NPO法人自然ふれあいくらぶ会員記

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寄生するミツバチ(ケープミツバチのこと)

2007-12-02 17:58:08 | Weblog
ちょっと面白いなと感じつつ、H.P.のニュースクリップの趣旨とも若干それる話題なので、扱わなかったのだが、オーストラリアの公共放送ABCのウェブサイトでこんなタイトルの記事を見つけた。
Guerilla bees cheat their way to royalty(ゲリラミツバチは女王に成りすます)11月30日付。
内容はというとシドニー大学の研究者がケープミツバチの7つのコロニーから生まれた39個体の新女王蜂の遺伝子を調べたところ、そのうちの半数以上、23個体は働き蜂が生んだ子供だったというもので、さらにこれらのうち8個体はその巣の働き蜂の子供だったが、残りは別の巣の働き蜂が産み落とした子供だったことが判明したという。
毎度このブログでは私の無知ぶりを曝け出しているが、寄生するミツバチがいることを知らなかった。それで調べてみたら、ミツバチの一亜種であるケープミツバチの働き蜂は、高地性の別亜種アフリカミツバチの巣に侵入して女王を排除して、その巣に寄生、繁殖するそうだ。
なぜそんなことが可能かというと、この働き蜂は女王蜂のフェロモンに似た物質を発して、侵入者としての存在を隠すことができる。その上、単為生殖でメスを産むことが可能という、特異な性質をもっているからだという。
ざっとおさらいしておくと、普通のミツバチの働き蜂は女王蜂から与えられる女王物質を摂取することで、卵巣が未発達となり、産卵はできない。一方、女王蜂は産卵することに形態が特化してしまい、自活不可能。働き蜂は自分たちの子孫を残す代わりに自分たちの後から生まれる妹(新女王)と弟のために働く。
ミツバチのメスの遺伝子は2倍体で、オスは半数体なので、働き蜂と新女王の血縁度は3/4となり2倍体同士で高配する場合(血縁度1/2)より高くなる。自分の子孫を残さずとも、より多くの妹を残すことで自分と共通する遺伝子を効率的に残すことができるから、こうした社会性は進化したのではないかというのがハミルトンの血縁選択説だった。
ケープミツバチも他のミツバチの亜種だから基本的には同じルールで繁殖するのだろうが、なぜか一部の働き蜂にこの利他的行動を強制する遺伝子の束縛から解かれた個体が発生して、女王に成りすまして子を生むことができる。
それで、この記事ではこうした能力からケープミツバチはthelytoky(産雌性単為生殖)遺伝子を有する系統としている。働き蜂から生まれたメスは単為生殖だから親のクローンということになる。それでその行く末はというと、とても複雑なので、ここでは言及しない。ある研究によるとケープミツバチは産雌性単為生殖だけでなく産雌雄性単為生殖も可能だとすることもあって、その上このクローンには有性生殖の機能が備わっている場合があるとか、さらにややこしい。
ちょっと古いので、最新知見では事情が変わっているのかも知れないが、参考になったもの↓。
『謎深いケープミツバチ Apis mellifera capensis (2001) Honny bee Science』http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/academy/69-2460.pdf
話はそれるが、この報文によると、ケープミツバチの働き蜂の産卵数は50個/日と一般の女王蜂(1500個/日)よりずっと少ないので、寄生されたコロニーでは働き蜂の数が減少してコロニーが崩壊してしまうという。アフリカではアフリカミツバチを使った養蜂業者の間で被害が出ているらしい。
去年だったか、北米で原因不明のミツバチのコロニー消失と言う現象が各地で起きて、養蜂家に大打撃を与えたと言うニュースがあったのを思い出す。あれは繁殖能力を阻害するダニが高温で大発生したからでは?とか推測されながら、結局どうだったのだろう...。まさか、これ?
と、前置き、脱線長くなりすぎ。
要するにこれまではケープミツバチの働き蜂はアフリカミツバチの巣に寄生するとされていたのだが、同亜種内でも同じことが繰り広げられていたということが新事実。
これっておさらいしたハミルトン説に反して、適応度を効率的に上げる機能が阻害されているわけだから、すごく不思議なことではないかと思う。
普通の社会性ハナバチやスズメバチでは女王喪失という事態が巣内で起こると、それまで繁殖能力を抑制されていた働き蜂が産卵を始めることはある。その場合生まれる子供は無精卵なので全てオスになる。このオスに生殖能力があれば、働き蜂でも子孫を残すことは可能だ。適応度を維持するためにそれなりの意味がある。
これに対して働き蜂が働き蜂を産むことにどんなメリットがあるのだろう。このクローンは女王蜂のように振舞うと言っても、所詮働き蜂だから生殖能力はないはず。上記報文によれば、生殖能力を備える場合があるというのでそれなら意味もあるのだが。
今回、この新事実を発見した研究者もなんでそんなことをすき好んでするのか分からないと言っている。
「コロニーとして機能しているうちは、だれもが利己的に行動することで、かろうじて混乱が抑制された状態にある」と言うのだけれど、無関係の侵入者は寄生したコロニーの機能を維持することには無頓着らしい。
なんだか蜂の話じゃないように聞こえてきた。
ともかくこの話、私としては多女王でコロニーを創設するハチと単独で創設するハチの社会性進化の話とも関わりありそうで久しぶりに進化論する機会になった。 by イノウエ
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