メランコリア

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『二十四時間の侵入者』 眉村卓/著(角川文庫)

2017-06-28 12:07:31 | 
『二十四時間の侵入者』眉村卓/著(角川文庫)
眉村卓/著 カバー/木村光佑(昭和60年初版)

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[カバー裏のあらすじ]

中学校のクラスメート、住野隆一と小沢未代子は、絵画部の写生会へと出かけた。
そのとき突然、どこからともなく気色の悪い少年が現れた。
少年は憎悪にゆがんだ顔立ちで、目を光らせ、まるで妖怪のようだった。

その日から通学途中を襲ったり、教室まで現れるのだった。
やがて、隆一のおじでSF作家の岡本義助もその奇怪な事件に巻き込まれていった……。

同じ頃、日本各地でも同じような被害が相次いで起っていた――。
一体、謎の少年の正体は何者なのか? どこから来るのだろうか?
傑作推理SF、「二十四時間の侵入者」「闇からきた少女」を収録。



これまで古書で買った中で、もっとも見た目が新しい
紙の色も真っ白で、書体までなんだか違って見えるほど
帯もあるし

これまでずっとシミのある、茶色く変色したページで馴染んできて
それが郷愁を誘っていたのだけれども、本書は初めて読むせいもあって
まるで新刊を読んでいる気分になる それでも初版は昭和60年

しがないサラリーマンものを読みつづけていると、学園ものが恋しくなる
毎回、登場人物は中学生の男女で、未来から謎の少年がやって来る・・・みたいな話なんだけど



あらすじ(ネタバレ注意

「二十四時間の侵入者」

中学の入学式が終わり、20日ほど経ち、住野隆一は、絵画部の写生会で学校に行った
クラスメートの小沢未代子も一緒で、裏門のところを描こうと誘われる

そこで15分ほど描いていると、突然、1人の少年が立っていた
整った顔立ちだが、憎しみの表情にゾッとしていると、ふっと消えた

ミヨコ「あの人、何もない所から急に現れたわ」


隆一の叔父(母の弟)でSF作家の岡本義助が突然やって来た
アパートが見つかるまでしばらく置いてくれという

紺原玲というペンネームで小説を書いていたら、会社に知られて、辞めてきた
怒る母に、父は「いいさ 人生至るところに青山ありだ」


月曜は雨 隆一は登校中に、また謎の少年に襲われ、急にいなくなった
近くにミヨコが倒れていた「あの子が襲いかかってきたのよ」
だが、話を聞くと、隆一を襲って泥に倒れた少年が、離れた所にいたサヨコを同時に押し倒したとは思えない
「泥どころか、全然濡れてなかったわ」

数学の授業を受けていると、そこにも少年が憎悪の顔で立っていたが、廊下に走り姿が消えた

隆一はミヨコに叔父を紹介し、事情を話そうとしていたところにも少年は現れた
今度は刃物のようなものを持っている しかも瓜二つのもう1人と一緒だった
彼は金属棒を持っている そこにクラスメートが下校してきた
すると少年たちは消え、みんなもそれを目撃した


叔父は、インクを買いに行くついでに、いろいろ調べて戻った
同じような事件があちこちでたくさん起きているという
どれも地方の小事件として片付けられていたが、同じ人相で、エスカレートしたから
知り合いの記者も調べているところだった


その夜半 学校で火事騒ぎが起きた
行くと、消防士や警察もいて、放火犯の少年たちがたてこもっているという
さらに人数が増えて、光る円筒のような武器を持って走り回り、警官たちにまでぶつかって来た

叔父
「ひょっとしたら、彼らは声を出す能力がないんじゃないのか?
 それに、どこかから指令を受けて、その通りにしか動けないんだ」


少年たちは消失してしまう


新聞が大きく事件を報道したせいで、隆一の母もやっと信じるようになった
自分の肉親より、新聞やテレビを信じる習慣があるのだろう(そうそう

叔父は取材を受け、記事にされていた
「彼らはこの世界の住人ではないかもしれない」

叔父はSF作家という職業上、現実問題に関しては常識的な態度をとろうとしているのを隆一はよく知っている


教室が大幅に変更され、授業は再開したが、また校庭に少年たちは現れた
今度は50人ずつほどの列を組んで、2500人ほどはいる

朝礼台には、昆虫に似た足がいくつかついている金属の箱がある
そこからチカチカとまたたいたと思うと、少年たちは一斉に散開し学校に攻め込んできた
棒から白い煙が噴出し、生徒も教師も倒れた

