「日々これせっせとお薬作り」 -製薬会社新米研究員SIUの日常-

新薬の研究に営む毎日・・・のはず。製薬会社研究職の日常をつたない文章でつづります。

しばらく更新中止

2006年10月29日 | 非製薬ネタ
家庭の事情でしばらく実家に帰らなければ
ならなくなりましたので、ネットにつなげません。

「実家に帰らせていただきます(怒)」とかじゃ無いですよ
だいたい独り者ですし、誤解なきように(笑)

たぶん一週間くらいで更新できるようになると思います…
ちょうど皆さんと盛り上がってきたところなだけに残念です。
しばらくご容赦のほど、お願いいたします。

創薬ターゲットの選定法2

2006年10月28日 | 製薬研究職を目指す人向け
どのように創薬ターゲットを選ぶか?非常に難しい問題です。
プロジェクトが始まると膨大な資金・人材をつぎ込むことからも
ある意味ではここが製薬会社の運命を決める、といっても過言ではないかもしれません。

選んだターゲットによって「確からしさ」がいくつかあります。

まず臨床試験にそのターゲットを狙った化合物が乗っているか否か?
臨床にのっているなら(特にPhIIb以降)、有効である可能性が高いです。
他社の化合物がPhIIb以降まで進んでいるということは
人での有効性が認められている(可能性が高い)ということから
新規テーマ立ち上げ時の社内プレゼンで「ヒトでのPOC*が取れている」と言っても
クレームをつけられる可能性は低いでしょう

前臨床の段階、もしくは手をつけている会社が(表面上)ない場合なら
そのターゲットが本当に有効かどうかを自分(自社)で確認する必要があり
そのためには特異的な化合物が存在しているかどうかが難易度の高低を決めます。
なぜなら特異的な化合物がないと検証試験が組めないためです。

もし他社が手をつけてないターゲットの
(自社で見つけたターゲット、論文・学会発表があったばかりのターゲットなど)
創薬を目指す場合には自社のライブラリーからリード化合物となりえる
ものを見つけ出すことから始まります。コレが先日書いた
「わかりやすく理想的なスクリーニングフロー(薬理編)」の中の
「1 st screening:in vitro assay(cell freeの系:できればHTSで回したい)」

なるわけです。

続きは次回以降…

<補足>
POC
(「ぴーおーしー」と読む)
proof of conceptの略
直訳で「コンセプトの証明」
たとえば創薬の現場で「POCが取れている」と言う時は
「ターゲット(もしくは化合物の)の有効性が証明が出来ている」という意味
たいてい「ヒトに対する有効性」に対していう事が多い。

武田薬品の研究所が藤沢市に移転

2006年10月26日 | 製薬業界トレンド
そこそこホットトピックス。
武田薬品の研究所が移転です。つまり将来的には
今研究所がある場所からなくなってしまいます。

武田の公式リリースを転載(http://www.takeda.co.jp/press/06102501j.htm)
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2006年10月25日
武田薬品工業株式会社

「新研究所」の開設について

当社は、このほど大阪府大阪市および茨城県つくば市に保有する研究機能を統合し、2010年度稼動を
目標として、神奈川県藤沢市に「新研究所」を開設することを決定いたしました。

(中略)

これを促進するために、現在、大阪市十三地区とつくば市に分散している創薬研究機能を藤沢市に統
合・再編成することで、国内研究拠点の一元化を図り、社内外・国内外の研究機関や研究者にとって
魅力ある、活力に溢れた、ダイナミックな研究体制を構築し、世界トップレベルの創薬研究を実現し
てまいります。

新研究所の開設、機能の移転など、詳細につきましては、今後検討してまいりますが、県・市当局、
地域住民の皆さまをはじめ関係各位のご協力とご支援をお願いするものであります。

研究機能の強化を基盤として、当社は「06-10中期計画」を完遂し、「優れた医薬品の創出を通じて
人々の健康と医療の未来に貢献する」という経営理念を実現することによって、当社と関わりを持つ
あらゆる皆さまとともに成長する会社を目指してまいります。
以上
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神奈川県と大阪府で誘致合戦だったようです
以下、解説記事です↓
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武田薬品が神奈川に研究所 800億円投資 新薬開発を加速 (FujiSankei Business i. 2006/10/26)
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200610260043a.nwc

