メランコリア

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10代のメンタルヘルス9『喪失感』(大月書店)

2012-12-31 18:36:40 | 
10代のメンタルヘルス9『喪失感』(大月書店)
アイリーン・キューン/著 上田勢子/訳 汐見稔幸・田中千穂子/監修

3『うつ病』4『パニック障害』と紹介して、今回は9巻目。
これもまたリンクする箇所も多々あって勉強になった。
こうゆうメンタルヘルスの知識が日本でももっと幼い頃から大人に至るまで理解が深まれば、
ずぅっと暮らしやすくなるのになあ。

という思いもあって、また長くなってしまったけれども、以下に抜粋をメモした。

【内容の抜粋メモ】

喪失とは
死を思い浮かべる人が多いが、大小さまざまな喪失が誰にでもある。
※毎日、なんらかの喪失が起きている。

喪失の2つの側面
1.出来事としての喪失
身近な人やペットの死、友だちに「あなたの服装は変ね」と言われたり(あるある
引越し、恋人や友人との別れ、失業など
一時的であっても気分が悪くなり、相手に対する愛情や尊敬の気持ちを失う。

2.喪失感の強さ、どれほど辛いかという度合い、同じ出来事でも感じる辛さは人によって違う。

喪失は空虚感を伴う
悲しみは、怒り、自分や相手を責める気持ちに変わることがある。
反面、どんな喪失も何か新しいものをもたらす機会を運んでくる。喪失経験は変化をもたらす。

『易経(えききょう)』は「変化の本」とも呼ばれ、生活の中の変化を理解するための本。
 「人生には相反する力の陰と陽があって、この2つの力が絶えず入れ替わっている」
陰が生活を長く支配したあとには、陽に変わる。喪失もいずれは変化することを意味している

アメリカには「人はハッピーエンドの御伽噺のように幸せに暮らさなくてはならない」という思い込みがある。
喪失は、きちんと受け止めれば成長をもたらす。

喪失が起こったら
はじめにショックを受け罪の意識、責める気持ち、恐れ、寂しさ、悲しみを感じる
大きな喪失には、回避→向き合い→受け入れるという3つの段階がある。

心の準備があれば喪失を受け入れやすくなる。だが、突然の喪失もある。
10~24歳までの死因の第1位は交通事故、15~24歳までの第2位の死因は殺人、第3位は自殺/驚
予期した喪失と、突然の喪失では、残された者の感情に差が出る。

ショックとは
突然大切なものを失うと「信じられない」という気持ちになる状態が第一の反応。
すべてがぼんやり見えたり、なにをするのも困難なマヒ状態。
身体が辛いニュースにゆっくり対応するために起こる。身体は少しずつしか痛みを通すことができない。

反応は人によって違う
泣き叫ぶ、静かになる、考えまいとして忙しくする、何年もたってからやっと心の痛みを出せる人もいる。

悲哀の感情
長く続く喪失感、悲しみ、空虚感を総称して「悲哀の感情」と呼ぶ。

【悲哀の感情のサイン例】
・間違いをする。
・元気がない。ヤル気や興味がなくなる
・人生に対する見通しが暗くなる。希望がもてない。投げやりな気分になる。
・気分が変わりやすい。
・悪夢を見る
・集中力がなくなり、失ったもの以外のことを考えられなくなる。
・食欲がなくなったり、逆に食べ過ぎたりする

悲哀の作業の3段階
悲哀の感情に対処することを「悲哀の作業」という。
1.回避
事実を否定、悪い夢だと思い込む。気持ちが混乱して「どうしてなんだろう?」と疑問ばかりふくらむ。

2.向き合い
苦痛はもっとも大きくなることがある。
痛みは辛いが喪失の現実に立ち向かわせてくれる。痛みが走るたび一歩ずつ悲哀の感情の中を前進してゆく
まだ気持ちは混乱し、理由のない怒りや、恐怖、悲しみ、見捨てられた感じがすることがある。

3.受け入れ
昔に戻ることはできないが、喪失を受け入れることはできる。少しずつ、また生きていこうという気持ちになる。
受け入れはゆっくりとした段階で何年もかかることがある。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)
喪失は自尊感情に影響を与え、PTSDの原因になることもある。喪失感を無視すると、将来大きな問題になることがある

さまざまな喪失
身体的、感情的、心理的な虐待も喪失感を生み出す。「わたしなんてゴミみたいに思われているんだ」など。
喪失の悲しみにある人は宗教にひかれたり、逆に信じてきたものに対して怒りをもつこともある。
自分にとっては大きな喪失が、ほかの人にとってはそうでもないことがある。
大切なのは、喪失について自分がどう感じるか。

自尊感情への影響
悲しみから逃げようとする人は、大したことではないと振る舞ったり、1日中テレビを観たりする
「もう忘れなさい」などと言われると、自分の悲しみを表現してはいけないんだと思うようになる。
悲しみから目をそらす自分が価値のないものに思え、自尊感情が低くなる
うつに進むと、もうすべてがどうでもよく思えてくる。

多くのものを失うと、失望感に慣れてしまったり、「自分には良いことなど起きるはずがない」と思い込む。
楽しんだり、創造したり、愛したり愛されたりすることもなくなる
ほかの人のことを気にしなくなり、自分の人生さえ投げやりになる。
歳をとると、喪失の経験も増える。経験を積むことで小さな喪失に対して冷静に対応できる。

