人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

罪はバツ

2017-06-15 11:47:01 | 創作
人間てこんなに簡単に死んじゃうものだったのか…
僕は確かに逆上して、オッサンをどうにかしてやろうと思った。
とある夜、帰りを急いでいたのに、酔っぱらったようなこのオッサンに因縁をつけられ、くどくどと絡まれたのだった…。
そして、いきなりオッサンが突っかかって来たんで、反射的に頭を持って柱にぶつけてしまったのだ…
僕はとっさに逃げようと思った。夜道は暗いし、幸い誰にも見られていない…
数分して、動揺も収まった頃、”これは正当防衛になるのか、情状酌量の可能性は…”などとやはり自分のことしか考えられない。
とりあえず死体をどこかに隠して、自分もどこかに隠れるか、逃げるか…自首すれば罪は重くならないか…そんなことが頭を去来していた。
だが…
じーっと、この亡骸を見ているうち、今生では味わったことの無いような、何とも言えない気持ちが込み上げてきた…
さっきまで、あんなに雑草のようにしぶとそうな生命力を漲らして、僕に突っかかっていた人間が、呆気なく枯れ木のように動かなくなってしまったのだ。命を僕が奪ってしまったのだ。彼の人生はどうだったのだろうか…たいして面白くない事ばかりだった訳でも無かっただろう…僅かながらの喜ばしいことでも人生の支えにもなる…それに人生は思われたままのものでは無いハズ…どんな契機でその裏側が開かれるか分からない…。
家族は居たのだろうか…残された子供たち…ペットたち…。
僕が彼の全てを奪ってしまった!
ダメだ!…もう逃げられない!…逃げるわけにはいかない…何だか身も心もジンジンとしてきた…おっ、こ、これには身に覚えが有る…
おんなじだ!…あれと同じものを今受けているんだ…こんな状況なのに…もう、どうしようもない…
こ、これはもしかして…責め苦以上だ! 人殺し、許されない罪…でも…責め裁きを超えたものが有る!…おんなじだ…全てを覆っている…一体、どこに逃げ隠れ出来るっていうんだ!
自首しよう!
と思って、近くの交番を探しに歩いていたら、見知らぬ老人に声を掛けられた。
「お待ちなさい!…どこへいこうというのかね?」
―ハ…どなたですか? 僕は取り返しのつかないことをやってしまったんです…
「もう、いいんだよ。終わったんだから…。」
ーえっ、何が終わったんですか?…僕はこれから警察に自首しに行くつもりなんですよ! それから然るべき処罰を受けて、償いをしないとならない…これから始まるところなのに…
「だから、それはもう、終ったからいいんだよ!」
ー無罪ってこと?…人を殺めちゃったんですよ!…ンな訳にゃ行かないでしょーが…
「だから…もう、いいんだったら!…いいかげんに目を覚ましたらどうなんだね…」
ー何が何だか…僕にはサッパリ分からない…とにかく警察に行かなきゃ…
そして…この謎の老人と別れようとすると…彼は一際力強い声でこう言った。
「これを見なさい!」
と…彼の方に向けた瞬間、意識が遠のいてしまったのだ。

気が付いたら朝になっていた…自分の部屋だった…。
ホントだ。終わっていた…。もう、解放されていたのだ…。
だが、これはまだ続いていた。ジンジンと心身に伝わるあの波動…ああ、喩えようのない解放感…
これが僕をここに連れ戻してくれたのだった…。(終)

*以下の過去記事と併せて読んで頂ければ、と思います。

http://blog.goo.ne.jp/sitateru/e/2de134d8cfc4126f69d88ac5256edd16
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