「あの連中、学校を占領するつもりなんだわ!」

「やっつけろ!」隆一は、気づかないうちに、これまでの怒りをぶつけて叫んでいた

少年たちは、四つん這いに走り、ふいに消えたり現れたりする

「教室に戻って、あいつらを防ぐんだ!」

クラスメートは団結してバリケードを組んだ
煙で倒れた教師は意識を失っているだけのようだ

「抵抗ハ、ヤメナサイ」

どこか金属的な声が、校内放送用スピーカーから流れた

「ワレワレノ作ッタ人間ヲ中にイレルノダ
 イマ、イウトオリニスレバ、悪イヨウニハシナイ
 マダ抵抗スレバ、直接送リコム」


教室には10人ほどの少年たちが出現した

大混乱の中、隆一は気づかないうちにミヨコの腕を引いて逃げていた
このことを他の人々に知らせなければ

少年たちは、隊列を組んで、学校の外に出るのが見えた
学校を拠点にして、大通りの男女、子どもまでを襲い、今度は街が大混乱となった

隆一らは警察署に行くが、そこも煙がもうもうと吐き出されている
路地裏に逃げ込むと、空から声がした

「オマエタチノ時代ハ終ワッタ イマカラ、ワレワレノ指令ドオリニ行動セネバナラナイ」

ミヨコは「私、家に帰るわ!」と言ったが、2人も煙で意識が遠のくのを感じた


気づくと屋内体育館に、叔父もその他の人々も捕らわれている
ミヨコ「ここは捕虜収容所らしいわ」

叔父
「あれは麻酔ガスの一種らしいな 元気になった人々は、どんどん外に連れていかれている
 奴らは、もっと大規模な計画を推し進めているんだ」

人間ノ時代ハ終ワッタ コレカラハ、発達シタワレワレ機械ガコノ地球ノ主人ニナルノダ
 ワレワレノ世界ハ機械一族ノ手デ開発サレツクシテ、資源ガナクナリカケテイル
 シカシ、ココニハ、マダ残ッテイル オマエタチニハノウリョクガナイカラダ
 ダカラ、コチラノ次元のセカイヲ支配スルノダ」


叔父「あの少年たちは機械にコントロールされている 機械さえやっつければ」

そこまで言って、3人も捕まる
校庭には直径10mほどの円盤が着地し、朝礼台の機械は、人々を家畜の育ち具合をみるようにチェックしてから
隅に連れていくと、グループごとに消えてしまった

隆一の列もだんだん朝礼台に近づいていく
突然、叔父が「ランプの下の足をやるんだ! あれがアンテナに違いない!」

隆一は夢中でタックルし、機械の箱の足が1本切れると、ガチャン!という音とともに動かなくなった
少年たちはバタバタ倒れ、消えた人々は何もない空間から戻ってきた


隆一の意識が戻ると、ミエコは説明した
叔父は、他の地区に連絡をとり、奴らの弱点を教えて回った

ミヨコ「もう、夜が明けるのね まだ、4日目ね」

今度の事件が起きてからたった3日しかたっていない
常識は、こんなにもあっけなくひっくり返るものなのか


その後、学者らは、少年たちの体、円盤、機械の残骸を調べたが
地球上の科学とまるで違う原理で作られているらしく成果を上げていない

機械を作って支配する機械の高等生命体だという学者もいた
一度消えた人々も、その間は気絶していて何も覚えていない


ミヨコ「紺原玲氏、あれからすっかり売れっ子になったわね」

叔父は、新居を見つけて、明日は引越し ミヨコも手伝うと言う
世の中が何もかも変わっても、ミヨコだけはちっとも変わらないな、と隆一は思った




「闇からきた少女」

池上陽介は、親友の長原克雄に
「この団地は、昔、旧制高校だったけど、いろんな妙な話があったらしいぜ
 気をつけて帰れよ こんな晩は何か出るかもしれない」
とからかった

明日は中学の入学式だが、遅くまで話していて、克雄は後悔しはじめた
その時、後ろから尾けてくる足音がして、「こんばんわ」と声をかけられた

知らない少女だ 長い黒い髪で、彫刻のように整った顔立ちの美少女

「私は大森由美子 この団地へ引っ越してきたの お友だちになってね 明日から同じ中学生よ」


同じクラスの陽介と克雄の隣りの席は、気の強い目黒和子という女生徒で
初日から教師に怒られ、ケンカ状態になってしまう

クラブの入部勧誘では、陽介は野球部、克雄は卓球部に決めていた
卓球部の受付希望者名に和子の名前があって驚き、ため息をつく克雄
結局、由美子の姿はどこにも見えなかった