苦痛は身体にひそんでたまってゆく特別のカウンセリングが必要になる
対処法は主に育った環境によって違う。子どもは周囲の大人を真似して感情の処理の仕方を覚える。
喪失は、前向きに効果的に悲しむ方法を学べば一生役に立つ。

喪失を解き放つ
喪失感は受け入れないと奥深いところに隠れてしまい、かえって強くなる。
喪失の思い出を解き放つことで、人生の変化を受け入れる余裕が生まれ、健康的で幸せな生活に結びつく。
まず、「喪失は生活の一部だ」と理解することから始める。
早くよい気分になろうと焦らない。新たな人間関係をつくろうとしたり、これまでの人間関係を壊したりetc.
大きな喪失から6ヶ月~1年以内に大きな決断をしないようする。
喪失感に対処している間は、よく食べ、水分を多めにとり、適度な運動をし、充分な睡眠をとる

喪の作業(悲しみを癒す)
心にあいた穴は、次第に新しい気分や役立つ考えで埋まっていく。
自分を塀で囲んで閉じこもらない。自身のペースで行うとよい。
新しいことを始めるのはやめて、毎日のスケジュールを簡単にする。

【水に映る影】
喪失の悲しみを解き放つ儀式的方法。
リラックスできる場所で、ラクな姿勢で座り、深呼吸。
暑い夏のプールか池を思い浮かべ、水面を見る。
そこに映る自分の顔を想像する。どんな表情か?その向こうにある思い出や感情について考える。
自分の姿にそっと水をかけ「この悲しみを解き放とうね」と声をかけ、何度か繰り返す。
悲しみと痛みが身体から離れていくのを感じる。「さあ、喜びを受け入れる準備ができたね」と自分に言う。

2.毎日15~20分ずつ日記をつける。気持ちを整理する助けになる。
3.これまでの喪失を3つに分けて記録する。
①大きな喪失・小さな喪失
②喪失のできごと
③喪失後の変化

その他の方法。
音楽を聴く、読書、運動、瞑想、楽しいことをするなど

「悲しみを癒す作業は、その人に必要なだけ時間がかかる」

自尊感情
自尊感情が低いと乗り越えるのが困難になる。自尊感情を失うことはもっともプライベートな喪失
他人からの批判は致命的。1回ずつは小さくても何度も繰り返していると自分の価値がどんどん低く思えてくる
自尊感情のある・なしは、その人の考え方や行動のすべてに影響をおよぼす。

否定的なひとりごとをうち消す
前向きなメッセージを言葉にして、自分に対する否定的な気持ちを打ち消すことができる。
「もうあきらめよう」と思ったら「自分はいい人間だ」「きっとやれるさ」と自分に言い聞かせる。
繰り返すうちに自尊感情も高まり「もう小さな損失はなんでもない」と思える。

喪失の逆戻り
喪失の苦痛は何年もたってから戻ってくることがある。
これは悲しみを癒す作業の復習のようなもの。忍耐力を持って耐えるためでもある。
人はしばしば悲しみに身を任せてしまうので、なかなか癒されない
喪失のストレスや悲しみから、心身が病気になることがある。
喪失を癒すのはハイキングと同じで、忍耐、強さが必要。そして急いではいけない。
苦痛がすっかりなくなることはないかもしれないが、苦痛を抱えて生きていくことは学べる。
自分にいいと思う道をいろいろな道から選ぶ。

悲哀の作業がうまくすすまない場合
否定的な感情を無視していると、頭痛、腹痛、風邪をひくなど、身体がリアクションを起こす。
悲哀の感情を閉じ込めることでストレスを抱え、心臓病、高血圧、がんになることもある。

援助
友だちや家族は身近な援助 カウンセラー、ソーシャルワーカー、地域の世話役の人と話をするだけでも癒される。
カウンセラーを探す時は、信頼している人に紹介してもらう(これが難しいんだよ
※日本には喪失専門のサポートグループはあまりない。

カウンセラーを選ぶポイント
・よく話を聞いてくれたか?
・初めて会った時、リラックスできたか?
・ありのままを受け入れてくれるか、それとも自分を変えようとしているか?

喪失感を抱える人を支えるには
支えるには勇気と広い心が必要。一時的な失礼な態度やいじわるな言葉を見逃す覚悟を持つこと。

1.よい聞き手になること。共感を持って話を聞く。
自分にも同じことがおきたとして想像してみる。

2.「言葉の探偵」になる
友人の親が離婚した場合、関係ない話をしはじめたら、自分の本当の気持ちを回避しているというヒントになる。

3.日記はよい贈りもの

【その他の手助けの方法例】
・必要な時にそばにいる。
・聞かれた時以外は助言を控える。
・必要な時は、1人にしてあげる。


【あとがきの抜粋】
本書は『Grief and Loss』シリーズの1冊を和訳したもの。
喪失とは、すでに対象そのものはなくなっているのに、
心の世界ではまだそれに対する憧れやこだわりが残っているため、
ないものへ心のエネルギーを向けつづけるという無理が生じる。
憧れつづけても報いられない心の営みが苦痛を呼ぶ。

苦痛から解放されるには、その対象に対する憧れやこだわりを断念し、
心のエネルギーがそちらに向かわないようにするしかない。
恨んだり、こだわりつづければ、自分が苦しくなるだけ。
断念することは簡単ではないから、それなりの時間と作法が必要。
それが「悲哀の作業」と「喪の作業」。

日本も3人に1人は離婚する割合になっているから、
喪失の問題はけしてマイナーではなく、誰もが体験するメジャーな問題といえる時代になっている。


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