随分せっかちな男性だわなんて、独り言を言って
おります。 でも、よくよく考えてみますと、当然のことなのかもしれません。
私は一対、何を期待し、何を考えているのかしらと薄笑いさえ浮かべておりました。
女性一人の部屋に男性を入れること自体、不謹慎そのもの。 勿論、相手がどこの
誰だかということも分からないのに、用事が済めば、いなくなるのは当然と言えば
当然なのです。 しかし、私の心の中では、そんな小さな出逢いでも、何かのつながりを
持とうとして、或いは 「 今から、お茶でもご一緒しませんか? 」 という様な言葉を
期待していたのかもしれません。 軽率だとか、そんな深い意味ではなくて、地元の人達
又は、私と同じ様な旅行者、他国の人達と友人関係になる為には、あらゆる場面で
自分という存在を解ってもらわなければならないのです。
ただ観光気分で名所地を見て、ウットリしお土産を買い、予約されたレストランで
皆と食事をして、帰って行かれる旅行者も沢山いらっしゃいますが、私は、そのような
中身の無い安っぽい旅行にはしたくないと、前々から考えておりました。
勿論、安っぽいというのは、その旅行に対する価値観の問題であって、人によっては
それがベストだと思われる人々もいらっしゃる訳でして、ただ、私くし個人の
意見として、添乗員任せのパック旅行程、つまらない年寄りツアーだと思って
います。 それでも、おばあさんになったら、お世話になるかも知れませんが。
若いうちは、一人及び二、三人と、常に少人数で行動し、できれば知名度の低い
地方を選んで、旅する事に重点を置くと、意義深い旅行として、終わることもあります。
地元の人達しか入らないパブで、お酒を飲んだり、名も知らない通りを歩いて
地図案内にも載っていなかった小さな博物館を発見したり、又その場所で始まる
様々な出逢いを大切にしたいと、意を新たにしました。
それから、私はホテルを出て、プリンセスストリートに向っていました。
花時計のある通りの前を横断し< ロイヤル・スコッツマン >に入りました。
ヨークシャープディングセットなるものを注文し、しばらくして、ウェイトレスが
“ Tea with milk ” を持って来てくれた時、ケンブリッジで知り合った日本人の
女友達が、偶然、店に入ってきたのです。 お互い目が合うなり、驚嘆の声を発しました。
何故ならばケンブリッジで別れた日、彼女は 「 明日、ドーバーを渡ってフランスへ
行く。 」 と言っていたのです。
でも私が、ケンブリッジ在学中、放課後のパブで、彼女としばし語り合った時に
スコットランドへは、ぜひ行くべきであると話していた事が、頭から、離れなかったそうで
急遽、1週間の予定を組んで、訪れてみる事にしたそうなのです。
そして、経過した一週間の様子を話し出したのです。
彼女は、スコットランド地方へ入るやいなや、風邪をひいてしまい、39度近い
熱を出したまま、B&B ( Bed and Breakfast=一泊朝食付きの民宿 ) へ転がり込む
ように宿泊させてもらった時、そこのランド・レディが、心根の優しい女性だった
そうで、身内の如く、看病してくれたという事でした。
旅での病は、とても辛いものです。 一人で絶えなければなりませんし、親切に
してもらう事が一番の薬なのです。 ホームメイドのマフィン、絞りたてのミルク
心のこもった料理、メルヘンティックなカーテンに、ふかふかのカーペット
スプリングの効いたセミダブルベッド、牧歌的な風景がそのまま絵の様に映って
いる大きな窓、そんな部屋に泊めてもらうだけでも幸せなのに、ここまで、面倒を
見て下さったなんて、感激の一言だそうだ。 それで彼女は、一度にスコットランド人の
気質が好きになり、自然も同様に彼女にとっては、忘れがたい思い出となったのです。
スコットランドに来なかったら、きっと味わえなかったかもしれないと迄
彼女は言っていた。 素晴らしい体験ができ、満足している様でした。
一時間程話した後、いよいよ彼女が汽車に乗る時刻がせまってきて、店を出る
ことになり、谷底にあるウエィバリー駅に向かい、そして、彼女との日本での再会を
約束して別れる。
彼女を見送った後、私は改札口を出て、再びプリンセス・ストリートに戻り
公園へと歩いて行った。 その公園は、エディンバラ城が岩山の上にそびえ立ち
その下はなだらかな岩肌の斜面があり、谷底に当たる所が、芝生で埋った広い公園
なのである。 大勢の人達が、そこで日光浴をしながら、アイスクリームを食べたり
本や新聞を読んだり、恋人達が愛を語り合ったり、それぞれの夏の日を送っている。