自宅に帰り、母に八百屋への用事を頼まれた帰り、エレベーターは故障していて
階段で7階まで行こうとすると、数字のランプが点灯した
直ったのだろうか? 乗ると、そこには由美子がいた

「722号の住み心地、どう?」

なぜ知っているのか、由美子は訳を聞く前に行ってしまった


家に帰ると、社会人になった姉が
「深夜、長い髪の少女が歩いているという話よ 砂場に来たら、ふっと消えたんですって」


翌日の卓球部で、和子はものすごい活躍を見せた
「すごい新人の出現ね」

克雄の番が来て、2人は互角に戦い、克雄が勝った
「君たち2人ともなかなかやるじゃないか」

3年生
来月は、鈴虫中学との親善試合がある 新人戦もあり、選手の選抜には
 実力だけでなく、練習の態度、真面目に出てくるかも評価して決めるつもりだ」

陽介も野球部で絞られているようだ

和子「どうやら私、あなたたちを誤解していたらしいわ」 その日から3人は和解する


克雄と同じ方向の帰り道の和子は「この団地、おばけが出るって本当なの?」と話していたちょうどその時、由美子が現れて、和子の顔は真っ青になった
克雄は2人を紹介する

妖怪なんてこの文明の時代に存在しているわけがないんだ
けれども、由美子の服は奇妙な生地で、この世のものとは思えない衣装だ

そこに姉・靖子も来て、やはり恐怖に動けなくなった
由美子「そのうち・・・間違いなく、あなたを私の所へ連れて行くわよ」
と言い残して、不意に見えなくなった


克雄は、由美子のことをみんなに最初から話した


和子「昨日のこと、パパとママに話したら、タイムトラベラーみたいだなっていうのよ」

廊下には、寂しげに、そしてどことなくうらめしげに克雄を見ている由美子がいた
そして、たちまち消えた


克雄と和子は親善試合の選手に選ばれた 試合は明日
克雄の姉が有名な選手だと知り、一緒に練習したいという和子

3人が帰り道で分かれてすぐ、由美子が現れ「来るのよ 私のところへ」
「長原!」陽介が叫んだが、周りの風景が揺れはじめ、消えた


気づくと、もとの団地にいる だが、どこか違う
木々が荒々しく、建物はひどく汚れている
建てられてまだ5年のはずなのに、まるで何十年以上も経ったようだ

砂場がなく、5mほどの高さのパラボラアンテナのようなものをつけた建物があった
それに、団地には人っ子ひとりいない

由美子の手を離して、逃げようとするとエレベーターがない
自分の家のドアを開けると、家の中はからっぽだった

「だれだね? 由美子か?」

由美子と同じような衣装をまとった青年がぎょっとして立っていた
武器のようなものを振り上げたので、克雄は逃げた

団地から外を見ると、団地は高い金網のような塀で仕切られて
その向こうは恐ろしく高いビル群が、チューブのようなものでつながっている
いわゆる未来の想像図のようだ

(いまだに、高層ビル+チューブの中を移動する乗り物の未来イメージが映画でも普通になってるけど
 ほんとうに科学が発達した未来なら、むしろ自然を大切にしていると思うなあ

1階のフロアに大型の撮影機に脚がついたような機械が現れ、こっちにやって来る
逃げようとして、棒の先が激しく震え、体がしびれて動けなくなった


由美子「大丈夫? 兄さんがあんなに早く監視機を呼ぶなんて・・・」


「僕は生活学者で、初期の団地の生活を調べるために、この特別保存地区で
 タイムマシンを使って研究している まさか妹がこんなイタズラをしてるとは知らなかった」


「イタズラじゃないわ!」

「過去の人たちは我々のように自由な生活を送ってはいないんだぞ!
 タイムマシンを使うにはいろんな規則があって、いったん未来を知った人間は
 過去へ戻って歴史を変えようとする恐れがあるため、君は二度と元の世界に戻るわけにはいかないんだよ


克雄は外に逃げ出すと、団地の屋上だった

「僕はこれから、君と由美子を管理委員会へ、エアタクシーで連れて行かなければならない」

由美子は、兄のポケットから小さな箱を抜き出し、兄に向けた

「あの監視機は、1、2時間しびれさせるだけよ
 さあ、タイムマシンに戻りましょう 好きな時代、100年以上の過去しか行けないけど
 今度は行きっぱなしになるわ 2人きりでどんな時代へも行けるのよ ほかの時代へ行かない?

