◆田舎なればなのさ◆ ３３７３

 『よう茂さん、何処に行くね？、建築現場に襖６枚と障子戸８枚を納めに？、珍しいな襖や障子を入れる建築かね？、ハハハハ。やっとお盆を送って平生の日課に開放されて、あとは秋彼岸が直ぐだが、彼岸は墓参だけだから。そうこうするうちに、涼風が立てば正月の足音が聞こえるよ、ハハハハ。夏の疲れを癒しに温泉にでも出かけたいが、もう遊び納めにしないとだ』

『おや、翁さん、買い物をしながら、奥さんを病院に迎えに？。翁さん、通院には町の生活サポート事業に登録のＮＰＯ法人の移送制度を活用したらどうだね、ハハハハ。建具は泰さん棟梁の建築現場、一応日本建築仕様だそうで、都内に住む人が田舎暮らしをするために農地も借りたらしいよ。この仕事を最後に現役を引退するわ、手が震えるし眼がショボショボしては、良い仕事が出来ない』

  ＝＝＝＝＝＝＝＝＝

『婆さんの介護については、ケアマネといろいろと相談はしていて、既に切り替えを始めているわ、俺もまだ頑張れるから、ギャハハハ。だんだん建具職人も匠がいなくなって、素晴らしい技量が消えてしまうよ。人生の楽園なんてテレビ番組を見て、田舎暮らしに憧れるようだが、田舎暮らしには地域、地域で生活の文化があるから、それに馴染めるか否かが面白さの分かれ道だろうよ』

『それならいいが、自分の年齢も考えないと、頑張る気持だけでは続かないよ、ハハハハ。田舎暮らしはそうだろうな、翁さんも疎開っ子で始めは暮らしに馴染めなかった。そして高校を出て勤労大学生、２０年ほどの都会暮らしで空白があったが、今では歴とした田舎者だよ、ギャハハハ。さてと、現場まで１時間かな、お昼は棟梁が老舗でウナギをご馳走してくれるそうで楽しみだ』

  ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あとがき＝＝「明日は明日の風が吹く」、この頃はそんな心境だな、穏やかな風がだよ、ガハハハ＝＝放念の翁