武田薬研究所誘致失敗、大阪府知事「力量足りず」(読売新聞 2006/10/26)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20061026p301.htm
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筑波(茨城県)、十三(「じゅうそう」と読む:大阪府)の研究所が
両方ともなくなるってのはちょっと衝撃ですよね。
筑波勤務の人のお子さんは「都会暮らしだー」って喜んでるかもしれませんけど(笑)
両親は「家買ったばかりなのに…」って、青くなってたりして(爆)
ホント製薬企業の研究職をやってると、家とかマンションを買えないなあ
って思います、まあ買うお金はないけれど…

あとはGSKの筑波研がなくなる上に武田の研究所もなくなって
つくば市はまずいんじゃないかな?
これからも流出していくのでしょうか…

閑話休題

2006年10月25日 | 製薬会社な日常
創薬ターゲット選定について書いてたんですが
書き終わらなかったので、今日は他の話題。

後輩と話していて
「あんまり薬作るとか興味ないんですよねー」って
コメントを聞きました(笑)

せっかく新しいものを見出せて、それがヒトの役に
立つ可能性があるのにその仕事が「面白くない」って
いうのはもったいないなぁ、と思ったしだい。

まぁ、それを伝えられてないワタシも充分な先輩ではないんですが(笑)

創薬ターゲットの選定法1

2006年10月24日 | 製薬研究職を目指す人向け
諸事情により、仕事上で新しいターゲットを見つけなければならないような状態になってきたので
自分の中で整理する意味でも、製薬会社で働いているヒトは
どのように創薬ターゲットを探すのか?選ぶのか?と
いうことをつづっていきたいと思います。

製薬会社を目指している人は「こんなことをしているのだなぁ」と
新人さんは「こんなやり方をしているのか」と参考にしていただくと
コレ幸い。

ちなみに専門外の方にはちと難しいかも…
スミマセン。


まず薬にふさわしい化合物を選ぶ(作る)ためには
スクリーニング系が組めなければいけません。
「スクリーニング」とは何か目的のものを見つけるために
試行錯誤することのこと。
この場合は「お薬」にすることができる「化合物」を探す作業を指しています。

そのため、まず薬理(オクスリがどのように効くか確認すること)を
専門にしている研究者が思い描くスクリーニングの流れから解説しようと
思います。


わかりやすく理想的なスクリーニングフロー(薬理編)

1st screening:in vitro assay(cell freeの系:できればHTSで回したい)
ようは試験管内の不純物が混じってない状態で評価したいのです。
具体的には「バインディングアッセイ」とか「酵素阻害実験」とか。

2nd screening:in vitro assay(cell baseの系)
細胞を使ってより生態に近い状態で化合物の効果を見ます。
例えば化合物を細胞に添加して、2nd messenger(cAMPとかCa2+とか)の
動きを確認するとか。

3rd screening:in vivo(acute*な系で確認。単回投与で評価したい)
個体に実際に化合物を投与してパラメーターの変化を確認する。
パラメーターは「血圧」「血糖値」などわかりやすいものから
「記憶力改善」や「痛みに対する反応の低下」など評価しにくいものまで
さまざま。

投与法はp.o.、i.v.、i.c.v*など、ナニが適当かはその時々による。
いきなりp.o.で確認することもあるしi.v.、i.c.vが先の場合も
順番的にはi.v→p.o.
もしくはi.c.v→p.o.
最終的には経口投与で効かせたいため、この順番。

i.v.、i.c.vで効いても薬物動態的要素が充分でないため
p.o.で効かないこともよくある。
ちなみに中枢で効かせたい薬はi.c.vで
末梢で効かせたいときはi.v.でみることが多い。