克雄は、家族や友人を捨てられなかった

「私、はじめはイタズラのつもりだった 昔の人を脅かして遊ぼうと思ったの
 でも、そのうちにだんだん長原さんが・・・
 私、あなたの時代へ行きっぱなしになるのよ 一人ぼっちにしないでね
 あなたは、ここで過ごした時間だけいなかったことになるわ」


克雄らが元に戻ると、すぐに家族、友人らが駆けつけてきた
由美子の目は何とか言ってと訴えていた

克雄の家で事情を話す

母「あなたはもとの世界に戻れないわけ?」

由美子
「兄が管理委員を連れて来れば別ですけれど そうなれば、私と長原さんは連れて行かれ
 長原さんは一生こちらへ帰れないし、私も罰せられます」



陽介らが帰ろうとすると、砂場には由美子の兄と、同じ服を着た男たちがいるのを見た
もうつきとめたのだろうか?


翌朝 とにかく克雄と和子は試合に出ることにした
和子の様子が少し変だったが、なにか怒っているのだろうか?

試合では和子は見事な勝利をあげた
男子は、互角で同点のまま克雄の番がきた

ふと見ると、和子の後ろに、由美子の兄がいて、2人は話し合っている
それが気になって、克雄は連続で5ポイントも落としてしまう

(考えちゃいけない 今は試合に全力を注ぐんだ)

それから克雄は連続でポイントを取り続けていった
名選手が絶好調の時に感じるあの透明な感覚が全身にみなぎっていた(ゾーンに入ったってやつだねv

新人戦は男女ともに勝った

由美子の兄に呼ばれて、逃げようとした克雄は和子に呼び止められた
「もう安全なのよ」

和子は、靖子、母、由美子も呼んでいた


「僕は委員会に報告した 君は歴史を変えるほど詳しく知ったわけではないから
 条件付きでここに留まることを認めたんだ

 その条件は、君がこの世界で大切な人間で、君がいなくなれば困る人がたくさんいること
 だから僕は君の周りを調べた結果、君はこの世界で有用な人間だと分かった
 でも、由美子は戻らなければならない」

克雄「待ってください この人を連れて行かせないぞ!」
克雄は由美子を好きになっていた

「君の気持ちは分からないでもない だが、もし君が明治時代で一生暮らせる自信があるかね?
 テレビどころか、電燈がようやく一般家庭にゆき渡りはじめて、伝染病が流行した時代の
 ものの考え方になりきれるかね? 由美子も耐えられないだろう そうなってからでは遅いのだ
 自分ばかりか、周りの人まで不幸にしてしまう」

由美子
「私も、昨夜から今日にかけて感じ続けていたの
 この世界では1人を独占することはできないし・・・長原さんにはいいお友だちがいるわ」

「さよなら」と言って、兄妹の姿はみるみるかすんで、あとには茂みが残った


その後の生活で忘れていた由美子のことが、砂場を見て思い出された

陽介「彼女はもう二度と現れはしない それでいいじゃないか」

そう 由美子はもうこの世界には存在しない
克雄は1号棟に歩きはじめた





【武上純希解説 内容抜粋メモ】

(やけにハイテンションな解説で可笑しかった
 ウィキを見たら、『もやしもん』の脚本まで書いてる有名な方なのですね/驚→here

昔々、SFが「空想科学冒険小説」という肩書きで、月刊少年マンガ誌を華々しく飾っていたことを知っているかな?
いつかスマートな「サイエンス・フィクション」と呼ばれた

本書には、あの頃の元気いっぱいのSFの空気が充満していて嬉しくて仕方ないんだ
教科書じゃこんな経験できっこないもん
君は教科書で「ワクハラ体験」してるって!? それ病気 すぐドクターにみてもらったほうがいい!!

あの頃のほうが、SFを取り巻く状況はずっと厳しかった

良識ある一般市民は「SF」なんて妖しげな名称は知らなかった
都民の数%が「空想科学冒険小説」のことかな?と反応してくれるぐらいさ
「空想科学冒険小説」=子どものオモチャという構図

だから本書でも叔父が「会社勤めをしながら“奇妙な”小説を書いている」とくる
これはもう、パンダと同じく珍しい存在なんだ

あの頃の本屋は、SFの本を、SMの本と並べておいてあったんだ 信じられる、このセンス!?

本書を読むと映像が浮かぶ この圧倒的スピード感は・・・『ジョーズ』や『未知との遭遇』に共通する快感だ!!

そうさ、君らにこそ、もっともふさわしい元気なんだ!!



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