4th screening:in vivo(chronic*な系で確認。model animal*を使ったり)
本当に狙った疾患で効くかをここで確認。
疾患モデル動物に経口投与での効果を確認する
(必ずしも経口とは限らない)。
場合によっては連投(連続投与)を行うことも多い。
ここまで来ると、スクリーニングというより化合物の
プロファイリングといっても良い。

モデル動物で薬効の担保を取った後は、毒性がないことを
祈って毒性部門のお仕事を待つばかり…

以上、薬理スクリーニング系終了


ターゲットによってはこれらの事がやりにくいものがあります。
例えばちょうどいい細胞が無かったり、維持が難しかったり。
強制発現系の細胞を作ろうとしたら、パテントが抑えられていたり。
病気の評価をしやすいモデルがないか、モデルの信頼性が低いため
複数組み合わせる必要があってスループットの問題が出てくることも
あります(中枢性疾患の薬は軒並みこの辺がハードル高し)。

このような現実的な問題のほかに、選んだターゲットに作用する
化合物を見つけたところで本当にそれが薬になりうるか?
動物ではなく人間の病気を良くできるかを良く考えなければなりません。
そのために論文・学会情報・未確認情報(笑)を精査して
何をターゲットとするかきめなければいけません。

実は病気に関係しそうな分子はたくさんあります。
その中でどれが「もっともらしいか?」「自社で早くなしえるか?」を
考えるのが研究者の大事なオシゴトだと思います。
(もちろんスクリーニングでルーチンをこなすことも大事)

そして「センスがいい」「勘がいい」「鼻が効く」研究者は
薬に近づけるであろうターゲット(分子)を見つけてきます。

では「センスがいい」「勘がいい」「鼻が効く」研究者になるには
どうしたらよいでしょうか?
SIUもまだまだわからないことだらけですが、次回でそのための方法に迫って
みたいと思います。



補足
acute
「急性の」という意味
例:ACS=acute coronary syndromes
急性冠症候群(きゅうせい かん しょうこうぐん)

chronic
「慢性の」という意味
例:CHF=chronic heart failure
慢性心不全(まんせい しんふぜん)

model animal
ヒトの疾患状態などに似た症状を表すanimal
遺伝子をいじっているものは「トランスジェニック」
自然発症性のものは「スポンタニアス」といったりする。
トランスジェニックアニマルを使うのはいろいろ気を使うので
スクリーニングに使うのであれば、ブリーダーで買えるような
一般的な自然発症性のモデルを使うほうが楽。
ただ他社と同じことをやっても、同じものしか見つからないというのも現実…

p.o.、i.v.、i.c.v
順番に「経口投与、静脈内投与、脳室内投与」を指す

土浦花火大会

2006年10月15日 | 製薬会社な休日
筑波のお隣さん土浦では
毎年、秋の初めに花火大会があって
それは来年の花火の見本市のような役目を
果たしているため、かなり大きい規模です。

SIUはここ毎年行っていたのですが…
今年は昨日でした。

…すっかり、忘れていて行かなかったよー(涙)

ワールドトレードセンター

2006年10月12日 | 非製薬ネタ
歴史的なテロ事件である「9・11」を題材にした
映画「ワールドトレードセンター」を仕事を
さっさと終わらして、見てきました。

先にアメリカで見た人の感想でネガティブなものを
読んだ事があったので、イマイチでもしょうがないかな
と思ってたんですが…
泣いてしましました。

この映画と「ユナイテッド93」は
アメリカ近代史を理解する上避けては通れない
この事件を理解する手段の一つになるのではないかと思います。

友人の結婚式

2006年10月08日 | 非製薬ネタ
京都にて友人の結婚式。
京都の高大寺というお寺で行われたんですけど
お寺での結婚式って珍しいですよね。
でもすごく良かったです。
最後、般若心境で締めるというのも面白かったし(笑)
お庭もすごく素敵でした。
もともと観光客がたくさん来ているところの境内で
行っているので、みんな興味津々。

披露宴では友人はお色直しも前も後も和服でそれが
とても似合っていて旦那さんは幸せ者だと思いました。
会場も昔の旧家を改造したレストランで行っていて
とっても素敵。こんな式・披露宴をしたいなぁという
気になりましたとさ。